第177話 とある日常の風景。皆で食事に行こうか!
「お疲れ様~」
「う、うむ。お疲れ様だ」
「お腹、空いた…」
「あなたたち、大丈夫?」
〈バトルウルフ〉狩りに出発した日の夕方。たった今〈初ダン〉に帰還したところだ。
少し日が沈んでしまったが、なんとか15周のボス周回をすることに成功した。
やっぱり午後からだと成果がいまいちだな。今度は朝から行きたいぜ。目指せ、最高記録更新!(73周以上)
俺は〈バトルウルフ〉狩りの決意を新たにした。何故かプルプル震える〈バトルウルフ〉の幻覚が見えた気がしたがきっと気のせいに違いない。
しかし、そんな燃える俺とは裏腹に疲れたようにその場にへたり込みそうなリカとカルアの姿があった。
「どうしたんだ?」
「いや、思いのほかハードだっただけだ。そうか、先陣組はこんなことをしていたのか、これは追いつけないはずだな…」
「お腹、空いた」
どうやら初めてのボス周回で少しバテたらしい。
今回は俺が付いて行った事で『
〈バトルウルフ〉戦を易々と乗り越え、さあ帰ろうかという雰囲気の2人を引き戻し、門をドカン。ボスをリポップさせてみせた時の2人の反応は面白かった。カルアは耳と尻尾をピンと立たせて目を丸くしていたし、リカも油断していたため驚愕に目を瞬かせていたからな。普段じゃ見られない光景だ。2人とも目の前のものが信じられないといった感じでとても良かった。ドッキリ成功である。
「ゼフィルス、今度から話を通してからやってほしい」
「それじゃあドッキリにならないだろ。俺は皆の驚いた顔が見たい」
「……まさかゼフィルスにこのような一面があったとは」
リカが俺の意外な一面に眼を瞬かせる。
「ゼフィルスは最初からこんな性格よ。【勇者】の噂が一人歩きしているの」
「です。でも普段は気遣ってくれますし、優しいですよゼフィルス君は。それに格好いいです」
「ん。それ、わかる。ゼフィルス格好いい」
シエラ、ハンナ、カルアの順に俺をフォローしてくれた、
ふはは。それほどでもある。なんちゃって。
リカとカルアは〈エデン〉加入後ほったらかしだったからな。特にリカは噂に惑わされすぎて俺を美化しすぎていたらしい。
今後もう少しコミュニケーションを取っていこうと思う。
「で、今回の〈バトルウルフ〉戦は楽しかったか?」
「楽しいか…。そんな事、あまり考えた事は無かったが、確かに最近楽しいと感じている。今回の〈バトルウルフ〉戦は、楽しかった」
「ん。ダンジョン。楽しい」
「そうだろうそうだろう。よく覚えておくといい、ダンジョンは楽しめ。ダンジョンというのは辛く苦しい試練の地ではない。とても面白く、幸福で、楽しい場所、ついでに強くも成れるんだから最高の地だ。だからダンジョンに行ったらまず楽しんでこい。もう一度言うぞ、ダンジョンは楽しめ」
「…なんだろうな。私が考えていたダンジョンと大きく違うが。しかし、不思議と心地よいな」
「ん」
「そうね、なんでしょうね。あなたが言うと、不思議な説得力があるのよね」
「分かります。ゼフィルス君って、ダンジョンの事とかになると本気度が違いますよね」
おっと俺とした事が、思わず熱弁をしてしまった。
だが分かってほしい。〈ダン活〉は最高の世界だ。楽しめないなんて嘘だぜ。
ギルド〈エデン〉に入った以上、その辺をきっちりと教えてやるから楽しみにしていてくれ。
「あ、ルルちゃんたちだ」
「ん?」
ハンナの声にそちらを向くと、ちょうど〈初心者ダンジョン〉の門からルル、シェリア、セレスタンが出てくるところだった。
向こうもこっちに気がついたのでハンナが軽く手を振る。
「あ、シエラ! ハンナ! ゼフィルスお兄様!」
「お疲れ様。そっちも今終わったところか?」
「あい! シエラー、【ロリータヒーロー】もLV10になったですよ!」
ダンジョン帰りとは思えないほど元気なルルがこちらに駆けてきたと思ったらシエラにダイブした。よほど【ロリータヒーロー】がLV10になったのが嬉しかったのか、おでこを
そんな事を思っているとシェリアが完了の報告に来てくれた。
「お疲れ様です。無事全員が
「そうか! じゃあ明日から予定通り
〈初心者ダンジョン〉が大混雑した時はどうなる事かと思ったが(俺のせいではない)、なんとかLV10まで周回できたようで良かった。
早速明日からの予定を組まなければいけないな!
そう思ったところで、誰かのお腹が「ぐ~」と鳴ったのが聞こえた。
「お腹、減った」
カルアからだったらしい。まあ、もう日が暮れるからな。
「じゃ、せっかくだから全員でご飯でも食べに行くか」
「! 大賛成」
「良いわね」
「僕もよろしいのですか?」
「セレスタンも〈エデン〉のメンバーだろう、良いに決まってる」
結局全員参加できるとの事なので飲食店が立ち並ぶ方へ向かう。
「どこが良いかね」
「カレーに投票したい」
珍しく区切らずに言い切ったカルアがキラキラした視線で見つめていた。
カレーはカルアを変えるらしい。
特に反対意見も出なかったので、カルアと出会った時に行ったカレー専門店〈マーベラース〉へ行く事にしたのだった。
あの時は3杯でギブアップしてしまったが、今度はどれだけ食べられるだろうか。少しチャレンジしてみよう。
…しかし、結局は前回と同じくカレー3杯でギブアップしてしまったのだった。カレーは飲み物じゃないと思うんだ。
ちなみにカルアはおかわり10杯をペロリと平らげて平然としていた。
シエラとハンナはどこにカレーが消えたのか、しきりにカルアのお腹を気にしていたのが印象的だった。
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