1月13日 夏八木蒼の日記

 酔っぱらった連中がこんな時間まで騒いでいる。今、2時だ。夜中の。居酒屋でバイトしてる人たちは大変だろう。

 こんなときだから、他に仕事なくて仕方なく飲食で働いている40代のフリーターとかしかいないのかもしれないけど。

 作家デビューできても、いや、しても、専業で食っていける時代じゃないという。本音はペン一本でやっていきたいけれども、そう簡単じゃないのはわかっている。どのみち会社に就職はしないと。さすがにフリーターはやだ。

 11時頃、白井さんから呼び出しを食う。メールを無視してたら、電話が来た。それも何度も。なんかごにょごにょい言ってたけど、結局、お金を貸してほしいらしかった。

 ホントはお金の貸し借りはしないと決めてるし、ましてや人間関係にヒビのはいってほしくない白井さんにはいやだった。千秋もいるグループのなかで変な騒ぎは起こしたくない。

 それでも貸すことにしたのは、白井さんにはだいぶおごってもらってることや、クレイトン・ロースンの「帽子から飛び出した死」とかキャサリン・エアードの「そして死の鐘が鳴る」とかを貸してもらったこと、なにより額が一万円と低く、それがなければ、この寒いときに電気を止められるという悲劇が待っていることを知ってしまったからだ。

 ぐだぐだと交渉を続けられて原稿を書く時間を削られるよりは、ぱっと貸してしまったほうが賢い。最悪、一万円くらいはあげたと思えばいい。日雇いのバイト一日分だ。たぶん、白井さんは返してくれるし。

 学食についたらのんきにカツカレーなんか食べてるからイラッとしたけど、もうお金の問題は解決したという。無駄足踏ませやがってとキレそうになったけど、お昼を好きなものおごってくれるというから怒るに怒れなかった。天そば御膳を頼んでやった。うまかったね。あげものなんか自分でできないから。

 なにか資格でも取るんで勉強してると勘違いしているらしい。確かにプロの作家ですと名乗れる資格試験みたいなもんだ、公募なんて。賞取れなくても話題になればこっちのもんだ。なんかひっかからないもんか。

 途中でまた緑川さんが来て、無理くり手品を見せられた。なりゆきでスマホを貸したけど、手つきが危なっかしくて壊すんじゃないかと思った。やっぱ二人、両想いなのかな。

 帰ってからは書きまくり、今日は8000字達成。

 いいぞ、このペース。そして、月末には千秋に。

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