第686話 テスト後からクラス替えまでの3日間に注目。
テスト期間が終わって金曜日、選択授業で俺の第二回目の講義だ。
集まってくれた人たちはテスト期間の前に〈転職〉したばかりとあって気合が入りまくっている。
探せば双子姉妹のエリサとフィナもいるな。というか手を振っていたのですぐに分かった。
手を振り返すことは出来ないが笑顔を返しておいた。
なぜか周りの人たちがキャーキャー言ってた。あれが2人の同級生かな? 仲が良さそうだ。
しかしそうか、来週月曜日からは〈新学年〉に編入する人たちは、同級生とさらばするのか。
そう思って見てみれば、仲の良い同級生のグループがいくつも形成されているように見える。最後に一緒に授業をこなして思い出を作っているのかもしれないな。
ちなみに選択授業はクラス替えがあってもリセットされないので来週も同じメンバーなのだが、それは置いておく。
授業開始だ。
この〈育成論〉の授業も一学期にやったことがあるため俺も慣れたものだ。
6限かけてしっかりと、そして以前よりも充実した授業が出来たように思う。
授業を受ける人たちが真剣なため非常にやりやすかったよ。
ただ熱が入りすぎて放課後は質問攻めの嵐が中々止まず、下校時間を過ぎて他の教員の方が
それが終わると土日だ。
先週は臨時テストの勉強会を行なった関係でダンジョンに行けなかった。悲しいことだ。
しかし、その鬱憤を晴らすように今週の土日はダンジョンで遊びつくしてやった!
攻略途中だった中級上位ダンジョンの一つ〈強者の鬼山ダンジョン〉を攻略したぜ!
すでに20層まで攻略していたからな。残り30層なら2日間フルに使えば余裕だ。
あそこは鬼系のモンスター、〈ブルオーク〉から〈
ただし、配下に〈ナイトオーガ〉〈ソルジャーオーガ〉を二体ずつ引き連れた五体構成のため、中々に手ごわい敵である。さすがは〈ランク8〉ボスだ。
さらにそのレアボスは〈サムライオーガ〉という袴を着た和風オーガで二刀流を繰り出してくる武人が登場する。
単体ではあるが上級ダンジョンに足を踏み入れているボスなため非常に強い。
HPが5割を切ると〈馬〉がやってきてまたがり、将になるのだ。〈馬〉にもHPがあって、これを撃破すれば消滅するのだが、すると和服だったオーガがなぜか甲冑姿になってパワーアップしてしまう。
魔法職なら〈馬〉を倒さないようオーガだけを屠る戦術も使えるのだが、そっちも結構難易度が高いため、ゲームでは〈対サムライオーガ専用魔法パーティ〉が組まれるほどだった。
とはいえ甲冑姿の〈サムライオーガ〉でも所詮は中級のレアボス、真の上級ボスに比べればまだ若干弱い。上級職になった俺たちなら十分撃破が可能で、時間は掛かったが戦闘不能者無しで〈サムライオーガ〉を撃破したのだった。
当然周回しないはずもなく計8体の〈サムライオーガ〉を撃破した。
時間が無かったので、〈テンプルセイバー〉から貰って増えた〈笛〉の回数が使いきれなったのが残念なところだ。
しかし、戦果は非常によかった。何しろレアボスである。中級上位ダンジョンのレアボスは、たまに上級の装備やアイテムをドロップする。
そして、その内の一つが大当たりだったのだ。
「まさかの〈女武士道シリーズ〉のレシピ全集がドロップするとは……!!」
そう呟き震え声を出したのは上級職【先陣の姫武将】に就いたリカだ。
その気持ちはとても理解できる。
実はこの〈女武士道シリーズ〉は、リカの姉であり俺たちの担任であるフィリス先生が装備しているシリーズであり、しかも先生のシリーズは完成していないのだ。二つほど足りていない。
そう、なんと今回ドロップしたこれは――レシピ全集!
上級装備のレシピ全集をドロップしてしまったのである!
「初の上級装備レシピ全集ドロップだな! これでいつでも上級装備が作れるぞ」
「嬉しいのだが、なんだか頭が痛くなってきた気がするぞ」
「気のせいさ!」
リカがこめかみを押さえてレシピを見つめて唸ったので励ましてあげた。
レシピは量産が可能。〈金箱〉産でレアボスのレシピとなればその価値は天井しらずだ。
だが普通はシリーズ装備でも頭だけ、とか、足だけ、みたいにバラバラにドロップするのが普通である。
―――しかし、
極低確率ではあるが、シリーズの装備一式が全てドロップする現象が起こることがある。これを
本当に低い確率なので全集を狙うことは不可能とまで言われる超激レアドロップだ。
相当運がよくないとドロップしないし、普通は別々に装備一式を集めようとするだろう。買うという手もある。というか買ってシリーズ全てを集めるのが一般的だ。
そんな当たれば超ラッキーどころではすまないその全集を、なんとレシピでドロップしてしまったのだ。リカが頭を抱えるのも分かるな。
ちなみに攻略メンバーは俺、シエラ、ラナ、エステル、カルアだったのだが、シリーズ装備が完全に武士、つまりリカ寄りだったためこうして帰還後、リカへ一足先にお披露目となった形だ。
いやあレシピ全集が当たったときのシエラとエステルも頬に手を当てて困ったという表情をしていたぞ。ラナと俺は大喜びだったんだが。
「というわけで、リカには近々上級装備が与えられることになりました! 拍手―!」
ぱちぱちぱち。一箇所から拍手が鳴る。そう、俺だ。
観客が俺だけしかいないのが寂しい。
みんな帰ったら即シャワーに行ってしまったからな。
「リカも上級職になったんだから装備もそれなりの物を着ないといけないよな」
「そうなのだが、フィリス姉様さえ全装備持っていないほど貴重な物なのだぞ? それをレシピで手に入れるとか……」
リカは未だ現実を受け入れられないらしい。
仕方ない。もう日も暮れるし、この話は今度にして、とりあえず明日の準備を進めよう。
明日はいよいよ、クラス替えの発表日なのだ。
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