【深みにはまったアタシ…】

11月9日・くもり


アタシは、空いている時間を利用して名古屋へ行って、あいつと会っていた。


もちろん、身体だけの関係である。


ふたりが会う場所は、名古屋栄の繁華街にあるラブホである。


島津ゆたかさんが歌っていた歌で、なかにし礼先生の作詞・浜圭介先生の作曲の歌『ホテル』の歌の世界のような関係である。


せやけん、底なし沼に引きずられて抜け出せなくなった。


時は、深夜11時過ぎのことであった。


あいつは、アタシにまとまったカネがいると切り出した。


「まとまったカネがいるって?」

「ああ。」

「いくらいるのよ?」

「1000万…いや、500万でもいいからユウヅウしてほしいねん…」

「そなな大金を、何に使うのよ?」

「実は…近く上場予定のベンチャー企業の株式に投資する…そのためのおカネだよ…会社がもうかれば、百倍の配当がもらえるんだよ…なあ…頼むよ…この通り…」


アタシは、ものすごく迷った。


配当が百万倍になる…


もうけたらその分から返す…


あいつがそのように言うたけん、アタシは『どうにか工面するから…』とあいつに空返事した。


あいつにだまされていることに気がつかないアタシは、行動に出ようとした。

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