第34話 光の先に……
眩しい光に目を閉じる……フッと身体が浮いた。
「えっ!」
慌てて目を開けると、そこは真っ暗な洞窟みたいな所だった。
「ここは……落ちたの? それとも、飛ばされた? 私だけ……?」
光魔法で灯りを作り、周りの様子を窺う。洞窟の壁に何か書かれていた。
「日本語だ!」
そこには、浮かび上がるように、日本語が書かれていた。
「これは、先輩の迷い人が書いたのね」
『ここに封じているのは、悲しみの余り、怒りに支配された魔人。国中を破壊し、滅ぼそうとした。余りにも強すぎて討伐することが出来なかったので、ここに封印する
力の無い者は近寄らないでくれ、魔法陣で魔人の魔力を吸収し、ダンジョンに放出している。魔人を倒すことが出来る者が現れるまで、結界と魔法陣で封印する。封印に、綻びが出ないことを祈る』
えっ? だから、ここのダンジョンの魔物は強いのね。領主さんは、知ってるのかな? う~ん、最初の言葉が引っかかる……
『悲しみの余り、怒りに支配された魔人』
何だろう、悪い魔人ではないのね……いつ封印したんだろう……止めておこう、触らぬ神に祟りなしだよね。嫌な予感しかない……
どこから、戻ればいいのかな? 動いてもいいよね? こんな時に、頼れるジークがいないなんて……
『ニャー!』
えっ? 振り返ると、真っ黒い猫が座っていた……イヤイヤ、怪しすぎるんだけど……可愛いです! 私が猫好きって、知ってるんでしょ? 猫アレルギーだから、触れないけど……きゃ~、可愛いよ! 黒猫ちゃん!
黒猫は、ゆっくり近寄って私の足元に座り、頭を擦り付けてきた。
「きゃ~! 可愛すぎる! あぁ、蕁麻疹でちゃうよ……ぐふっ、可愛い~、動けない……」
『ニャ~』
可愛い鳴き声で、呼ばれた気がする……黒猫は洞窟を歩いて行き、振り返って私を見る。
『ニャ~!』
「えっ? 私を呼んでるの? そっち出口だったら嬉しいけど……」
黒猫は少し進んで、また私を振り返る。
『ニャ~?』
「あぁ~、付いて来いってことね?」
そのまま、黒猫に付いて洞窟の奥に進んだ。段々道が細くなってる気がする……騙されたかな?
暫く歩いて行くと、あぁ、来てしまった……封印の間かな? 黒猫ちゃんめ! 出口に連れて行ってくれると思ったのに……
床には魔法陣のような文字が描かれていて、そこから光の柱が立ち上がっている。光の柱の中にクリスタルがあり、クリスタルと魔法陣の光で、キラキラしていている。とても綺麗、見とれてしまう……
光の柱の中央に、クリスタルに囲まれた、俯いた真っ黒い魔人? がいる。髪も服も黒い……人に見えるけど……私に、気付いてる様子……
「人間か……一人で、私を滅ぼしに来たのか?」
穏やかな声……恐怖は感じない。
「いえ、違います。ダンジョンの部屋に入ったら、飛ばされて……黒猫に付いてきたら、ここに来たんです」
顔を上げて、私の方を見る。長い光沢のある黒髪に、真っ赤な瞳、少し色黒で、なんと表現すればいいのか分からないほど美形……イケメンじゃなくて美形です! うわ~、はい、人間じゃないです。綺麗すぎる。
「魔法陣で転移してきたのだな。フフ、その黒猫は、私のこぼれた魔力から生まれた眷属」
ん? 普通の猫じゃないの? じゃぁ、触っても蕁麻疹でない?
「私は、偶然ここに来たんです。貴方を倒すつもりはないです」
「そうか……久しぶりに誰かと話をしたな……来た道を戻って、真っ直ぐ進めば、戻りの魔法陣があるはずだ。そこから、出られる」
えっ! 何も聞いてないのに、出口を教えてくれる……優しい人じゃない。なんで、今も封印されているの?
「あの~、気に障ったら申し訳ないのですが……魔人さん、いつから封印されているんですか?」
魔人さんが、不思議そうに私を見る。
「そうだな……そろそろ1,000年になるだろうか……」
「えっ! 1,000年……」
1,000年! 独りきりって酷いよね~。早く倒すか、解放してあげればいいのに……生殺しだ……うぁ、同情してしまう。
「そんなに長く……一人で? まだ……誰かを憎んだりしてます?」
「もう、誰も生きてはいないだろう……」
魔人さんは、穏やかに、何かを思い出すように話す。
あぁ、この人は……この魔人さんには心がある。
「もし、私が貴方を解放することが出来たら、封印を解くことが出来たら……罪のない人を傷つけることなく、穏やかに過ごしてくれますか?」
魔人さんは、びっくりした顔で見つめてきた。
「お前は、私を解放すると言うのか?」
「まだ、出来るかは分からないんですけどね、試してみたいと思って。1,000年も1人なんて、十分に罰を受けたと思うんですよ」
「私に同情したと言うのか?」
「はい、同情しました。今の穏やかな魔人さんは、もう解放されてもいいと思うんです。だから、もう国を滅ぼさないと、約束してくれませんか?」
「約束? もし、破ったら?」
「魔人さんが、約束を破ったら……私が、また封印します。出来るか分かりませんけどね」
私の鑑定さんに、お願いすれば教えてくれるはず! 鑑定さんは、何でも知っているからね。もしかして、鑑定さんって……あの時ぶつかったコアかも知れない……私が、壊して能力を貰った? 融合した? 共存している? ん~、ややこしいから、今は考えるの止めておこう。
魔人さんは、優しく微笑む。
「フフ、面白い。約束しよう。あぁ、お前と契約してやろう」
魔人さん、そんな優しく微笑むんだ……
「ちょっと時間が、かかると思いますけど、待ってて下さいね。私、魔法は好きなんですけど、上手くはないんですよね」
光の柱に両手を触れる。
鑑定さん! お願い! この封印を解きたいの。この魔人さんを解放したい、どうすればいいかな?
【今のミーチェでは、この封印を解くことは出来ない。知力は足りているが、魔力が足りない。それでも、封印を解きたいならば、体内の魔素を使い、魔力の補充をすれば解くことが出来る。ただし、時間が掛かる】
おぉ! 鑑定さんから返事が来た。出来そうね。魔力を込め続ければいいのかな。鑑定さん、ありがとね。
両手に魔力を集める。だんだん、嫌な汗が出てきた……
どれぐらい経っただろうか……何かが割れる音がした。
パリンッ・・・・・・光の柱が消える。
その音が聞こえると、立っていられず、座り込んでしまった。
「ふぅ~、出来たかな? 魔人さん、どうですか? 動けますか?」
封印解けたかな……はぁ~、すっごく疲れたぁ~。このまま横になりたいぃ……お腹も空いたぁ……
「ああ。封印が解けたようだ……」
「良かった。これで自由ですね。世界を滅ぼさないで下さいよ? ふふ」
へたり込んでしまった私に、魔人さんが近づいて来た。
「約束しよう。罪のない者の命を取らないと。そして、契約しよう、お前と。どうしても助けが欲しい時、私を呼ぶといい」
「えっ? 契約?」
魔人さんを見上げると、優しく微笑んでいた。
「ああ。お前の頑張りに報いて、気が向いたら助けてやろう」
「ふふ。気が向いたらなんですね」
言い方が可愛くて、つい微笑む。可愛いと言ったら怒られそうね。
「ああ。私の名は、そうだな……ルシーと呼んでもらおう。お前の名は?」
「私は、ミーチェと呼ばれています」
魔人さん、本当の名前じゃないのね。
「私の名前は、人前では呼べぬからな。呼ぶのは、私と2人の時か召喚したい時だけだ」
「分かりました。貴方の名前は秘密なんですね」
魔人さんは、私を抱き上げ名前を呼んだ。
『ミーチェ、お前と契約する。私はルシーだ』
そして、私にそっと口付けをした……。えっ!? 息が止まる……口付けされた唇が、一瞬熱くなる。
「ミーチェ、お前は懐かしい匂いがするな……血に連なる者か……迷い人なのだな」
魔人さんは、優しく見つめて言う。そうか……と、そんな綺麗な顔で……ぐぅ、キス……された、契約するなら仕方ないの? うぅ、顔近すぎますよ……え? 今、なんと?
「ええっ? 匂いで迷い人って分かるんですか?」
フフ、秘密だ。そう言って、ルシーはクスクス笑う。私が匂うのかと思い、浄化魔法をかけようとしたけど出来ない。魔力が無いのかな……使い切った?
「ミーチェ、今は魔法を使えないぞ。子どもになったからな」
「えええっ!!」
今なんて、言いました? 子どもになっていると? あぁ、そう言えば、鑑定さんが体内の魔素を使ってと、言ってたような……マズイ……
子どもだから目線がおかしいのね……マズイ……
えっ! 服がダボダボです……マズイわ!
慌てて、ステータスを見る。
名前 ミーチェ
年齢 10歳
HP/MP 108/ 10(80)
攻撃力 67
防御力 63
速度 90
知力 155
幸運 96
スキル
・鑑定S ・料理A ・生活魔法 ・空間魔法S
・火魔法A ・土魔法A ・風魔法A ・水魔法A
・光魔法S ・闇魔法A ・無属性魔法S
・雷魔法A ・氷魔法A ・聖属性魔法S
・短剣D ・回復魔法A ・時空間魔法S
な、何! このステータス……10歳! MPの10(80)って何? MPは80ですが、使っちゃって10しかないってこと? それとも、後MP10使うと9歳になるってこと? 16歳だったのが10歳って、6歳分の魔素を魔力にしたってこと?
うわぁ……頑張って集めた魔素だったのに……う~ん、また集めなおしたら、元に戻るかな? 困った、ステータスの10歳は隠せるけど、見た目が子どもは隠せない……どうしよう、魔力ないと帰れないんじゃないの?
「あ、あの魔人さん……」
「ルシーと呼んでくれ」
「はい、あのルシー……魔法使えないと帰れないですよね?」
「そうだな。魔法陣は、魔力を使って起動するからな」
勝手に起動して動いた、あの部屋の魔法陣は、壊れてるんじゃないの? 戻ったら、あの部屋を土魔法で埋めておこう……ああ、今、魔法使えないんだった……うぅ。
「ルシー、お願いがあるんです」
「うん? 早速か?」
「はい、ここへ飛ばされる前の部屋に、パーティーメンバーが残されているんです。そこに戻りたいんです」
「もう、居ないかもしれないぞ?」
「それなら、それで良いんです。でも、きっと心配してるから、そこに連れて行って欲しいんです」
ジーク、心配してると思う。それに、この状態を相談できるのはジークだけだし……
MP無くなってしまって10歳って、どうしよう……
見た目も10歳らしいし……
ジーク、どうしよう……服と下着がダボダボです……
※ ※ ※
??:「呼ばれた……。起こさないで、ここ気持ちいいのに……」
??:「ありがとう?……うん」
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