第19話 ゴーレム ラッシュ

 イワオも3号まで出来上がったので安心感がまるで違う。

岩屋の入り口に3体のイワオが並ぶ姿は壮観だ。

1,2号にはいつもの棍棒を装備させ、できたばかりの3号には松明を握らせておいた。

どれがどれだかわからなくなるから、近いうちにペンキを作製して数字をペイントしてやらないといけないな。


 現在のステータスはこのようになっている。


####


創造魔法 Lv.6

取得経験値:117/1500

MP 213/321

食料作製Lv.4(EXP:196/800)食料作製時間7%減少

道具作製Lv.3(EXP:495/500) 道具作成時間5%減少

武器作製Lv.1(EXP:84/100)

素材作製Lv.2(EXP:18/300)

ゴーレム作製Lv.2(EXP:24/300)ゴーレム作製時間3%減少

薬品作製――

その他――


####


 ついにゴーレム作製のレベルが上がって新しいゴーレムが作れるようになった。


####

作製品目:ストーンゴーレム タイプS(小)(Lv.1)

カテゴリ:ゴーレム作製(Lv.2)

消費MP 115

説明:人型のストーンゴーレム。ある程度の命令を理解し働く。パワーは小さいが敏捷性に富む。手先が器用で細かい作業をさせることができる。

作製時間:49時間

####


 イワオとはまた違ったタイプのストーンゴーレムのようだ。

食料は塩漬け肉がまだ残っているし、道具も急いで作らなくてはならない物はない。

そこで引き続きゴーレム作製をすることにした。

作製レベルが2に上がったおかげで時間が3%も減少されるのは嬉しいな。

これまではイワオを作るのに48時間もかかっていたけど、3%短縮だから従来よりも1時間26分も短くなったわけだ。



 翌日も畑の作成に勤しんだ。

と言っても働くのはイワオたちだ。

数も増えたので作業効率もぐんと上がったぞ。

木や石を取り除いたスペースに森から腐葉土を運び込んだ。

これをイワオの手で鋤(す)き込んでいく。

作物はジャガイモを植える予定だ。

たしかジャガイモって丈夫で、育成も簡単だったような……。

小学3年生のときに学校の畑で作った気がするんだよね。

こんなことならもっとまじめに先生の話を聞いとけばよかったよ。

同級生の吉田君と泥団子を作って遊んでいた俺のバカ。

小さなお友達、みんなは俺のようになっちゃだめだぞ! 

先生の話はちゃんと聞くんだ。

いつ、異世界に流されるかわからないからねっ!



 さらに二日経って、新しいゴーレムが完成した。


ポーン♪

ストーンゴーレム タイプS 作製終了まで00:00:00

ストーンゴーレム タイプSが完成しました。出現場所を指定してください。


 きたきたぁ! 小型と書いてあったけど一応屋外で出現させることにしよう。


 現れたゴーレムはイワオたちよりさらに小さかった。

身長は140センチくらいしかない。

人型と書いてあったけどむしろ猿に似ている気がする。

動きも、猿山で見たニホンザルにそっくりだ。


「お前は敏捷なんだって? どれくらい動けるの?」


 そう聞くと、ゴーレムはピョンピョンと二回もバック宙返りを決めてくれた。

やっぱりおさるさんじゃないか。

石猿だねこれは。

ということで、こいつの名前はゴクウになった。

手先も器用みたいだからイワオにはできない細々とした作業を手伝ってくれることだろう。

明日からの仕事に期待大だ。

久しぶりにご飯が食べたくなったので、その夜はご飯をセットして眠りについた。


   ♢


 さらに半月が経過した。

俺の住環境はかなり改善されている。

特筆すべきは岩屋にきちんとした扉と窓がついたことだろう。

これはゴクウがよく働いてくれた。

アイツは予想以上に器用で大工仕事も難なくこなす。

おかげで岩屋の中も上手に改造することができた。

岩壁に木枠を張り、仕切りをつけたのだ。

これで4畳ほどの小部屋と残りの大部屋の二間になったぞ。

小部屋の方はクリス様との思い出のベッドがある場所だ。

つまり俺のプライベートルームになる。

そして大部屋の方はゲストを迎え入れるための部屋にした。

そうはいっても二段ベッドを二つとテーブルや椅子を置いたらいっぱい、いっぱいになってしまったけどね。

岩屋の壁には看板も掛けた。


「歓迎! モンテ・クリス島 シローの宿」


 これでいつセシリーが帰ってきても大丈夫だな。

もしかしたらクリス様が来るかもなんて考えることもあるけど、それはないだろうということもわかっている。

あの人の肩には東方守備隊1万人の命運がかかっているのだ。

それを放り出してモンテ・クリス島にくるような人ではない。


 ここまでは順調にきたけど、二週間前にびっくりするようなことが起こった。

イワオ1号が動かなくなってしまったのだ。

1号の胸の辺りが赤く点滅しているなと思っていたら1時間くらいで活動を停止してしまった。

調べてみたら何のことはない、単なるエネルギー切れだったんだけどね。

点滅していた部分に掌をあててMPを注入してやったら再び動き出した。

今思い出せば笑い話だけど、あの時は本当にびっくりした。

ゴーレムだって燃料は必要に決まっているよね。

MPは50ほど吸い取られた。

これからは定期的、かつ計画的にMPを補充しないといけないな。

ステータスパネルの検索で調べてみたら魔石という魔力の結晶でもゴーレムのMP補充はできるそうだ。

ただ、現時点ではどこで魔石を取っていいのかがわからない。

もしも、モンスターを倒して取得するのなら俺には無理だと思う。

スライムを倒しても魔石が出てくるのかな? 

いや、それも無理だ。

川にいるスライムはすっかり俺の生活の一部になっている。

水を浄化してくれるし、生活ゴミも片付けてくれる。

俺の老廃物で育っているから妙な親近感さえあるんだよ。

むこうも慣れてきたのか最近では近寄っても無警戒でいるようになった。

川で水浴びをしていると俺のそばで泳いでいるくらいなのだ。

というわけで、スライム狩りなんてとてもできないよ。

すぐに必要なわけではないから魔石のことは置いておくことにした。


 狩猟採集生活に農業が加わり、そろそろ牧畜をなんて思っていた矢先のことだった。

いつものように海辺で釣り糸を垂れていた俺は空に巨大な生物が飛んでいるのを発見したんだ。


「鳥……?」


 違った。それは3体の……プテラノドン?


 博物館で見た翼竜の模型によく似ている。

それが三匹の編隊を組んでこちらに向かって飛んでくるではないか。

まさか、餌を探しているわけじゃないよな? 

すぐに釣り竿を上げて茂みの中に飛び込んだ。

そばにいたゴクウも俺の後に続く。


「ゴクウ、イワオたちを完全武装で待機させといて」


 喋ることのできないゴクウは小さく一つ頷いて森の中へと入っていった。

あいつはサルのように木から木へと移動できるから、すぐに岩屋へたどり着けるだろう。

完全武装なんて恰好いいことを言ってはみたが、実情は棍棒を装備しただけのいつものイワオだ。

イワオたちの装備を充実させるよりも住環境を優先させてしまったからな。

今後はもう少し防衛費を上げないとダメかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る