第77話 改めてSランクを目指す。共に上を目指そうぜ!




 大いに会場を盛り上がらせた学園きっての大勝負が幕を閉じた。


 その余韻に浸りながら混雑を嫌って早々にアリーナから退場し、そのまま夕食を購入してギルド部屋まで持ってくる。

 みんな、一息入れたい気分だった。


 食後になって、ようやく気持ちとギルドバトルの内容が飲み込めたのだろう。

 まずラナがポツポツと語りだした。


「なんだかよくわからなかったけど、とにかくすごかったわ」


「なんだその感想?」


 今だ会場の熱気が抜けきっていないのか語彙がいつも以上に拙い。


「だって、ギルドバトルを見るのは初めてだったんだもの。聞いていたのと全然違くて驚いたのよ」


 その感想なら分かる。


「どんな事聞いてたのか予想が付くが、今回のは学園一の大勝負と言っても過言じゃないからなぁ。迫力が違ったんだろうぜ」


 初観戦で決勝戦を見るようなものだ。

 熱気と迫力は他のバトルと段違いなのは当たり前である。


 俺も、王太子ユーリとキリちゃん先輩のタイマンはむちゃ感動した。

 あれ、俺も出来るようになりたいぜ。


 その後も皆の感想を聞くと、概ねラナみたいな反応が返ってきた。

 みんなギルドバトルを気に入ってくれたようで何よりだ。


「ギルドバトルって私たちもいつかやるんだよね。私に出来るかなぁ…」


「ハンナは生産職だろ。今日の〈城取り〉のような戦闘は俺ら戦闘職がやるからハンナは不参加だぞ?」


「あ、そっか。でもそう聞くと出てみたいような…」


「ま、相手次第だな。余裕があれば出してもいいが」


 とはいえハンナは戦闘ステータスが皆無だからな。すぐやられちまうと思う。


「〈ランク戦〉はDランクからなのよね?」


 ハンナとの会話が一段落した頃を見計らいシエラが聞いてくる。


「だな。ちょっと話す機会が無かったが、今説明しておくか」


 今なら考えがギルドバトル一色に染まってるから良い機会だろう。


「ギルドバトルの〈ランク戦〉はギルドランクの変動の際行われる所謂いわゆるランキング戦だ。勝ったほうが上位ランクに就く。ギルドランクを上げたければ避けては通れない難関だな」


 全員が耳を傾けたのを確認して話し始める。


「まずギルドランクを上げる意義だが、これはもう皆が知っている通りだ。ランクが上がれば特典が付くし、参加人数は増えるし、学園から優遇処置もある。ギルドハウスみたいなやつな。他にもここでアピールしたり実績を残せば今後の人生が有利にススム・・・と考えていい。例えば、就活とかな」


 〈ダン活〉のメインコンテンツだな。これを語らないと始まらない。


「次にギルドランクだが、最初はFから始まり最高はSまで。FからDまではダンジョン攻略の実績や授業の評価、ギルドメンバーの人数や平均職業ジョブLVなどを目安にして、学園からの課題試練をクリアすればランクアップできる。中級中位ダンジョンまでクリアしていればDランクにはなれるな」


 Dランクまでは楽だ。何しろストーリー進めていれば勝手に上がるし。

 しかし、ここからはランクアップにギルドバトルが絡んでくる。ギルドバトルが下手なギルドは一生上がれない。


「ここからは簡単には上がれない。Cランクギルドは強いからな」


「マリー先輩のギルドがCランクだったよね」


「そうだな。〈ワッペンシールステッカー〉は生産職だが、堅実で腕がいい。でもそれでもCランクに甘んじている。それだけ上の壁が厚いんだ」


 ハンナの装備〈アーリクイーン黒〉は防御力20を誇る。初級下位ダンジョンの素材だけで20を確保するのはかなりの腕が必要だが、それでもCランク止まりだ。


「Cランクからは学園からの手当てや優遇処置、特典に加え外部の目の色も変わる。ギルド部屋もギルドハウスにランクアップするし店だって持てるようになる。そのかわりギルドの席に限りがあるんだ」


「だから、ギルドバトルでその席を奪い合うわけね」


「ま、そういうことだな。ちなみに席数だが〈Sギルド3席=150人〉〈Aギルド6席=240人〉〈Bギルド20席=600人〉〈Cギルド150席=3000人〉、合計3990人。そして学園の学生総数が2万人。つまり5人に1人しかCランク以上に上がれない、狭き門だ」


 故にCランクギルド以上に所属する学生はエリートと言われる。

 外部からの目が変わるというのはそういうことだ。そりゃ学園側も優遇するよな。


 Bランク以上は1000人を下回るためランク上げが非常に難しい。〈ワッペンシールステッカー〉ギルドがCランクに甘んじているのは単純に実力不足というわけだ。


「それで、ゼフィルスは昇るつもりなのよね。上に」


 シエラの問いにニヤリとして返す。


「当然だ。目標はSランク。それ以外は認めない」


 何のためにわざわざ【勇者】を選んだのか。

 もちろんリアル〈ダン活〉を楽しみ尽くすためだ。

 そのためなら最強くらい当たり前に就かなければならない。


「全員、付いてきてくれるか?」


 席を立ち、皆を見渡しながら問う。

 答えを知ってはいても、みんなの口から言葉にして聞きたかった。


「何よ。当たり前じゃない。むしろSランクまで行かないと許さないわよ」


「私も返せないほどのご恩があります。僭越ながら御供させていただきたく思います」


 ラナが腰に手を当てて上から目線で言うと、畏まったようにエステルが真っ直ぐ目を見て告げてくる。


 そうだな、許されないよな。俺もSランク行かない自分とか自分で許せないわ。その時はラナ、一緒に俺を折檻しような。


 エステルは僭越ながらとか、なんか俺を上に見過ぎじゃないか? いや普通に仲間として付いてきてほしいんだけど。何故かエステルは俺に御供する気満々だ。まあ、付いてきてくれるそうだから良いのか?


「私はずっとゼフィルス君と一緒にいるって決めているから。今更離れるなんて言わないよ」


 ハンナは俺が〈ダン活〉に来てから一番長い付き合いだ。俺もハンナと今更別れるなんて考えられない。もし抜けるとか言ったらあの手この手で引き留める所存だった。どんな方法かは言えない。

 そんな事が無くて良かった良かった。


 最後はシエラだ。正直、彼女が一番読めないと言えるが、はたして。


「そんな心配そうな顔しなくても良いわ。私だってあなたに感謝しているもの。今更抜けるつもりなんて無いわ。あなたの成り上がり。一番近くで見ていてあげるから」


 少し照れたように目を逸らして言うシエラ。

 心配は杞憂だったらしい。


 ああ。なんだろうなこの気持ち。

 こうジーンと来た。


 改めて全員の顔を見る。


 みんな、良い表情だ。


 こりゃ、今後も安心して一緒に行けるな。


「ありがとな。これから頑張って、共に上を目指そうぜ!」


「「「おーっ!!」」」

「はいはい」


 シエラ、今くらいは皆と合わそうぜ?

 クールなシエラも良いけどな!




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