第22話、バーベキュー

「なあ、俺たち正式に婚約しないか」


「そうね、このままだと、縁談を断り切れないケースが出てくるかもしれないし……

ねえ、萌とも婚約してあげてよ」


「ああ、それは俺も考えてた」


こうして、俺は智代梨と同時に萌とも婚約した。

もちろん、萌のは偽装だ。


だが、考えが甘かった。

多少は減ったものの、第三夫人にと縁談の申し込みが絶えないのだ。

それでも女子への縁談話がなくなったのは行幸だ。


リバーシ大会が終わって、余裕が出てきた。


「なあ、一日店を休みにして、メイドさんたちとバーベキューでもやらないか」


「いいわね、それ面白そう」


「ああ、仁にしてはナイスアイデアだ」


「お肉は売るほどありますから、野菜ですね」


「焼きそばはできないけど、焼うどんならできるな」


「お好み焼きと……たこ焼きが食べたい」


「お前、屋台と間違えてるだろ」


「いや、メイド達が食べたことのないものって考えたら、たこ焼きはありだな」


「へいへい、タコをとってきやすよ。

あと、あおさだな」




「なあ恭介、これってメイドさんたちの慰労だろ」


「ああ」


「じゃあさ、……」




一週間後、近くの河原でバーベキュー大会となった。

なぜか、店の常連さんも混ざってる。


「えー、今日は日頃お世話になっている皆さんのために、このような催しを考えてみました。

みんなホントにありがとう。

最初に、恭介から贈り物があります」


「いや、アイデアは仁だよ。俺はいわれた通り作っただけだから」


そう言いながら、恭介は一人づつ髪飾りをつけていく。

スズランをあしらった金の髪飾りだ。

智代梨と萌とジャンヌの分もある。


キレイとか嬉しいとか、メイドさんの囁きが聞こえる。


「じゃあ、俺からのプレゼントだ。

今日のために仕込んでおいたリンゴのシードルだ。

これで乾杯しよう。

言っておくが、アルコール入ってるから、泥酔しいないようにな」


「「「カンパーイ!」」」


この日ばかりは、俺と恭介は裏方に徹する。


肉を焼き、野菜を焼き、たこ焼きをひっくり返す。


「仁にこんな特技があったなんて」


「惚れ直したか」


「10万年早いわよ」


「仁さん、愛人の座はあいてないんですか」


「おいおい、まだ結婚もしてねえよ」


「このシードルって、美味しいです」


「飲みすぎんなよ」


「これ、売り出せばヒットしますよ」


「これ以上、忙しくすんなよ」


こうして、楽しい一日が過ぎていった。

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