第4話 不便な世界

 ラナイアとアルグスは、二人で休んでいた。

 今は、二人とも喧嘩していた時のことは忘れて、世間話をしている。


「それにしても、こっちの世界は大変だよな。便利な物は何もないし、色々と疲れるぜ」

「まだ、そんなことを言っているの?」


 そこで、アルグスはそのようなことを言ってきた。

 それは、ラナイアもこちらの世界に生まれてから、ずっと思って来ていたことだ。

 だが、ラナイアは既にそのようなことは気にしていない。こちらの世界も、住めば都であると思っているのだ。

 それなのに、アルグスはまだそのようなことを言っている。そんなアルグスに、ラナイアは呆れるのだった。


「まだ言っているって、事実なんだから、仕方ないだろう?」

「そんなことを言っても、仕方ないでしょう。もうあっちの世界には戻れないんだから、こっちの世界に慣れるしかないのよ」

「それは、そうなんだが……」


 ラナイアの言葉に、アルグスは怯んだ。

 色々と言っているが、アルグスも理解しているのだろう。そんなことは、考えるだけ無駄なのだと。

 それなら、そんなことは言わないでいいのではないか。ラナイアは、少なくともそのように考えているのだ。


「それに、こっちの世界にはあっちの世界にはないものがあるでしょう?」

「魔法か?」

「ええ、魔法よ。こっちの世界では、そういう力があるし、それも結構便利じゃない」


 そこで、ラナイアはそのことを指摘した。

 こちらの世界には、魔法と呼ばれる不思議な力がある。その力があることで、こちらの世界は色々と便利なものがあるのだ。

 そのため、こちらの世界もそこまで不便という訳ではない。それで、満足できないアルグスは贅沢なのではないか。ラナイアはそう思うのだった。


「でも、俺は科学の方が便利に思えるぜ」

「それなら、あなたがこっちの世界で科学を発展させればいいじゃない」

「そ、そんなこと、俺ができると思うのかよ?」

「それなら、何も文句は言わないでもらいたいわね」

「別に、文句を言うくらいはいいだろう」

「よくないわ。鬱陶しいもの」

「なんだと?」


 だんだんと、二人の会話は激しくなってきていた。

 二人は、小さな火種がつくと、一気に燃え上がるタイプだ。

 そのため、些細なことでもすぐに喧嘩に発展してしまう。


「大体、あなたはいつも文句ばかり、それを聞かされる私の身にもなってもらいたいわね」

「うるさい! 文句を言って何が悪い! 俺は事実を言っているだけだ!」

「仮に事実だとしても、あなたはいつも周りのせいにして、自分では何もしないじゃない。そういう態度が、私は気に入らないのよ」

「なんだと!」


 二人は、お互いにまた罵倒し始めた。無益な争いが、またも発生してしまったのだ。

 こうして、二人はまた喧嘩を始めるのだった。

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