追放された腹いせに奴隷を買って調教した結果
ビートルズキン
悲劇
第1話 追放
「ルブ、あなたはこのパーティには必要ない、クビよ」
「そ、そんなどうして」
「あなた、回復だけしかできなくて戦闘もできないじゃない」
「そりゃ、回復術士(ヒーラー)なんだからしょうがないだろ」
「そもそも私、女の後ろに隠れて回復だけするような臆病者なあんたのこと、前から嫌いだったのよね。理由ならいくらでも述べられるけど時間の無駄よ。もう代わり雇っちゃったし」
「代わりって」
「戦闘しながら回復できる男前で筋肉ムキムキなイケメン前衛神官戦士よ」
「そんな逸材いるわけ」
「そんなこと、あんたに関係ないわ。部外者はさっさと出て言ってちょうだい。あぁそれと」
「まだ何かあるのか」
「このパーティの持っている有力な情報を少しでも漏らしたらただじゃおかないから。わかったらさっさと出ていきなさい」
「………………今までお世話になりました。どうかお元気で」
僕は、唇をかみしめ一方的な解雇宣言を受け入れる。
クソ。
スタイル抜群で魔法学校を首席で卒業した名家のお嬢様くらいでいい気になりやがってあの女。
僕のことを軟弱だと決めつけて、回復しかできない?専門職にそれをいったら身もふたもないじゃないか。
自分だって最大レベルまで成長しているくせに、炎魔法しか使えないじゃないか。
クソクソクソ、クソが!
僕は舌打ちをして嘆息する。
それからの僕は、貯金を切り崩して食べ歩きしながら、適当なパーティに所属して日銭を稼ぐ毎日。
だが、僕が追放されたという評判は全ギルド中に知れ渡り、新人パーティをたらいまわしにされた挙句、ひどいときには、報酬を払ってもらえずにぼこぼこにされて帰った日々もあった。
だから仕方なく、回復と冒険の記録をするモブとして日銭を稼いでいる。
冒険しているからヒロインの一人や二人、出てきてもおかしくはないんだって?
じゃあ聞くが、初対面の美女に回復だけするだけの「臆病者」のレッテルを張られた僕がどうしろっていうんだい?
身長、普通。
目つきが悪いので見た目、中の下。
特技、回復。
はぁ。
結婚紹介所に行って「高収入なのを前面に押し出しましょう」や「性格がとってもよろしいのではないでしょうか」とかフォローされるのが目に見えている。
この剣と魔法の世界で生まれて十六年。
「こんなはずじゃなかったんだけどな」
そう思う僕に空が共感してくれているのか、雨が降る。
「ハハッこの悲しみを回復できたらいいのに……」
そんな僕の声は誰にも届かない。
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