養鶏場でちんぽ出すな!!!!

 星屑のようなブロイラーの群れを見て、むぴぴ、僕のちんぽはもう……むぴぴ。

「こいつら、一体いくらをはたけば譲ってくれると言うのかいな

 養鶏場のオーナーに直接打診すると、返ってきた言葉は一つだけ。

「うちの飼料はじゃなくて、インディアナの勃起するような輸入トウモロコシさ」

 五日後、オーナーは数キロ離れた屠畜場で遺体となって発見された。オーナーのアナルには、特大のトウモロコシが刺さっていたのである。

 オーナーのちんぽは、ロンギヌスの槍のように尖っていた。僕は歴史を変えたのだ。



 意志を持った鶏。意志鶏。僕の名前はイシドリさ。世界で唯一の意思鶏。

 養鶏場で、思わず勃起をしちゃったよ。僕の仲間があんなに惨たらしい姿で戯れているのだから。コケコツ笑、コケコツ笑。

 僕は人間への復讐のためだったら、牛すき焼きだって豚すき焼きだってなんだって食うのだよ。もちろん生卵は抜きで。

 生きるとは悲しいことでごわすな。コケコツ、コケコツ。



「イシドリ君。今月もまた君がトップの成績だ」

 課長が差し向かいの僕に、嬉々としてそう語った。オフィスのフリースペースで上がった声音は周囲にも波及し、次々と称賛の衆目を集めていく。

「君は間違いなく我が社のエースだ」

「ありがとうございます。この調子で粉骨砕身頑張ります!」

 僕らの種族は、粉骨砕身には慣れている。こいつらが打ち上げの席で食らう軟骨だって唐揚げだって、粉骨砕身された僕たちなのだ。

 課長との話し合いが終わると、僕はすぐさま社有車を走らせた。

 目的地は博多。車の足で成田空港まで行き、そこからは空の旅をする.....ということになっている。

 実際は車を最寄りのデパートの駐車場にでも停めて、そこから己の羽で空路を行く。僕は地の桎梏に縛られた人間などという種族とは違うのだ。

 わざわざ博多まで出向きすることと言えば、ごく一般的な営業活動に他ならない。

 僕の仕事は、テキ屋向けに自社の冷凍牛串を売り込むこと。

 遠地の博多を選んだのはワケがある。

 まず、屋台が多い。そして、肉の消費率で言えば鶏肉が圧倒的に多く、牛肉は消費量が少ない。僕はこれをブルーオーシャンと見ている。

 そして何より、。その量を鳥一匹分でも減らせるのなら、僕は快く博多の人間の腹を牛肉で虫垂炎にするだろう。

 これが僕の復讐だ。人間は牛頭の悪魔に震えるがいい。



「そんな勃起寸前の安価で譲ってくれるというのかい?」

 長らく焼き鳥屋台を続けてきた店主が、今にも牛串屋に転身しそうな勢いだ。これが僕の営業技巧テクニクーだ。

「ええ、ええ。一見様には、極限まで安く仕入れていただくのが私たちのモットーですから。ただ、見積の額面としてはもう少し高価ハイな値段とさせていただきます」

 見積の額面から少しだけ値下げをして請求書を出す。この差額には、宙ぶらりんになっている行き帰りの交通費を当てる。飛行機要らずの僕だからこそできる技巧テクニクーだ。

 ともかく、こうして僕は焼き鳥屋を懐柔し、牛串屋に変えることができた。

 ざまあみろだ。ちんぽに、茨の時計だ。



 養鶏場でちんぽを出す。ギンギンに勃起したペニスギャング。それは僕のことだ。



 僕が人生においてロールプレイングゲームめいたことをしているとして、そのラスボスは一体何か。

 それはオルゴデミーラだ。オルゴデミーラこそがラスボス。要するに人生において僕は誰でもない。人生において人生そのものはロールプレイングできない。テレビゲームでもしなきゃ、ロールプレイングなんていう贅沢な娯楽は味わえないってことさ。

 人生は戦いではないし、はっきりと終わるものでもない。僕のやっていることは、もっとこう、グラデーション的なことだ。真っ赤なちんちんに、極上のおかゆだ。



 痺れを切らした電気うなぎに、ピストルをズドンだ。安心してよ、僕は君を食べたりはしない。君の体をこれ以上一切傷つけることなく、海水の中でゆっくりと腐食していく君を眺めているとするよ。僕は君を徒らに殺したりはしなかった。徒らに死んでいく君を見たくて、僕は君を殺したのだから。パイナップル食べて身体が溶ける。

 ね、だから安心してよ。



「イシドリ君、今日もまた君はgreatだね」

 オフィスはバラバラに分解された。一つ一つのセクションは、いっぱいフルーツの実った果樹園の中だ。半信半疑のたこ焼きオブザーバーだ。

 ほーら、ゆーっくり入ってごらん。君が今まで見ていたものは、全て幻だったと知るんだ。人間の姿なんて、高麗人参の見間違いだったってすぐに気づくんだ。

 散開するA4紙。あれは、発注書? 五千億枚だ。ちょうど五千億枚の花吹雪。数えちゃいないけど、ルール化できればこっちのもんだ。

 オペラの一つ一つの音が、今ではフルーツの実一つ一つの震えだ。ハプニング木こりアンクルだ。

「ほーい、こっちにコピー機をよこせてくれ」

 あるセクションから別のセクションは呼ぶ声。背中に生えた翼で僕は届ける。今やセクションとセクションは無数のメソポタミアに阻まれ、互いに渡し舟無くしては意思の疎通もできなくなった。見るからに複合機を抱えたセクションが有利に仕事をしているらしい。

 ペーパーレスの時代だってのに。あーあ、精子を撒き散らしちゃお。重要書類をしまった袖机に、水道管みたいな精子を撒き散らしちゃお。ぴーくぴくぴくぴくぴく。

 ヒンジが曲がってるよ? そのちんぽ。もう見せる価値もないから。どっか行ってよ。



 おっと、またしても夢想が飛び散った。僕は養鶏場でいつもこんなことを考えているのさ。生まれてから死ぬまでの間、ずーっとね。どうせ大した時間じゃないし、別に良いだろ?

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