第20話、リバーシ

「おい、お前らどうしたんだ」


「な、何がだ……」


「べ、別に何も……」


「恭介君、それ以上は野暮ですよ」


「そ、そうか」


「二人は大人の階段を上ったんですから」


「「ブッ」」 「違う!」


「あら、違うんですか?」


「キスした……あっ……」


「あっ……」


「あらあら、可愛らしいこと」


「青春してるなぁ」


「「………………」」


「と、ところでさ、そろそろ、食堂とかもやってみないか」


「確かに、食材は確保できましたし、頃合いかもしれませんね」


「サトウダイコンの蒸留酒も、そろそろ馴染んできたころかな」


蒸留酒をワインの樽に入れて寝かせてあるのだ。


「食堂で出すだけなら、コメも使えるな」


「唐揚げ、生姜焼き、牛丼と親子丼くらいなら簡単ですよね」


「おつまみに、ポテチとバターピーナッツ作ろうぜ」


またまたメイドを増員して、食堂をオープンした。

宣伝もしてないのに、初日から行列ができてしまったほどだ。


お酒目当ての人も増えてくるが、どちらかといえば貴族のご隠居さんたちだ。

単価が高いだけあって客層はいい。

泥酔したとしても、屋敷に連絡すればすぐに迎えが来る。


少し経った頃、お客さんからチョイス(チェスみたいなゲーム)を置かせてくれないかと要望があった。

お酒を飲みながら楽しみたいらしい。

もちろん、了解したが、即座にひらめいた。

リバーシを投入するチャンスじゃん!


「恭介、大至急リバーシを作ってくれ」


「どうしたんだ急に」


「チョイスを持ち込みでやりたいってお客さんがいるんだ」


「とりあえずリバーシで遊んでみてくれってか……ナイスアイデアだ!」



俺は、急ごしらえのリバーシをさっきのお客さんのテーブルに持っていく。


「もし、よろしければ、こちらのゲームを試してみませんか」


「これは?」


「私どもが考えたリバーシというゲームです。

ルールが簡単なので、大人でも楽しめますが、お孫さんとも遊べますよ」


「なに、孫とも遊べるのか」


簡単にルールを説明して始めてもらう。


「うっ」 「そうくるか……」 「くそう……」


あっという間にハマってくれた。

そればかりか、周りに人が集まってくる。


「ああ、そんな所に置いたら」 「あそこに置けば勝ちだったのに」


野次馬は無責任である。


「じゃあ、お前がやってみろ」


「いいですよ、勝ち方を教えてあげましょう」


「まだ。ありますから。どうぞ使ってください」


「おい、これは、買って帰れるのか」


「明後日から販売いたします」


職人総動員で、リバーシの量産に入った。

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