第2話 いつもの喧嘩
ラナイアとアルグスは、この世界に来る前から幼馴染である。
かつて、日本と呼ばれた国で、隣同士の家に生まれて、小さな頃からずっと一緒だったのだ。
こちらの世界でも隣に生まれるとは、ラナイアもアルグスも思っていなかった。昔から腐れ縁だと思っていたが、こちらの世界まで腐れ縁。それが、二人がお互いに抱いている印象なのである。
「大体、あなたは昔から本当に身勝手なのよ。小さい時も、小学校の時も、中学校の時も、高校の時も……大学の時も! 社会人の時も! 老後も!」
「そんな昔のことを言うな!」
「昔って、ほんの数年前の話じゃない!」
「数年って、十数年前じゃない!」
「それは昔だ!」
二人の喧嘩は、昔から子供の喧嘩だ。
お互いにくだらないことを言い合い、ずっと平行線。それが、二人の関係なのである。
「というか、昔のことだからなんだと言うの? 今も昔も変わっていないのだから、別にいいじゃない」
「何?」
「そうやって、話をそらして、適当な言い訳をする所も変わっていないわ。それは、あなたの悪癖よ。死んでも治らなかったようね?」
「……そうやって、人の嫌味をねちねち言う所は変わっていないな。それは、お前の悪癖だぞ。死んでも治らなかったな?」
「なんですって!」
「なんだよ!」
二人は声を荒げて、言い争った。
だが、この議論は特に意味があるものではない。
なぜなら、二人とも自分の主張を曲げるつもりはないし、相手の主張を認めるつもりはないからである。
という訳で、二人に残るのは疲労感だけだ。相手を罵倒し、相手に罵倒される。それは精神的に中々厳しいものなのだ。
「はあ、はあ……やめましょう」
「あ、ああ……そうだな」
二人の喧嘩は、いつもお互いが疲労し過ぎて終わる。
その不毛な喧嘩は尾を引かない。お互いにお互いの主張がどこかおかしいものはわかっているし、気にしても無駄だと思っているからである。
それに、そのような言い合いを、二人は何度も何度も続けてきた。二人の関係性は、今更この程度の言い合いで崩れるような関係性ではないのである。
「私達、いつもこんな感じね……」
「ああ、そうだな……」
二人は、お互いに背中を合わせて座った。
このように喧嘩した後、二人でゆっくり休みのも、二人のいつもの流れである。
いつも喧嘩ばかりだが、決して離れることがない。二人のその関係は、心の奥底でお互いに思い合っているから、成り立っているものなのである。
こんな騒々しい毎日を、二人は前世から続けていた。それは今世でも、まったく変わっていないのだ。
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