第五章 〈ダン活〉こなせ、学園長クエスト!
第256話 週の初めから飛ばしてる。例の大の付く4人組。
「ゼフィルス! 我らは貴様の不当な扱いから脱却を宣言する!」
「ふふ、僕たちは決して屈しはしません、どれだけ苦痛を味わっても」
「そうだ! あんな横暴、許してはならない!」
「俺様たちは貴様を倒し、自由をこの手に掴むのだ!」
横並びに整列したすでに見慣れたクラスメイトたちがまったく身に覚えの無い事を口走り始めた。
風評被害だからやめて欲しい。
「ゼフィルス! そこで我らは貴様に〈ギルドバトル〉を申し込む! 逃げることは許されないぞ!」
代表してサターン君が前に出た。その口上はまるで宣戦布告のようだ。
なんでこうなったんだ?
思い出すもまったく心当たりが見つからなかった。
今日は月曜日、歓迎会&祝賀会をやった翌日だ。
昨日はあれから大変だった。女子たちが俺が動けなくなるまで食わすものだから帰れなくなったのだ。
結局その場に〈やわらか簡易マット〉を敷いてギルド部屋で夜を明かすことになってしまった。
朝早く起きて部屋に帰り、シャワーと着替えをしなければならなかったから若干寝不足だ。睡眠耐性付きの料理アイテムが食べたい。でもあれ高いんだよなぁ。美味いけど。
〈耀きの恐竜ステーキ〉は残り少ししかないので取っておきたい。我慢するかぁ。
そんなこんなで少しゆっくりめに部屋を出て、学園に向かった。
ゆっくりすぎて走っても遅刻確定の時間だったので初めて〈セグ改〉を使った。
いやあ、朝遅くて誰も居ない道をセグウェイで疾走するのは楽しかった。
〈セグ改〉のおかげでギリ遅刻せずに滑り込んだクラスにはまだフィリス先生はいなかったのでホッとする、のも束の間だった。
いきなりサターン君を始めとするクラスメイト4人が俺の前に並んだのだ。
そして冒頭に戻る。
やっぱり心当たりは無い。
「あなたたちぃ、朝礼を始めますよ、席についてくださいね」
俺が首を捻っていると俺の後ろに人の気配がした、言わずもがなフィリス先生だ。
本当にギリギリだったな。危ない危ない。
俺は何事も無かったように席に座り、今日の授業がまた始まったのだった。
「うぉいゼフィルス! 貴様、朝我らが言ったことを忘れたのではあるまいな!?」
「え? ……なんだっけ?」
「ふふ、ふふふふふ。僕は、苦痛…などに、負けない…」
「くそう! こんな横暴をいつまでも許しておいていいのか!」
「俺様を忘れるなよ! あれだけハッキリ言っただろう!?」
確かに朝何か言っていた気がしたけど、若干眠かったのと遅刻寸前だったのとですっかり耳を通り抜けてしまったのだ。
でも大丈夫。俺とこいつらの仲だ。聞き逃してしまったことはまた聞けば良い。
「もう一度聞いて良いか?」
「ぐふっ。くっ、いいだろう。もう一度言ってやる。全員横に並べ! 最初からだ!」
「あ、そういうのはいいから簡潔に言って貰えるか? じゃないと休み時間なくなっちゃうからさ」
「ぐうぉぉぉぉ!」
現在お昼時間。俺は相変わらず食堂のメニューを全制覇の旅を続けていてまったりと教室に帰ってきたところだ。
残りの休み時間は5分と無い。次の授業の仕度もあるので手早く済ませて貰いたかったのだが、なぜかサターン君が苦しみの声を上げた。大丈夫だろうか? もしかしたら昼食を食い過ぎたのかもしれない。俺も昨日は苦しかったから分かるのだ。
「放課後だ…。放課後にまた宣言してやる! 首を洗って待っているがいい!」
そう言い残し、サターン君たちは席に戻っていった。
放課後…。ああ、多分ダンジョンの事だろう。
おそらくまた鍛えて欲しいとお願いしに来たに違いない。
プライドが高いからなぁ彼らは、きっと素直になれなかったんだろう。よし、今日もビシバシ鍛えてやるかな。ちょっとハードめにしても良いかもしれない。
そんな事を計画していたので、前方の席の4人が寒気に震え上がっているのに俺は気が付かないのだった。
そして放課後。
「行くぞゼフィルス! 付いてこい!」
「おいおいどこ行くんだ。初ダンはこっちだろ?」
「貴様やっぱり忘れているだろう!」
サターン君たちがなぜか初ダンとは別方向に向かうので引き留めると、サターン君の顔が怒りに染まった。
どうやらダンジョン関係では無いようだ。
やってきたのは〈ギルド申請受付所〉。
ギルドの登録や加入の手続きをしたり、ギルドバトルの申請なんかが出来る部署だ。俺も昨日リーナの加入手続きのために来た。1日ぶりだ。
一体こんなところで何を? いや、まさか?
「おいサターン君。俺はすでに〈エデン〉のギルドマスターだから掛け持ちは出来ないぞ?」
「違うわ!」
俺をギルドに誘う気かと思ったのだがどうやら違うらしい。
「いいだろう。もう一度宣言してやる!」
「あ、あまり大きな声は出さないようにな。他の人に迷惑だから」
「くそぉ!」
サターン君が歯を食いしばって何かに耐えるようは仕草をする。
血管に怒りマークが浮き出ていてちょっと怖い。
「ふふ、ふふふふ。サターン、ここは僕に任せて貰いましょう」
「くっ、ジーロン」
ジーロン君に言われ素直に下がるサターン君。
確かにジーロン君は冷静沈着で大きな声を発するイメージは無い。良い人選だろう。
「ふふ、ハッキリ言いましょう。ゼフィルス、僕たちとギルドバトルをしなさい。そして僕たちが勝てばあの拷問まがいな訓練から、いいえあなたの訓練自体から脱却します」
拷問まがいな訓練ってなんのことだろうか? まったく身に覚えがないのだが?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます