第63話 幸運な元奴隷の少年イヴァン

大きな世界に置いて、対立する帝国に住む者達

支配者達のそれぞれの思惑に 人々の想い 貧富の差に富める者 貧しき者

時に奴隷とされ 悲運に泣く者達の悲劇は 何処の時代、世界に数限りない

飢餓に苦しむ者達も‥


異国の者、一人の学者に言葉を通訳して話す一人の少年がいた

ターバンに似たフェズ帽 またはトルコ帽を大事そうに被り直す

「はい そうですね お探しの本はこちらになります」

「そうか、ありがとう 翻訳の方は?」「はい、お任せください」

ふと、学者は何かが気になり少年に話しかけた。


「君は元は浚われて人買いに売られた?それともイエニッチエリだったかい?」


「はい、旦那様 船で移動中に海賊に捕まり、売られました 

幸い、僕を買ってくれたのが今の養父でとても優しい人です

元はヴェネチア共和国に住んでました 元の名はマルコで今はイヴァンです」


「養父は素晴らしい人です

僕が偶然死んだ息子に似てたそうで、僕の希望を叶えてくれましたよ

僕の大事な友達や神父さまを海賊から買い戻して、ヴェネチアに返してくれました」

「下手すると僕は下働きかガレー船の漕ぎ手 鉱山か農園で働かされていたかも」

彼、少年イヴァンが微笑む 


「微妙なアクセントも気になって、やはりそうか・・」

「すでに養子となり改宗しました もうヴェネチアに戻る事もないでしょう 

会いたい人はいますが‥」寂しそうな笑みを浮かべたイヴァン


「ハムが時々食べたいですねイスラムではハラール作法の料理で豚は食べませんから 僕の友達、イエニッチエリの護衛兵ですが ハムは食べた事がないそうです」

続けて話すイヴァン

「随分と幼い頃に東欧から徴兵されて家族はキリスト教徒だったらしいですが

自分の本当の名前も忘れたそうです」イヴァン



異国の商人達 

当時、通商の為に必ずしも友好国とはいえなくても 

貴重で、どうしても手に入らない香辛料に砂糖などが欲しくて

敵国ともなりえる国々からやって来る


あるいは途切れて失われた知識、東ローマ帝国が保有していた知識などを求め

学者たちなども訪れる 焚書として消え去った知識



※イヴァンの短編があります 「幸運な星の名のもとに」随分、古い作品でした


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