第432話 〈アークアルカディア〉の昇格試験、来たる。
夏休みをどう過ごすのかを話し合ってから2日後。
今日は水曜日だ。
さすがに帰省する日も近いので昨日からメンバー、サブメンバーの一部はバタバタとその準備に追われている。
しかし、この日の放課後だけは空けておかねばならない。
何しろ、〈アークアルカディア〉サブメンバーの昇格が掛かっている大事な日だからな。
放課後、〈アークアルカディア〉のサブメンバー10名は全員とある場所に集合した。
〈エデン〉メンバーもしっかり見届けるために全員参加だ。
そしてその試験の内容だが、
「発表するぞ! 〈アークアルカディア〉から〈エデン〉への昇格試験内容は、―――Eランク昇格試験だ!」
「Eランク昇格試験ですか」
アイギス先輩が納得した感じで俺の言葉を反復した。
「その通りだ。〈アークアルカディア〉にはこれよりEランク昇格ギルドバトルを行なってもらう。参加は8人。〈8対5〉の変則戦だな」
今言ったとおり、彼女たちに来てもらった場所とは他でもない。
俺たちもEランク昇格試験の時にお世話になった〈第七アリーナ〉である。
ここでやることと言ったら当然、ギルドバトルだ。
要は〈アークアルカディア〉メンバー昇格のついでにEランク昇格試験もやってしまおうという一石二鳥の計画である。
しかも今回は参加人数変則型の〈8対5人戦〉。
俺たちの時は〈5対3人戦〉だったが、実は参加人数は選べるのだ。
5人だと火力不足などで巨城が落とせない場合もあるため、最大10人まで参加可能としているわけだな。
その分、参加人数が増えれば相手の人数も増えていくが。
しかし、今回はそれを逆手にとってアルル、ニーコ以外の8人に〈8対5人戦〉に参加してもらおうという魂胆だ。
しかもその相手は、
「ちなみに試験相手は〈エデン〉のメンバーが務める。今までの練習の成果を見せてくれよ」
「「「ええー!?」」」
俺の宣言と同時に仲良し三人娘を初めとしたサブメンバー数人が叫ぶ。
うんうん。良い反応だ。
ちなみにランク昇格試験のとき相手役をギルドに依頼するのは有りである。先生たちも暇ではないからだ。3人くらいなら先生たちも集まれるが、5人以上集まらなければいけない場合は大体学生ギルドに依頼する感じだな。
そして立候補した〈エデン〉が無事、その相手に選ばれて今に到る訳だ。
実はこの世界では下部と親ギルドのギルドバトルは珍しくない。
下部の昇格試験の時、親ギルドが試験官を務めるのはむしろ当然とされていたりする。
これは実績という部分で、学園にしっかり試験官がこなせるギルドですよ、とアピールするための場でもあるためだ。
ここで良い評価が得られれば、俺たちのDランク昇格試験の相手を務めた〈
昇格試験の相手を務めるギルドというのは学園の覚えも良く、実績を作りやすくて人気な依頼だ。報酬のQPだって多い。就職だって有利になる。アピールの場であるギルドバトルにも多く参加が可能と、いいことずくめだ。
しかし、学園もなんの実績も無いギルドに試験官を依頼するほど怠惰では無い。
依頼するなら相応の実績が求められる。ま、これは当然だな。
そして、その実績作りをするために身内のギルド相手に試験官を務め、実績を作ると共にアピールする、という訳だな。
とんでもなくQPの維持費が掛かる下部
まあ、それが活かせるか否かはそのギルド次第だが。
というわけで〈エデン〉も実績作りに参戦するぞ。やり過ぎないように上手く手加減できるというところを見せておかなければな!
「うむ。面白い展開になった。ぼくは早速特等席を確保してくることにするよ」
「あ、ニーコはんだけずるいやん。うちも行くで!」
昇格にまったく関係ないニーコとアルルが足早に席の確保に走った。
観客席に消えていく2人を他のサブメンバーたちは微妙な視線で見送る。
「こほん。それでゼフィルスさん、そちらのメンバーはどなたが相手をされるのですか?」
「いい質問だアイギス先輩。こっちは俺、シエラ、リカ、パメラ、ミサトを予定している」
「【勇者】【盾姫】【姫侍】【女忍者】【セージ】……、なるほど、了解いたしました」
質問に答えると、アイギス先輩は何かに納得したように呟いた。
うむ、もちろん手加減するよ。
手加減が苦手そうなラナやルルを初めとしたメンバーは外してあるし、攻撃力が高すぎるアタッカーメンバーも外してある。カルアやエステルのように足が速いメンバーももちろん除外だし、〈竜の箱庭〉を持つ【姫軍師】リーナなんか当然対象外だ。――なお、俺は例外とする。
おかげで少し偏った編成になってしまったような気がしなくもないが、まあいいだろう。
「よし、他に質問はあるか? なければ控え室に向かってくれ。そこで今回審判をされるラダベナ先生とムカイ先生からギルドバトルのルールと実技を学ぶんだ。もう分かっている人はできていない人に教えてやってくれ」
俺の発表にいくつか質問した後、〈アークアルカディア〉のメンバーがアリーナの控え室に消えていく。
さて、俺たちも準備しなくてはな。
俺は観客席に上り、ほっぺが膨らんでいるラナとルルを初めとする〈エデン〉メンバーの元へ足を進める。
「みんなお待たせだ。と言っても座学と実技で、おそらく2時間くらいしたら試験が開始されると思うからまだまだ掛かるけどな」
「そんな事はどうでも良いわ! なんで私が試験官に選ばれていないのか、そこを聞きたいのよゼフィルス!」
「ゼフィルスお兄様! ルルだって、やればできる子なのです!」
おおう。早速ラナとルルから抗議の声が。
しかし、すぐにエステルとシズが現れてラナを引っ張っていき、ニコニコ顔マックスなシェリアがルルを抱っこして連れ去った。
抗議の声は消えた。
「とりあえず、みんなにはしっかりサブメンバーたちを見て判断してもらいたい。この2時間も、できれば練習風景も見て参考にしてくれ」
「ええ、構わないわ」
「誰が良かったか、投票すればいいんだよね。大丈夫だよ」
俺のお願いにシエラが頷き、ハンナが再確認する。
ハンナが言ったように、〈エデン〉メンバーには誰を昇格すべきか、各自が採点して投票してもらう事になっている。
そして採点数を集計し、一定以上の点数を上回れば合格だ。
なお下回ったら不合格なので、合格者が5人出るかは分からない。
また、6人以上合格者が出たときは高得点の5人が優先される。
まあ落ちても、また昇格試験はやる予定なので次は合格できるよう頑張ってもらおう。
〈エデン〉のメンバーには採点の基準を説明し、やや厳しい目でサブメンバーを見定めてもらう。
〈エデン〉は将来Sランクに到るギルド。生半可な覚悟では〈エデン〉へ昇格することは叶わないと思ってほしい。
そうして時間は過ぎていき、〈アークアルカディア〉は座学から実技、練習をし始め、それを〈エデン〉メンバーは見定めていく。
いつの間にか、膨れていたラナとルルも真剣な表情で練習風景を見つめていた。
そんな事をしているとあっと言う間に時間は過ぎていき、練習と実技も終了の時間となる。
いよいよギルドバトル、Eランク試験と〈エデン〉昇格試験本番の時間がやってきた。
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