第418話 祝賀会も盛り上がり、次のことを考える。
「あ、ゼフィルス殿。お待ちしていました」
「よく参られました。こちらの席へどうぞ」
「お邪魔するな、エステル、アイギス先輩」
続いてやって来たのは【姫騎士】のお二方が歓談する席だ。
基本的に〈エデン〉では
〈姫職〉が他の王族貴族より種類が少なく【姫騎士】一種しかないせいだ。
おかげで〈エデン〉に1人、〈アークアルカディア〉に1人【姫騎士】が在籍することになってしまっている。
まあ〈姫職〉が少ない分、上級職への〈
また【姫騎士】は獲得できるスキル数が下級職ダントツと言っていいほど多い。
そのため住み分けも容易だ。アイギスは今のところ上級職の【竜騎姫】を目指しているため、エステルとは違い騎乗系やチャージ系を覚えていくことになるだろうな。
後はテイムか。モンスター乗りの騎士に成長させる予定だ。
その〈最強育成論〉ルートも、すでに渡してある。
「ゼフィルスさん、【姫騎士】って奥が深すぎます。自分じゃ絶対【竜騎姫】にたどり着けないですよぉ」
「すみません。アイギス先輩は先ほどからこうなんです」
「私よりすごく優秀な【姫騎士】の方が後輩で、先輩の威厳が木っ端微塵ですよぉ」
「エステル、アイギス先輩に何飲ませたんだ?」
「何も飲ませておりません」
いや、だってエステル、アイギス先輩の言動が噛み合ってないぞ?
悲観しているのか、感謝しているのか、喜んでいるのか、それとも全部なのか。
これでシラフだというのか?
「おそらく感情が爆発したのだと思います。〈転職〉経験者にはよくあることらしいですよ」
「そうなの?」
この世界では少し前まで〈転職〉はタブーだった。
それが少しずつ受け入れられ始めている。しかし、〈転職〉して高位職に就いたはいいが、その道の険しさが段違いで不安に押しつぶされそうになることも多いのだとか。
確かに【姫騎士】とかエステル以外に見たことが無かった。それに上級職のルートが違えば育成のやり方はかなり違ってくる。【姫騎士】は他の
エステルから聞いた話だが【姫騎士】に就いたはいいが、その高すぎる性能に振り回され大成できなかった人間がほとんどだそうだ。
そんな見通せぬ先のプレッシャーや、優秀な後輩がいること、自分の力量では【ナイト】が精一杯だったことなどが重なり、アイギス先輩の不安は爆発してしまったらしい。
まあ、この世界ではほとんど先駆者みたいなものだもんな【竜騎姫】って。自分で道を切り開かなければいけないとかそりゃプレッシャーだろう。そのための〈最強育成論〉なんだが?
「アイギス先輩のLVは30。ここまで早足で僅か数日で昇ってきてしまったために熟考する時間もなく、不安が外に溢れてしまったのでしょうね」
「ううう。ごめんなさいエステルさん。でも今だけは頼らせてください」
「はい。私でよろしければ胸をお貸ししますよ」
「うう、わ、私より大きい……」
エステルが言うにはパワーレベリングの弊害でもあるそうだ。
同じ【姫騎士】という
アイギス先輩はそんなエステルに思いっきりすがりついていた。
美味しい料理もある。ここはエステルに任せよう。
なにやらアイギス先輩が後輩の一部分にさらに敗北感を味わっていたようだったが、俺は気が付かずにその場を後にした。
次に足を運んだのは仲良し三人娘、【魔剣士】のサチ、【魔本士】のエミ、【魔弓士】のユウカがいる場所だった。
そこにパメラとシエラも居た。
「パメラちゃんもスキル選びが絶妙で痺れたよー」
「いやーそれほどでもデース。全部ゼフィルス殿の指示のおかげデース!」
「シエラちゃんも足止めすごかった。相手は上級生なのに一歩も引かないでさ」
「そうそう! こう、盾でガツンだったもんね! 『カウンターバースト』ってさ! シエラちゃんって盾の扱いがすごく上手いよね」
「ええ。幼少の頃から盾を使っていたからとても得意よ。相手が上級生でも負ける気はないわね」
「く~、そんなセリフ言ってみたいわー」
どうやらさっきのギルドバトルの対人戦についての話のようだ。
目を輝かせた三人娘がパメラとシエラを尊敬の眼差しで見つめていた。
シエラが仲良し三人娘と仲が良いのは知っていたけれど、パメラも仲が良かったのか。
「こっちは盛り上がってんなぁ」
「あ、ゼフィルス君、ハロハロー」
「いらっしゃーい! 待ってたよー」
「ギルドバトルお疲れ様、すごくかっこよかった」
近くによって声を掛けると早速サチ、エミ、ユウカから歓迎を受けた。
「あら、ゼフィルスもこっちで一緒に食べる?」
「歓迎するデース!」
「いや、みんなの席を回っている途中なんだ。少し話したら移動するよ」
「そう、残念ね。私も付いて行こうかしら」
「別に皆と食べていていいぞ? サブマスターだからといってそこまで束縛することはしないさ」
「そういうことじゃないのだけど、……はぁ」
なぜかため息を吐かれた。
そこへこれまたなぜかキラキラ輝かせた目をした三人娘がやって来る。
「シエラちゃん、ここは任せて一緒に行ってきていいよ!」
「うんうん。頑張ってシエラちゃん!」
「シエラちゃんなら私たちも、安心だもんね」
「いえ、私は別に……。それより、あなたたちも狙っていたのではなかったの?」
「あー、いいのいいの」
「私たちは近くで拝むだけでも大満足だしねー」
「お、お付き合いするとか恐れ多いから!」
「それを聞いて安心したわ。でも今回は止めておくことにするわね」
「「「えー」」」
なんか女子会的なものが即行で形成されて俺は追い出された。
何か仲良し三人娘とシエラで熱く議論(?)をしているようだが、抽象的な発言が多くて内容は良く分からなかった。
「ゼフィルス殿も大変デスね~」
「え? パメラはあれ分かるのか?」
「私だって女子デス。当然デース!」
なんてこった。どうやら女子にしか分からない話題のようだ。
ふむ、挨拶も済んだし、俺も退散しておこう。
女子の話に男子が入っても碌なことにはならないからな。
俺はまたまた移動する。
最後にやって来たのは、【炎雷鋼ドワーフ】のアルル、【コレクター】のニーコ、【シーカー】のカイリがいる、サポート関係が集まったようなグループだ。
当然のように我が〈エデン〉のサポート担当であるハンナ、セレスタン、シズもここにいた。
「あ、ゼフィルス兄さんや。いらっしゃい」
「おう、お邪魔するなぁ」
「やあ勇者君、ご
「うん。本当にどれも美味しいな。このようなパーティに参加させてもらい感謝するよ」
「喜んでもらえてよかったよぉ。あ、このミニハンバーグはこのソースを掛けて食べてみて」
そこではアルル、ニーコ、カイリが料理に舌鼓をうち、ご機嫌なハンナが次々と料理を勧めていた。
「ふう。ぼくの胃はもう限界のようだ。これほど豪華な料理の数々、滅多に食べられないというのに。脆弱な腹が恨めしいよ」
「では私がいただこうハンナさん。はぐ、――うぅぅ~~ん、美味だ!」
ハンナからハンバーグを受け取ったカイリが食べた瞬間、カッと目を見開いたかと思えばとても幸せそうな顔をしてそう言った。ニーコは自分の腹を撫でながら恨めしそうにカイリを見つめている。
「あそこはさっきからずっとああなんや。カイリはんの食いっぷりが見事でなぁ、ハンナはんもガンガン餌付けしまくっとんのや」
「確かに、美味しそうな見事な食べっぷりだな」
ハンナの料理はマジで美味しいからな。カイリのあの表情も分かる。
「セレスタンとシズもご苦労様。食事の用意や配膳、助かったよ。二人ともちゃんと食べているか?」
「ご心配なさらずともいただいておりますよ。改めましてゼフィルス様、〈エデン〉のDランク昇格おめでとうございます」
「ありがとうセレスタン」
「ゼフィルス殿はいかがですか? 食べておりますか? 先ほどから席を回り、食事はあまり取っていないようですが?」
シズが珍しく心配してくると、それを聞いたハンナが即でこっちを向いた。
「え? それはいけないよゼフィルス君。ここでたっぷり食べていってよ!」
「ああ、そういえば回っている間はジュースくらいしかもらっていなかったっけ。じゃ、いただくよ」
しかし、ここは静かだな。周りでは何かとギルドバトルなどの話で持ちきりであったが、ここではあまり話題に上がっていない。というのも、ここがサポート系の人ばっかりだからだろう。
唯一ギルドバトルに出場したのはシズだが、他はそもそも戦闘職自体が少ない面子。戦闘面についての質問や聞きたいことがあまりないんだろうな。
「くふぅ!? も、もう食べられないよ……」
「おお? カイリ君がギブアップしたぞ」
一番活気があったカイリがダウンした。ハンナ、食わせすぎだ。
ふむ、もうみんな食べ過ぎるくらい食べた頃か。俺も急いで食べるかな。
ん~、ハンナ料理は相変わらず美味! でも料理ギルドもすごく美味いな。
その後は料理に舌鼓をうち、さらにメンバー、サブメンバーとの交流を深めていった。
〈エデン〉と〈アークアルカディア〉の仲もだいぶ打ち解けてきた様子だ。
明日の土日、〈エデン〉は〈バトルウルフ(第三形態)〉狩りに行く予定で、次の週は期末試験でダンジョンにいけず交流ができない。
今日までに交流でき、友好を温められて良かったよ。
期末試験が終わったら下部
そのための下準備は大体整っただろう。思い残すことはない。
これで来週からのテスト勉強に集中できそうだ。
俺はいたるところで楽しそうにするメンバーとサブメンバーたちを見つめながらそう考える。
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