第24話 準備
ミラノ隊長を見送ると、すぐにゴクウをもう一体セットした。
これで明後日の昼前には出来上がるはずだ。
ダンジョン調査隊がくれば忙しくなるだろうから、ゴクウタイプはもう何体か作っておきたい。
それに後2体作ればゴーレム作製のレベルも上がる。
新しいタイプのゴーレムが作れるようになるかもしれないのだ。
食料さえ確保できるのなら連続でゴーレムを作るのもいいかと思った。
昼から夕方にかけて、イワオたちには畑と道の整備、燃料となる薪集めなどをしてもらい、ゴクウには果物を採りに行かせた。
俺は海で釣りに勤しむ。
ゴーレムを作製しているので作製魔法は使えない。
食料は自力で確保しなければならないのだが、こんな日に限って何も釣れなかった。
仕方がないので磯で小さな岩ガニを獲った。
これは身を食べるというよりは出汁にするのだ。
トマトソースに合わせてパスタにしてもよさそうだけど今は無理だ。
時間やMPに余裕がある時にやってみよう。
ゲストが3人もいたので食料のストックは少なくなっている。
獲ってきたばかりの小さなカニが10匹とバナナが6本、玉ネギが1個、塩漬け肉が僅かに残っているだけだった。
ゴクウも今日はパパイヤを3個しか見つけられなかったから、夕飯はカニの潮汁(うしおじる)とバナナだけになってしまった。
明日こそは魚を釣りたい。
あとは島に生息している野生のヤギを捕まえられないかと考えている。
雌だったら乳も搾れるはずだ。
ミルクだって創造魔法で作り出すことはできるんだけど、人々の目をごまかすためにもヤギはいた方がいい。
今みたいに魔法が使えない時だってあるんだからね。
微妙な空腹に苛まれながら眠りについた。
最近は日の出とともに目覚める生活になっている。
この世界にもだいぶ慣れてきたもんだ。
パパイヤを2個食べて朝食とした。
「イワオたちは南の遺跡に向けての道を作り始めてくれ。ゴクウは果物の採取ね」
命令を下して、自分も海へと向かった。
岩屋からダンジョンへ行ける道があれば調査隊の人も便利だろう。
今の内からイワオたちに作らせれば調査隊の人が来る前に細い小道程度なら開通できるはずだ。
そうなれば、きっと感謝されるに違いない。
正直に言おう。
俺はチヤホヤされたいのだ。
遠からず100人もの女の子がこの島へやってくる。
きっと好みのタイプの一人や二人はいるだろう。
そもそも俺のストライクゾーンはとっても広いから20人くらいいてもおかしくはない。
ひょっとすると40人……。
そんな子たち全員に愛されたいというのが俺の願いだ。
そのためには小道の一つや二つ作るくらいどうということもないぞ。
その時、とんでもない奴らに襲われたという記憶は半分デリートされていた。
多分、クリス様やセシリーとの思い出、ミラノ隊長たちの入浴シーンでメモリが上書きされてしまっていたんだろう。
我ながら能天気だったと反省だ。
たぶん脳みそが破裂してしまいそうなほどに妄想を膨らませていたのが悪かったんだと思う。
時間が経過してゴクウ2号が完成した。
本当は立て続けにもう一体作製したかったのだが食料の余裕がなくなっている。
魚が不漁だったのだ。
ここ二日は小さなカニの身をほじくり出してチマチマ食べるくらい、いじましい食生活が続いていた。
「1号は2号をつれて果物を探しに行ってくれ。2号に島の地形を教えてやるんだ」
出来立てのゴクウをさっそく働かせて、すぐに米の作製にかかった。
精米してある生のお米だと、炊いてあるご飯よりも早く、しかもたくさん作製できる。
鍋でご飯を炊くことは出来るので、こちらの方がお得なのだ。
作製時間は50gで20分。
お米は一合で150gくらいだからとりあえず500g作製しておこう。
食料作製のレベル補正もあるから3時間もあれば出来あがるな。
夕飯はカニ雑炊だ!
以前にネギを作製したのだけど、上部を使って余った根っこは畑に挿しておいたらイイ感じに育っていた。
地面から上をナイフでちょん切ってカニ雑炊に入れることにしよう。
切り口からは再びネギが生えてくるはずだ。
実をいうとこれは自分の母親がやっていたのを見たことがあったのだ。
母ちゃん、あの時はセコイだなんて思ってごめん。
食料の大切さが異世界にきて初めてわかったよ。
一晩かけて日持ちのしそうなベーコンや野菜を作製してから、ゴクウ3号の作製を始めた。
こいつができ上ればゴーレム作製のレベルが上がる。
二日後が楽しみだ。
「イワオたち、集まってくれ」
三体のイワオが勢ぞろいする。
こいつらは昼夜関係なく働いている。
動いているとMP消費はしてしまうが、疲れることも文句を言うこともないのでありがたい。
ゴクウを作る前にMPの補給もしてあるから、今日も元気に働いてくれることだろう。
「今日は穴掘りをしてもらうからな。よし、ついてこい」
ゲストを迎える準備をしながら俺は大事なことに気がついてしまったのだ。
そう、この島にはトイレがないのだ。
ちなみに俺は岩屋から少し離れた適当な場所でやっている。
これだけ聞くと公衆衛生を心配される人もいるかと思うが、それは大丈夫だ。
なぜなら益魔であるスライムがすぐに現れて吸収してしまうからなのだ。
どうやって嗅ぎつけるかはわからないけど、出せばすぐに来る。
おそらく5分とはかかっていない。
俺のが特別臭いわけじゃないぞ!
おかげで岩屋の周りは清潔に保たれている。
だけどさ、100人からの兵隊たちが来たら、さすがにそういうわけにはいかないと思うんだよ。
やっぱり場所は決めておかないとね。
というわけでトイレとなる穴を掘ることにしたのだ。
この穴の中でスライムを飼えば環境汚染も防げるに違いないだろう。
便座は俺の道具作製で作れるから個室を10ほど作る予定だ。
やっぱり、男性用と女性用を分けておいた方がいいよな……。
俺用のトイレも別の場所に作ることにした。
大地に枝で線を書いてだいたいの大きさを決める。
「よし、線の内側を掘るんだぞ。深さは5メートルだ。穴から出られるように階段をつけるのを忘れるな」
こまごまとした指示を出してやると、イワオたちは黙々と作業を始めた。
トイレを皮切りに、ゲストを迎えるための準備を着々と進めた。
遺跡までの小道も開通し、三日月海岸への道も拡張工事が行われている。
スタッフとなるゴクウ3号も完成したのに伴い、ゴーレム作製レベルも3に上がった。
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作製品目:ウッドゴーレム タイプホース(Lv.1)
カテゴリ:ゴーレム作製(Lv.3)
消費MP 212
説明:馬型のウッドゴーレム。運搬用や農耕馬として使役することが可能。トップスピードは毎時40キロメートル(5分以上継続してトップスピードを維持すると、損傷の恐れあり)
作製時間:38時間
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今度は馬を作れるようになったぞ。
島の中の移動は全部徒歩だったからとっても便利になった。
すぐに馬型のゴーレムも作って、シルバーという名前を付けた。
最近ではちょっと遠出をするときはシルバーに乗っていくことにしている。
乗馬なんて初めての経験だけど、シルバーに乗るのは面白かった。
士官用の風呂、トイレ、道路整備、それに続いて丸太小屋を作らせてインフラ整備は一段落した。
同時に料理のレパートリーを広げるために調味料もたくさん作製している。
塩はもちろんのこと、醤油、ソース、砂糖、味噌、スパイス類、ケチャップ、マヨネーズなんかも次々と作っていった。
他にも燻製室なんてものも作ってみた。
ここではベーコンやソーセージ、魚のスモークなんかも作ってみたい。
魔法だけじゃなくて、体を使った作製もやってみたいからね。
そんな風に準備は着々と進んだ。
そしてミラノ隊長たちがこの島を去って10日が経った昼のこと。
いつものように海で釣りをしていたら、水平線の彼方に一匹のワイバーンが飛んでくるのが見えた。
何かしらの連絡を携えて三人の内の誰かが戻ってきたようだった。
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