第十二章 〈ダン活〉Cランク〈決闘戦〉!

第613話 個人授賞式とクラス対抗戦の本当の閉会式。




 クラス対抗戦週間が終わって、翌日の土曜日。


 本来ならお休みの日ではあるが、まだ重要な行事が残っているため今日も一部の人間は休み返上である。


 というのも今日行われるのは、授賞式。

 昨日はクラス別での表彰式が行なわれたが、今日は個人で活躍した者に送られる授賞式がある。


 まさかたった一日で受賞する人をピックアップするとは、学園は仕事が早い。


 ちなみにだが、授賞式なんてゲーム〈ダン活〉時代には無かったぞ?

 どれだけ俺を楽しませてくれるんだリアルは!


 そうして俺たち、一部の学生が呼び出されたのは、これまた〈戦闘課〉に関わる施設の代表にして栄冠。――第一アリーナだ。


「これよりクラス対抗戦でも素晴らしい活躍を見せた個人に贈る、各賞の授賞式を行なう」


 ――ワアアァァァァァァァ!!


 アリーナに設置された特設ステージの上で学園長が授賞式の開催を告げると、会場が歓声に包まれた。

 ステージ前に集まるのは学園すべての専攻、そこで顕著に活躍した者だけが会場内に入っている。


 さらにすごいのが観客席だ。

 どんだけいるの? という人数。

 さすがはマンモス校だ。そりゃ第一アリーナでなきゃ収容できんだろう。


 別に参加は任意のはずだが、参加していない学生なんかいないんじゃないか? ってくらいの学生が集まっている。もちろん様々なスーツ的な服を着た大人も多く混じっているので学生だけではない。

 企業などからの参加の方も多い様子だ。

 そりゃ、この授賞式で賞を受けることになる人物は注目せざるを得ないだろう。

 それなりに無理をして残った人も多いらしい。


 ちなみにだが、俺は当然のごとく会場に入っている組だ。事前に〈学生手帳〉で呼ばれていた。

 専攻ごとにキレイに並んで学園長のありがたいお言葉に耳を傾ける。


 この場にいるのは全て一年生。すでに最上級生、二年生は終わっており、最後に回ってきたのが一年生だ。この順番は配慮だな。時間が無く、三年生の授賞式を見たら急いで帰るという人もいるようだ。おかげで一年生は最後となっている。らしいが、満席に見えるな。


 ざっと見回して、受賞される1年生は僅か30人ほどのようだ。

 最上級生はもう少し多かったが、二年生は逆に少なかった。

 二年生より多いということは、一年生は注目されている、ということなのかな?


 また、この場にいる〈戦闘課〉の受賞者は19人、半分以上だ。

 どれだけ〈戦闘課〉が注目されているかが分かるな。今年の高位職は〈戦闘課〉に偏っているため活躍した者も多かったと思われる。ちなみに例年だと上級職なんていないので十数人くらいが普通だそうだ。


 ちなみに知り合いで選ばれているのは、シズは当然予想通りだとして、上級職のシエラ、ラナ、エステル、カルアも選ばれている。それとセレスタン、シェリア、ルルだ。そして筋肉のアランが〈1組〉では選ばれているな。え? サターン? 観客席でハイライトの失った目をしてこっち見てるよ。


 さすがに初戦の大ポカが響いて決勝戦の活躍と相殺した形かな? まあ、来年があるさ。


 後は〈5組〉の上級職ラムダ君も選ばれていた。手を振ってみたら振り返してくれたぞ。結構良い人かもしれない。


 あと〈12組〉のあの三人組の1人、ドワーフのワルドドルガまで選ばれていた。そこはリーダーじゃないんだ!? と驚愕したよ。実は要塞建築の実質的なリーダーを勤めていたというのだからすごいものだ。


 そして我らが〈エデン〉のメンバー、〈51組〉リーダーのリーナ。まあ当然だろう。リーナならばたとえ〈竜の箱庭〉無しだったとしても選ばれていたに違いない。


 あと〈8組〉からはリーダーのメルト。それと、ラクリッテとレグラムも選ばれていた。

 俺は後から聞いたのだが、ラクリッテは〈9組〉のリーダーを実質戦闘不能に近い状態にして追い返したり、戦況を大きく味方に有利にしたりと大活躍だったようだ。

 相棒のノエルがマイクを片手に声援を送ってるぞ。ラクリッテの足はプルプルしております。

 レグラムとメルトは堂々と立っているな。さすがだ。


 そして初戦で戦った、あのサターンを一撃で屠った〈2組〉リーダーの男子、セーダンも選ばれていた。初戦敗退のクラスで選ばれたのは彼だけで、それだけ彼が大きく活躍したのだと知らしめている。


 そして〈3組〉と〈9組〉のリーダーで〈百炎〉と〈死神〉という二つ名の付いた人たちも選ばれていたな。俺は直接会ったわけでは無いが、〈百炎〉の女の子はマジで強かったと後で聞いた。メルトがギリギリのところでなんとか倒したらしい。マジかよ。そりゃあ選ばれるわ!


 そしてほかの専攻には、当然のごとくハンナが混じっていた。


「ぜ、ぜぜぜゼフィルス君! どどどどど、どうしよう! なんかすっごい色々と注目されてるんだよ!?」


〈錬金術課一年生〉のクラス対抗戦は実質クラス内でのチーム戦だったらしいが、上級職になったハンナが、なんかやっちゃったらしい。壊れたおもちゃみたいにガクガクしてらっしゃる。

 何があったのか、あとで聞かねばなるまいな。ちょっと楽しみです。


「――生産特別賞。――〈錬金術課一年生〉ハンナ」


「ひゃ、ひゃい!!」


「ほれ呼ばれたぞハンナ、しゃきっとして行って来い」


「うう、なんで私、ここにいるの!? 錚々そうそうたるメンバーだよ!?」


 そりゃあ、ハンナがこの実力者たちと同格、もしくはそれ以上の腕前だからさ。上級職だしな。


 ハンナは俺から言われたとおり、背筋を伸ばしてしゃきっと、は少し遠いがとりあえず右手と右足を同時に出しながら学園長の下へ進んでいった。


「表彰状、クラス対抗戦――個人の部、生産特別賞。ハンナ殿。そなたは――」


 学園長がハンナを褒め称えていく。

 その度にハンナはピクピクと身体を震わせているな。俺には分かる。あれは「そんな恐れ多いです」とか「私には勿体無いです」とか言いそうになって頑張って口を閉じているハンナだ。


 学園長の話は要約すると、ハンナは新しい風を呼び込んだ。生産職は新しい世界を垣間見た。だろうか?

 生産職の上級職ってハンナしかいないらしいので、上級職の生産職に何が出来るのか、どんな役割がこなせるのか、今までよく分かっていなかったらしい。〈上級転職チケット〉の希少さも相まって生産職の上級職なんてそうそう生まれないのが原因だろう。


 学園長という大物に褒めちぎられて戻ってきたハンナは少し色素が薄くなっていた。

 後で励ましてあげよう。


「続いて、戦闘知略賞! 〈戦闘課1年1組〉ゼフィルス! 〈戦闘課1年51組〉ヘカテリーナ!」


 おおっと、しょっぱなから俺の番だ。リーナも呼ばれてるぞ。

 しかし知略賞……まあ順当か。今回俺、そんなに暴れてないからな。(?)

〈拠点落とし〉自体、参加が初めてというクラスメイトも多かったので抑え気味だったのだ。その代わり戦略で結構持っていった。出来ればハンナみたいに特別賞が欲しかったな。ちょっと残念。

 でも嬉しい!


 すぐに学園長の前へ出ると、リーナも俺の横に着いた。

 学園長がまず俺を呼ぶ。


「表彰状、クラス対抗戦――個人の部、戦闘知略賞。ゼフィルス殿。そなたは優秀な知略、戦略によりクラス対抗戦で優秀な成績を収めた。その独創性、指揮能力も素晴らしく、〈拠点落とし〉に新たな風を呼び込んだ。よってその栄誉を讃えこれを表彰する。――第58代目学園長ヴァンダムド・ファグナー」


 おお! なんか〈ダン活〉の知識をむっちゃ褒められているようでむちゃくちゃ嬉しいんだけど!?

 俺やっぱり特別賞じゃなくていい、知略賞が欲しいです! なお、今まさにゲットしました。

 ふははははは!! やったぜ! 俺は〈ダン活〉のデータベースだ!!


 おっと浮かれている場合ではない。なんだか豪華なバッチが着けられた表彰状を受け取り、横にずれる。次はリーナの番だ。

 このバッチはダンジョン攻略の〈攻略者の証〉みたいなものだ。後で胸に着けて肩で風を切って歩くのだ。ふははははは!!


 俺の次に表彰状を貰ったリーナも〈竜の箱庭〉を使った戦法がとても評価されたようだ。

 学園長からとても褒められてとても嬉しそうな笑顔を浮かべている。


「続いて、特別敢闘かんとう賞! 〈戦闘課1年1組〉シズ、アラン! 〈戦闘課1年3組〉ハク! 〈戦闘課1年5組〉ラムダ! 〈戦闘課1年8組〉メルト! 〈戦闘課1年9組〉キール!」


 おお! マジか! 戦闘の特別賞をもらうのはメルトとシズのようだ。あとは筋肉も混じっているが、そうだろうなという感想しか出てこなかった。

 そして〈百炎〉と〈死神〉も選ばれているようだ。やるなぁ。


 メルトはやはりリーダーであるのにも関わらず、数多くの戦闘での活躍を上げ、そのほとんどで相手を打ち負かすほどの大戦果を上げたことで表彰されたようだ。


 シズは、うん。色々と送り込んだからな。連合との緊張の決戦、相手の旗印であるリーナを追い詰めたり、仲間を救助したりといった様々なことが評価された様子だ。


 アランはあれだ。普通に強かった。結局誰もアランに勝てなかったからな。なんでだ?


 ハクもアランと似たような理由なのと、個人での対人撃破数がなんと学園トップだったようだ。

 あ~、あのユニークスキルを対抗手段知らない相手に使ったら確かに無双だろうな。


 ラムダは言わずもがなだ。むっちゃ楽しかったからな。


 キールは何人ものリーダーを初戦と準決勝で屠り、チームの勝利に大きく貢献したらしい。


「続いて、戦闘金盾賞! 〈戦闘課1年1組〉シエラ! 〈戦闘課1年2組〉セーダン! 〈戦闘課1年8組〉ラクリッテ!」


 おおお!

 金盾賞は仲間を多く守り、多くの仲間を救った者に与えられる賞らしいが、すげぇな!


 シエラとラクリッテは、まあタンクとして目立ちまくっていたからな。順当だろう。


 セーダンはタンクではなかったはずだが、仲間を守る姿に印象深かった者が多かったらしい。


一番槍いちばんやり突撃賞とつげきしょう! 〈戦闘課1年1組〉エステル、セレスタン! 〈戦闘課1年8組〉レグラム」


 一番槍突撃賞! これはたった1人で敵陣に飛び込み大きく敵を退け、その後の戦闘を優勢に進め、さらに生き残った者に与えられる賞らしい。無謀にも突撃してさらばした者には与えられないそうだ。そりゃそうだ。


安圏あんけん優勢ゆうせい賞! 〈戦闘課1年1組〉ラナ、カルア、〈戦闘課1年12組〉ワルドドルガ!」


 こんな賞まであるなんてな。

 これは安全圏より一方的に味方を有利にし敵を窮地に追い込み、大きく貢献した者に与えられる賞らしい。ラナは安全圏から〈白の玉座〉で撃ちまくり、カルアはフィールドを丸裸にした。ワルドドルガは要塞を作ったり補強したりと活躍したかららしいな。


「そして最後に防衛特別賞! 〈戦闘課1年1組〉ケイシェリア、ルル!」


 防衛特別賞はシェリアとルルが選ばれた。

 拠点へ攻め込まれた際、防衛にて少数で多大な功績を上げ、拠点を守った者に与えられる賞だそうだ。

 これは結構与えられることの多い賞らしいのだが、今年は全員がイケイケの高位職で襲ってきたため、防衛した側が崩されてしまう場合も多かった。

 さらには多少の戦果では認められず、大きな戦果が必要なために、厳しい評価で見られるのだそうだ。


 シェリアは初戦から決勝まで拠点にダメージ一つ入れさせなかったからな。防衛メンバーを配置する指揮力も評価に繋がったようだ。

 ルルは、攻めてきた〈58組〉に1人跳び込んで半壊させたのが評価されたらしい。そりゃあされるわ! 特別敢闘かんとう賞でもおかしくは無かったが、活躍の場が防衛だったために防衛特別賞を授賞した形だな。

 ちなみに賞は1人1つまでなんだ。じゃなかったら俺やリーナももっとゲットしてる。


 こうして次々と他の課の人も呼ばれていき、30人に10種類のバッチが贈られることになった。


「では――閉会式を始める」


 クラス対抗戦は昨日までだが、授賞式を含めれば今日までだ。

 故に、閉会式はいつも授賞式の後に行なわれるらしい。


 いやあ、授賞式は素晴らしい。

 マジ素晴らしい。

 この贈り物、今後も絶対に手放さないぞ!


 俺は新しい証を胸に輝かせ、そう思ったのだった。


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