第285話 現代が舞台の小説で描きづらいこと
今回は現代ファンタジーの難しいところの話。
まず、魔法みたいなものを登場させると、これに法的な管理を用意しないといけない。免許とか。
次に、魔法が存在する領域を決めて、民生利用が進んでいるかも設定する必要がある。ありそうなのが医療現場、建設現場、製造業、でしょうか。ここで使われる魔法は基本的に非殺傷性のそれにしないといけない。
それから、よくあるバトルシーンを描くとなると、戦闘が職業として成立しないといけない。ここもやはり免許制であり、都合の良い敵を、まず用意する。モンスターみたいなもので、これは駆除するものです、として、魔法を使った駆除業者、となる。
ただ、魔法使い同士を戦わせるとなると、それは途端に非合法になってしまう。正当防衛があるのだろうけど、グレーゾーンとするしかない。ここで負傷することが避けられない以上、闇医者は自然発生する。
最大の問題は、魔法で戦う立場の人間が都市部などにウヨウヨいると、抗争に発展した時、人死が出る。人死が出たら、警察などが徹底的に捜査するはずだけど、この捜査の結果がどうなるにせよ、魔法使いという存在に一般人が友好的になる理由が消える。
そもそもからして、戦闘を前提とした魔法使いは、警察などからの依頼による凶悪犯の追跡や捕縛を行う賞金稼ぎの仕事などをした場合、そこで治れば良いが、何らかの後続のトラブルにより、攻撃を受ける可能性がある。これは脅すとかではなく、本気の殺意で向かってくると思われる。まさか大人しく殺されるわけに行かないので、撃破する。撃破するが、手加減できるわけもなく、襲撃者はおそらく死ぬ。相手を殺す魔法使いは極めて危険なので、おそらく管理する側からペナルティ、もしくは免許の剥奪が起こる。
ただし、難しいのは、強力な魔法使いが犯罪者になると、相応に強力な魔法使いをぶつけるしかなく、両者の力が高いレベルで拮抗すると、生きるか死ぬかのどちらかにならざるを得ない。こういうのをいちいち警察などが捜査し、場合によっては起訴して略式でも裁判に通すのは、ものすごい手間だ。ついでに、人が死んでいる以上、なんらかの救済か、特権がなければ、魔法使いが大量殺人鬼と変わらなくなってしまう。
つまり現代が舞台のファンタジーで、本気で殺し合いをやらせてしまうと、その世界の治安とか、刑罰とか、抜け道とか何から何までが複雑になる。
人を殺すことは創作の中でも現代を舞台にすると極端に難しいのは、現代社会が、最も人が死にづらい構造が整備されているのだろうなぁ。
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