第54話 初の初級中位ダンジョン! 哀れスライムに南無
初級中位ダンジョン〈野草の草原ダンジョン〉。
フィールド型ダンジョンの典型。一面草原のダンジョンだ。
最初に選んだ理由は単純で、モンスターからの奇襲を受けにくく、罠もほぼ無く、攻略難易度が低い、というのもあるが。
一番の理由は
〈魔力草〉は『錬金』や『調薬』などのスキルで〈
ついに念願のMPポーションが手に入る。ボス戦の周回が捗るので絶対に必要なアイテムだ。
まあ、今までも店売りで買えば良かったのだが、普通の周回でも
しかし、
LV20を超えると途端にLVが上がりにくくなるので、ここからの周回はMPポーションのブーストが必要だ。
ハンナには是非頑張ってもらいたい。
「ここが、初級中位ダンジョン…。なんか初心者ダンジョンに似てるね」
ハンナが景色を見渡しながら目をパチクリとさせる。
「まあな。だが、モンスターも凶悪になるし、数は少ないが罠も出始める。見た目は似ていても難易度は段違いだから気を引き締めろよ。ハンナはステータスを戦闘系にほとんど振ってないんだから」
「うん。気をつける。でもゼフィルスくんが買ってくれた
ハンナはくるりと回り〈アーリクイーン黒〉を見せつけるようにした。
ロングスカートがふわりと舞い、思わず視線が行ってしまう。
マリー先輩のギルド〈ワッペンシールステッカー〉の人たちが何故か全力で仕上げてくれた、戦闘の実用性と見た目のコーディネートを兼ね揃えた素晴らしい一品だ。
ハンナにもよく似合っている。特に胸の辺りがすごくいい。
「こほん。そうだな、ステータスのVIT値が低くても防具の防御力である程度防げる。今の防御力は合計でどのくらいなんだ?」
「えっと、〈アーリクイーン黒〉が20。あと靴とネックレス、ブレスレットで…26くらいかな?」
「
「だって、装備ってすごい高いんだもん」
だもん…。じゃない。
ハンナは防御力に難ありなんだから装備はしっかり揃えないと、流れ弾が当って即戦闘不能になるぞ。せっかく〈アーリクイーン黒〉が20もあるのに他が弱くっちゃ浮かばれない。
「俺はミールに余裕あるし、少しくらいなら出してやるから、またマリー先輩のところに行くか」
「うん。ゼフィルス君、ありがとう。頼りにしてるね」
ま、頼りにされるのは悪い気はしないな。
さて初級中位ダンジョンの攻略を始めるか。
ザッシュザッシュ!
「ゴブゥ………」
俺が斬った
〈初心者ダンジョン〉のボス部屋にいたモンスターと同種の存在だ。ここからリクルートされたと思われる。
〈野草の草原ダンジョン〉では上層に
だが、上層は無手なので雑魚だ。
しかし、身軽なので少しすばしっこい。
故に魔法や射撃系の練習にはちょうど良かったりする。
「ハンナ。あっちのゴブリンにアタック」
「『ファイヤーボール』!」
ハンナの持つステッキ〈フレムロッド〉から火の玉が飛び出しゴブリンの方へ向かうが、角度が甘い。
ハンナのファイヤーボールはゴブリンを掠める事無く彼方へ飛んでいった。
「ああ、また外れた」
ハンナはダンジョンの中では優れたコンディションを持つが、まだまだ練度不足で動く敵に当てる事は難しい。
しかし、昨日の今日で動かない相手には命中させられるようになっているのだからハンナは素質があると思う。
「『アピール』」
攻撃されたゴブリンがハンナの方へ向いたので『アピール』を使ってこっちに注目させる。
「ま、そんなすぐに当てられるようにはならないから、地道に練習あるのみだ。ハンナ、MPは?」
「まだ全然残ってるよ。『ファイヤーボールLV2』ってMP3しか使わないし」
ハンナはステータスをMPとDEXに優先的に振っているおかげでMP最大値はかなりのものだ。少なくとも俺よりは高い。
「ゴビュ!?」
「やったー!」
お、今度はちゃんと当たった。
さすがに一撃では倒せなかったが、ぶっ倒れてダウンしたゴブリンにハンナが追撃の『ファイヤーボール』を食らわせると光になって消える。
「魔法で初撃破おめでとう」
「ありがとうゼフィルスくん! でも、やっぱりちょっと物足りないかな…」
ハンナが〈フレムロッド〉をフリフリしてそんな事を呟く。
はて? 手応え的なアレだろうか? 殴り足りない的な?
「さすがに
「うん、分かってはいるの。大丈夫、後でスラリポしてお口直しするし」
お口直しの意味違わないか?
哀れスライムに南無と呟いて、次の獲物を探しに向かった。
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