自炊

「お腹が減った」

「あ、うん」


 倉庫からのそりと戻ってきた木香に、ユキは開口一番そう言った。ポトリと落としたような素っ気ない言葉に、同じく素っ気ない返事が出てしまう。壁に掛けられた時計を見ると、二本の針は頂上を少し越えた所にあった。


「もう昼過ぎてたのか」

「うん」

「確かに腹減ったな。何か食おうぜ」

「あと、やっぱり利き手じゃなくてもなかったら不便だよ」

「今度作ってやるからちょっと我慢な」


 木香は冷蔵庫から小分けにして保存してあったユキの左腕の一部を取り出した。

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