第129話 装備一新! さあ学生手帳を出すんだ。
「ど、どうかなゼフィルス君。似合ってる、かな?」
「おう! ばっちり似合ってて可愛いぞ」
「え、えへへ」
「よく似合っていますよハンナさん」
「本当ね。マリー先輩のギルドは凄いわね」
「ハンナ凄く強そうだわ!」
月曜日。ついにマリー先輩からハンナの装備が出来上がったと連絡が来た。
〈
ちなみにダンジョンに入っても連絡は使用可能だ。全滅時とか〈救難報告〉を上げたりと非常に重宝する。
それはともかく、早速朝からハンナ、俺、エステル、シエラ、ラナ、の五人でマリー先輩の下へ出向き、新装備を試着しているわけだが。
マリー先輩、またも力を入れまくったらしい。
「へへ、どや!」
「さすがマリー先輩のギルド〈ワッペンシールステッカー〉だ。素晴らしい出来だぜ! 一言で言えばブラボーだ!」
小柄なマリー先輩とグッと熱く手を握る。
装備の出来は素晴らしいの一言に尽きた。
〈アーリクイーン黒〉に合わせた黒を基調とした装備一式。
中折れ帽子も含めて一気に魔女スタイルになったな。実に錬金術師っぽい装備だ。
まさかウルフ系の素材から魔女服が出来上がるとは、さすが本職が〈デザインペイント変更屋〉だけある。
そしてコーディネートも抜群。さすが専門家は違う。バラバラの装備のはずなのにしっかり合うよう作られている。
その手の専門家が作ったクオリティの高いコスプレみたいだ、と言ったら〈ワッペンシールステッカー〉の人たちに失礼か。
そしてさらに注目すべきはその性能。
――――――――――
・頭装備 〈戦小狼の魔女折れ帽子〉
〈防御力9、魔防力3、『HP+40』〉
・体装備①〈アーリクイーン黒〉
〈防御力20、魔防力13、『打撃耐性』〉
・体装備②〈希少小狼のケープ〉
〈防御力28、魔防力18、『斬撃耐性』〉
・腕装備 〈バトルフグローブ〉
〈防御力11、魔防力4、『HP+20』〉
・足装備 〈バトルフシューズ〉
〈防御力6、魔防力3、『移動速度上昇LV3』〉
・アクセサリー①〈節約上手の指輪〉
〈防御力9、魔防力9、『MP消費削減LV3』〉
・アクセサリー②〈火のお守り〉
〈魔防力10、『火属性威力上昇LV2』〉
―――――――――――
全てが
特にレアボス〈バトルウルフ〉第二形態の素材を贅沢に使った〈希少小狼のケープ〉の数値がすごい。これは間違いなく
合計すると〈防御力:83〉〈魔防力:60〉にもなる。
ちなみに俺の〈天空シリーズ〉は〈盾〉と〈鎧〉二つ合わせて〈防御力:76〉〈魔防力:52〉なので完全に抜かれた形だ。
これくらいの硬さが有ればまず
ハンナもだいぶ気に入っている様子でほわほわしている。
そこからマリー先輩が装備を微調整して、無事完成となった。
さて、そのお値段だが…。
「締めて1200万ミールやな!」
「いっせんにひゃくまんみーる!」
喜色満面だったハンナが一瞬で固まった。
ついに、来るべき時が来たんだハンナ。〈ダン活〉プレイヤーなら何度も直面する、ミールが羽ばたき、手元から飛んでいく瞬間。ハンナにもたっぷり経験して慣れてもらわないとな。
ちなみに王族貴族組は平常運転、とは行かず、ラナだけその金額を呆然と聞いていた。
ラナもこの金額に耐性は無かったらしい。
一文無し王女だしな。
「じゃ、ハンナ。学生手帳を出すんだ」
「ひゃ!? ほ、ほんとに?」
さっきまでとても幸せそうにしていたハンナ。
しかし、今はとても悲しそうな顔をしている。誰だハンナにこんな顔させたのは!(……)
「で、でもねゼフィルス君、ミールがね、その足りないっていうかね?」
「大丈夫だ。――マリー先輩」
「あいよ~」
俺の呼びかけにマリー先輩は手際よく何かを取り出した。
それは〈幽霊の洞窟ダンジョン〉と〈小狼の浅森ダンジョン〉の査定表。
実はまだその報酬を受け取っていなかったのだ。
あまりに素材の量が多すぎて査定にすごい時間が掛かったらしいからな。仕方ない。あ、マリー先輩その笑顔怖いです。ごめんなさい。
ま、まあ。こっちの買い取り分のミールを足せばなんとか足りるだろうと思う。
「兄さんたちが卸してくれた素材な、締めて2,885万ミールや」
「にっ!」
ハンナがその金額を聞いて声が引きつった。
俺はまあ、あれだけ周回したんだからそれくらいは行くだろうと思っていた。
むしろ124周+
「そんなん、デフレに決まってるやろ! どんだけ狩ってきたんや! 素材の過剰供給!」
マリー先輩が吠えた。
どうやら周回しすぎたために価値が少々低下してしまったらしい。
マリー先輩からは後続の事も考えなあかんよと言われてしまった。
確かに俺たちの次に〈バトルウルフ〉に挑む一年生たちはその価値の低さに涙するだろう。しかしそれはゲームでは仕方が無い事なのだ。
周回をやめる気なんて無いぞ俺は。他の一年生は頑張れ。ふはは。
あと、ハンナの装備に使った持ち込み素材は当然査定から省かれているとも言われた。
ならあの金額にも納得だな。少し残念だが。
とりあえずその金額からハンナ分を引いてもらい、残りの金額が支払われる。
ちなみに、前回セレスタンと決めた資金運用は無事昨日から開始されたが、今回の〈幽霊の洞窟ダンジョン〉と〈小狼の浅森ダンジョン〉の買い取り額はそれ以前のものなので全額山分け、ということになっている。
つまりハンナの取り分は577万ミール。約半分だな。しかしこれは丸々マリー先輩に吸い上げられ、残りの623万ミールを支払うだけで装備が購入できる手筈だ。これなら足りるだろ?
「さ、ハンナ。学生手帳を出すんだ」
マリー先輩の〈学生手帳〉に俺の〈学生手帳〉を合わせると「ピロリン♪」と入金が完了する。
「ふ、ふえぇ」
マリー先輩の〈学生手帳〉にハンナの〈学生手帳〉を合わせると「ピロリン♪」と支払いが完了した。
どうしてだろう。同じ「ピロリン♪」なのにこうも受ける印象が違うのは…。
ハンナがジッと自分の学生手帳を見つめていたのが妙に印象に残った。
なんだか可哀想になってきたので後で慰めておこうと思う。
さて、切り替えていこう!
ハンナの装備も整った、これで初級上位ダンジョンに挑む準備も完了だ。
続いて、
「さてお待ちかね、全員分の〈エンブレム〉の刺繍・彫金が終わったで!」
「「「「「おお!」」」」」
次にマリー先輩が取り出したのは、俺たち全員分の装備。
昨日のうちに預けていたものだ。さすが仕事が早い。
さらに、
「わー、なんか新品みたい!」
ハンナが俺たちの装備を見てキラキラした視線で言う。
確かに、俺たちの装備は全てがピカピカに磨かれていた。
「せやろ? ついでやからしっかりクリーンとメンテナンスもしておいたで。いや、うちのメンバーがな。あれだけの〈エンブレム〉作ったんやから装備だって見栄えが良くなきゃいけない、とかぬかしてな。手抜き無しでしっかりピカピカにしてん。あ、ちなみにこれはサービスや、またして欲しかったら次からは有料な」
「ちゃっかりしてるわね」
「これが商売やからな!」
マリー先輩の商売がたくましい。
でも何故だろう。いいこいいこ撫でたくなる。
「ねえ、早速着させてもらいましょ!」
「ええ。楽しみですね」
「賛成だ。マリー先輩、奥の部屋借りるな」
「ええよ~」
マリー先輩の許可を得て奥の部屋で着替える。
もちろん男女別だ。
俺は先に着替え終わり見せに戻るとハンナがキラキラした視線を向けてきた。
「ぜ、ゼフィルス君。なんか凄く耀いて見えるよ」
「おう、ありがとな」
胸に耀く〈エンブレム〉。新品同様に成った装備と相まって相当良い感じに見える。
俺も姿見の前でいくつかポーズを取ってしまったほどだ。
そんなことをしていると奥の扉が開く。
お、〈姫職〉組の登場だ。
「どうかしら!」
「グレイトだ! 素晴らしく似合っているぜ。全員美しさが天井突破してる!」
「もう、大げさね」
「少し、恥ずかしいですね」
「むふふ。もっとよ! もっと褒め称えなさいよ!」
一人いつも通り過ぎる子がいるが、シエラとエステルはどことなく照れている様子だ。
その照れ顔、プライスレス。ラナにも照れろと言いたいね。
それにしても装備がきらびやかになると印象もグッと変わる。
全員が胸や肩などに〈エデン〉の〈エンブレム〉が有り、なんだか同じギルドの一員という印象を強く受けた。
本当に、マリー先輩たち〈ワッペンシールステッカー〉は良い仕事をするぜ。
「マリー先輩、近々メンバーが数人増える予定だから、その分も頼むぜ」
「利用券、二枚やな!」
「せめて一枚にして?」
まったく、マリー先輩には敵わないぜ。
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