第607話 終盤戦に突入、まさかの同点!?




 一方〈51組〉拠点では、もうほぼ陥落寸前の状態だ。


 俺たちはラムダ君率いる部隊を倒した後、再び〈51組〉拠点に戻ったところ、〈キングダイナソー〉と〈バトルウルフ(第三形態)〉がお互いの傷をペロペロしている現場に出くわした。

 いや、あれはペロペロなんて易しいものじゃないな。ベロンベロンと言ったところか。


 もし人があれを受けたら、気が弱い人ならそれだけで失神しそうな光景だったぜ。

 新しいスキルが生まれちゃうかも!


 まあ、あれは回復スキル『傷なめ』だな。状態異常のスキルではないんだ。


 俺たちが一度退いたから、ボスのHPを回復していたのだろう。

 良い判断だ。戦闘中の『傷なめ』は難しいからな。


 結局再戦闘、今度はリカと俺でボスを押さえ込み、パメラが拠点の防衛メンバーを対処しに行った。


 しかし、さすがはリーナのクラス。

 その実力は半端ではなく、「騎士爵」おそらく【神殿騎士】の女の子がパメラを抑え込みに掛かった。

【箱入り娘】の子の援護もあってパメラは犬人の子を捉えきることができず、結局俺たちが〈キングダイナソー〉を倒す方が早かったな。


 そこからはもうね、いくら〈バトルウルフ(第三形態)〉が強くても単体ではどうしようもない。何しろ〈バトルウルフ〉といえば〈ダン活〉周回率トップを誇る。

 もちろん〈エデン〉でも周回率トップだ。あれほど狩ったボスモンスターなんて他にいない。


 見ろ、心なしか尻尾が垂れてるぞ。震えているようにも見える。鳴き声にも力が入っていない気がするのは気のせいか?

 そんなこんなで〈バトルウルフ(第三形態)〉は俺とリカ、2人でどうとでもなる相手で、犬人の子も頑張って指示を送ったりバフを掛けたりしていたが、単体ではどうしようもなかったな。


 結局リカのユニークスキル『双・燕桜』が決まり、ノックバックしたところに『勇者の剣ブレイブスラッシュ』を決めてダウンを取って総攻撃したところでエフェクトに消えてしまった。


 リーナには悪いがここまでだ。


 俺とリカで拠点への攻撃を開始し。


「あ、ダメ!」


「勇者君待って!」


「ダメー!」


 防衛の3人が悲鳴を上げる中、〈51組〉の拠点を落とすことに成功したのだった。



 ―――〈51組〉退場、4位。



 ◇ ◇ ◇



 メルトVSハクの対決はメルトの勝利で決着した。


 メルトのHPは本当にギリギリのところまで減っていたが、幸いにも伏兵は居らず、そのまま回復して〈3組〉拠点に合流することにした。


 そこからはまた怒涛の展開だった。

 メルトが合流したときには〈3組〉拠点の防衛メンバーは残り4人しかおらず、〈8組〉のメンバーも残り4人に減っていた。しかし、〈8組〉はしっかりと役割分担で防衛モンスターを倒し、ポイントを稼いでいた。

 さすがはエリートクラスで電撃戦に参加するほどの精鋭。


 さらにメルトが来たことで形勢が完全に決まり。

 メルトたちの攻撃により防衛モンスターは全て駆逐され、100点を確保。そのまま〈3組〉拠点は落とされてしまったのだった。


 これが、〈51組〉が陥落して3分後の話である。



 ――〈3組〉陥落、第3位。



 ◇ ◇ ◇



 一方で、連合主力の生き残りたちだが、最後まで勇猛果敢に頑張った。


〈1組〉メンバーに挑む者もいた。裏をかいて〈8組〉拠点を単身で落としに向かおうとした者もいた。複数人に追いかけられて逃げることしかできない者もいた。

 いずれも各個撃破されたが、みんなよく健闘した。


 リーナも頑張った。

 最終的に他の〈1組〉〈8組〉メンバー達があちこちに散らばる連合を追いかけたので、残ったのはシエラとリーナ、図らずも二人の一騎打ちになった形だ。


「『四連魔砲』ですわ!」


 リーナの魔砲から四連続で砲撃がシエラに飛ぶが、シエラは小盾を間に差し込み、パッシブスキルの『受盾技うけるたてアーツ』だけで防いでしまう。


「それくらいだとスキルを使うまでもないわね」


「シエラさんの盾ずるくないですの!?」


「リーナの攻撃が甘いのよ。〈二ツリ〉以下ではスキルを使わせることも出来ないわよ」


 シエラの発言にリーナは貧血でも起こしたようにクラッとする。

 ゼフィルスがシエラに〈二ツリ〉以下の防御スキルを覚えさせなかったのはこういうことだ。〈二ツリ〉以下の攻撃ではシエラはスキルを使うまでも無い。


「次はこっちから行くわねリーナ。『攻陣形こうじんけい四聖盾しせいたて』! 『インパクトバッシュ』!」


「やってやりますわー!」


 防がれる攻撃、襲い来る自在盾に苦戦するもなんとか粘り続け、しかし最後は〈51組〉陥落によってリーナは転移陣で退場してしまう。



 ◇ ◇ ◇



〈12組〉の拠点に続き〈5組〉拠点、〈51組〉拠点、そして〈3組〉拠点も立て続けに陥落した。


〈1組〉と〈8組〉の作戦が完全に決まった形であり、会場は大歓声に包まれた。


 これまで観客たちが見たことも無いような大胆かつ面白い作戦がピタリと決まり、人々の心を大きく鷲掴わしづかんだのだ。

 また連合も途中で気が付き、何とか間に合わせ、名勝負を繰り広げたのも大きいだろう。


 惜しかった。接戦だった。見ごたえあったという感想を観客は抱き、会場の歓声がフィールドに届く。



 ◇ ◇ ◇



 俺は歓声を聞きながら、途中結果を確認していた。


「すげえ歓声だな。お、メルトたちも〈3組〉を落としたようだぞ」


「さすがはメルトだな」


「メルトは出来る子なのデース!」


 俺の言葉にリカは疑いもなく頷き、パメラもまたニッコニコでメルトの健闘を称える。

 子ども扱いしているような気がするのは気のせいだ。


 現在俺たちは、第三要塞へと向かっていた。

 途中経過を見る限り、どうも人数が合わない。

 セレスタンの部隊で誰かが退場した可能性が高いため合流を急いだ。


「ゼフィルス様」


「セレスタン! 無事だったか!」


「はい」


 第三要塞に着いたところ、セレスタンが迎えてくれた。

 その横にはなぜか裸族で決めポーズをしているアランの姿もある。

 リカたちに見せるのは毒だな。服を着せよう。


「アラン」


「ゼフィルスよ。筋肉が俺一人になってしまった」


 どうやら〈マッチョーズ〉はアラン以外全滅したらしい。

 激しい戦いだったようだ。


「とりあえず装備を着用してくれ。これからみんなと合流する。二人共お疲れ様だ」


「おう」


 アランは素直に蛮族装備を着用する。

 少し寂しげにしている。筋肉と別れて寂しい、ということだろうか?


 うむ、とりあえずセレスタンから報告を聞きつつ


 第四要塞の南側へと向かった。


 どうやらセレスタンたちは第三要塞こそ陥落させることはできなかったものの、5人を退場させるなど大きく健闘したようだ。

 その過程で筋肉が一人退場してしまったのだと、あいつはいいポーズをして退場していったんだとアランが訴えかけるように語ってきたが、これは省略する。



 ◇ ◇ ◇



 途中経過――〈残り時間:2時間10分00秒〉

〈1年1組〉『残り人数:20人』『ポイント:1187点』

〈1年8組〉『残り人数:16人』『ポイント:1187点』

〈1年3組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』3位

〈1年51組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』4位

〈1年5組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』5位

〈1年12組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』6位

〈1年9組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』7位

〈1年10組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』最下位



 試合は終盤だ。


 現在の生き残りは〈1組〉と〈8組〉。

 そして、なんと偶然にも点数は互角だった。


〈1組〉は、〈10組〉を倒した〈51組〉と〈5組〉を倒し、防衛モンスター分も合わせて1187点。


〈8組〉は〈12組〉〈3組〉〈9組〉の三クラスを落としたことにより1187点を獲得していた。


 このまま試合が終了すれば人数が多い〈1組〉の勝ちである。

 ちなみに人数も同じなら代表3人を選出しあっての、1対1の勝ち抜き対人戦となる。

 そうなれば〈1組〉はまず間違いなく上級職3人を出してくるはずなので〈8組〉に勝ち目は無い。


〈8組〉は〈1組〉の拠点に攻め込むか、4人以上を倒し残りの人数で逆転するしか道は無くなった。


 逆に〈1組〉は防衛に徹していればほぼ勝てる状況。〈1組〉が大幅に優勢であった。


 また熱いぶつかり合いが起こりそうだと、会場は再び大きく盛り上がるのだった。




 ――――――――――――

 作者から後書きにてお知らせ失礼します。

 今日からコミカライズが始まります!!

 TOブックス コロナEX で連載スタートとなります!

 https://to-corona-ex.com/comics/45592182718502



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