第22話 擬態とは



四冥は井戸で顔を洗う。




朝日が目に眩しい。

さて、寝るか。

さっさと身支度を整えて床につく。



今夜見かけたあれ・・・

あれは『擬態』だ。



常世から顕現した『穢れ』が、人間を喰った後に生まれる物。


人間を喰いまくって暴れる奴も居るが、そうじゃない奴も居る。


穢れが、曖昧な自らの存在を保つために、喰った対象の情報を読み取って、そいつに化ける個体、それが擬態だ。


精巧に意識を複写するから、喰われた奴が、自分がまだ生きていると勘違いする事も多いが、あくまであれは喰った側の穢れである。


半数ぐらいは自分が人間であると勘違いして日に焼かれて消滅、半分ぐらいがそのまま日の光すら克服して人間として生きる。仮にそのまま交通事故に遭ったとすると奴らはちゃんと死ぬ。現世の存在になりきることが奴らの最大の欲求だからだ。



それ・・・つまり、『穢れ』な訳だが、何故、穢裁刀で斬らなかったか?




それも理由がある。

あれは穢れで間違いないが、そう思わない奴らが居る。あれを生きている人間だと信じるのだ。




まぁ、擬態は普通の人間と区別がつかないから、あれを『穢れ』と判断して討伐したら、はたから見ればただの人殺しになる。



名家だった六畳家の遠いご先祖は、いきすぎた穢れ討伐を咎められ、ついには人殺し認定されて、僻地の温泉街に左遷されたらしい・・・




太陽を克服して、時間が経過した擬態は、熟練の祓い屋でも気配を追う事が難しい。


この大都会、東京・・・


一体どれだけの擬態した穢れが潜んでいるのか誰にも分からない。





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