第24話、支店が開店した
支店では、食事を中心に廉価版オセロや竹ペン、日用品などを扱うことにした。
もちろんスイーツや総菜も扱う。
店員と料理人を新たに雇い入れ、開店までは本店で研修してもらう。
開店当日は大変だった。
長蛇の列ができてしまい、俺も誘導に駆り出されたほどの賑わいだった。
「初めて、商売というものをやってみたが、面白いものだな。
仁殿、こんな機会をあたえてもらって感謝しますぞ」
「いえ、助かったのはこちらの方ですよ。
スターリン店長がいなかったら、こんな条件のいい場所なんて、抑えられなかったですよ」
「いやいや、それは偶然というものだよ。
おかげで孫のスカーレットまで職に就くことができた」
「えっ、スカーレットさんってお孫さんなんですか」
「城勤めや、貴族の相手は嫌だとわがままを言いおってな。
まあ、ここならわしの目も届くし、何より経営者が貴族だ。
こんな条件のいい勤め先は他にはないのだよ」
「ああ、確かに貴族の直営店なんてありませんよね」
「しかも、商売優先ではなく、民衆のことを考えた出店だ。
みろ、お客さんの嬉しそうな顔を」
「嬉しそうな顔……
あっ!」
「また、何か思いついたのか」
「ええ。きっと、みんな喜びますよ」
「萌、嬉しそうな顔で思い出したんだ。
大学芋とスイートポテトを作ろう!」
「いいですね」
「私、石焼き芋も食べたい!」
「芋でモンブランも作っちゃいましょうか」
これは、もう材料もあるので簡単だった。
大学芋はハチミツで仕上げてある。
「あー、幸せ……」
「なんで、お芋って幸せに感じるんでしょうね」
「知らねえよ。
けど、妹がそういう顔して食ってたんだ」
「妹ちゃんに感謝ですね」
4品ともメイドたちにも好評だった。
「これは、女の子の食べ物ですね」
本店ではモンブランで支店には焼き芋を投下した。
大学芋とスイートポテトの2品は共通だ。
さすがに、貴族相手に焼き芋はないだろうと……
ところが、いざ売り出してみると、貴族街のメイドたちが支店に買いに来るのだ。
うーむ、芋恐るべし……
後日、俺は王妃様から呼び出しを受けた。
使者の話では、どうも、先に持参しなかったのを怒っているらしい。
「どうする萌」
「そうですね。
芋といえば栗です。
ちゃんとした、モンブランを作ってお持ちしましょう」
「大学芋とスイートポテトはいいとして、焼き芋を持って行ってもいいものか……」
「持っていきましょう。
無いよりはあったほうがいいに決まってます」
こうして、俺たちは王妃様のもとに出向くのだった。
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