アラフォー主婦の異世界転移~この年でありえない…

Rapu

第1章 出会い

第1話 迷い人

 昨年、東京・大阪に突然いわゆるダンジョンが出現した。それは日本だけではなく世界中に出現し、メディアでは連日そのニュースが報道されていた。

 その後、大都市を中心に突然ダンジョンが出現するようになり、安全を考慮してダンジョンは国が管理・調査することになった。発見次第、最寄りの公的機関に報告するように通達される。



※  ※  ※ 



 アラフォー主婦の美智代は、いつも通り夫を送り出す。息子は、この春から独立した。そして、息子が持って行かなくなったお弁当とショルダーバッグを持って、いつも通り仕事に向かう。


 バスに揺られながら、息子が独立したので、そろそろ彼女のいる夫と話をしようかと考えていた。


 駅前でバスから降りようとした時、突然、足元に大きな黒い影が広がった……


「えっ!? 何?」


 美智代は、突如現れた黒い穴に落ちていく……


「うゎっ!」


 逃れようと、何かを掴もうともがくが、両手は宙を舞う。

 背中に何かが当たり、その衝撃で意識を失う……

 身体は、そのまま暗い闇に落ちていった……


 ……水の流れる音が聞こえてくる。


 目が覚めると、頭の横にショルダーバッグと、お弁当が入ってあった手提げ袋が置いてある。周りを見ると、山間の、川のほとりのような所に横たわっている……


 ……え? 何で?


  慌てて起きようとするが、身体が軋むように痛い……そして、そばに小さな焚火が見える。


 その横に誰か座っている……


 銀髪でアメジストの瞳、西洋人風の顔立ちで20代後半かな? 冒険者風で、凄く綺麗なイケメンさん……ドキッ! とした。おばちゃんには……いえ、お姉さんには眩しいです。


「気が付いた?」

「はい。あの、助けて頂いたようで……」

「びっくりしたよ。黒い渦潮から落ちてきたから、生まれてきたような? そんな感じだった。どこか痛い所ない?」


 そう言っている顔が、あまりにも整っていてこれは夢でも見ているんじゃないかと、考えてしまう……


「えっ! そうなんですか……あ、大丈夫です。私、東山美智代・ミチヨと言います。助けていただいてありがとうございます」


 痛いのを我慢し起き上がって頭を下げた。痛みが夢ではなく、現実だと教えてくれる……


「ミチヨね。僕はジーク、堅苦しいのは苦手だから普通に喋ってほしいな。それで、君はどこから来たの?」


 ジークさんは微笑んで、お水を入れてくれた。


「えっ、どこからって……」


 人懐っこい感じのジークさんに、朝から起こったことを話した。


 自分は主婦で家族がいること、仕事に向かう途中で突然できた穴に落ちたこと、ここが何処かわからないことなど……話していると段々痛みが和らいできた。


「あぁ。君は、迷い人なんだね」


 ジークさんはそう言うと、ここが何処なのか話し始めた。


 ここは、大きな大陸の東の王国で、階級制度があり、冒険者もいれば魔物もいるそうです。私のような迷い人は数十年に一人保護されていて、希望すれば、どこの国でも手厚く保護してくれるそうです。


 そう、手厚く保護してくれるよ……と、2回言った。ジークさん、それは……軟禁状態? 囲われるのね……


「っ! ジ、ジークさん! ここは別の世界?」

「さんは、付けないでジークって呼んで。それから、ここはミチヨが住んでいた世界ではないね。話からすると、君は別の世界から来た迷い人なんだと思うよ」

「はい、ジーク……そうですか。迷い人……あっ、国に保護は求めないです。隔離されるのはイヤなので」


 頭の中が混乱している……何を、考えればいいのか。真っ白になるって、こういうことなのかしら……ただ、軟禁状態は怖いので、国に保護は求めないとハッキリ伝えた。


「王国に保護は求めないんだね。わかった。ミ、チヨが迷い人ってことは秘密にしておくね。ん~、ミチヨって、言いにくいから、愛称つけて呼んでもいいかな?」


 ジークさんは、人懐っこい笑みを浮かべて言った。イケメンさんの笑顔は眼福です……


「うん? いいですよ。確かに、こっちの人には発音しにくいかも。ジークさんが、あっジークが呼びやすいように付けて下さい」

「ミー、ミチ、ミーヨ、ミーチ、ミーチェ……うん。ミーチェって呼ぶね。いいかな?」


 あまり可愛い名前は年齢的にキツイけど……元の名前より長くなるのはどうしてかな……


「いいですよ」


 まぁいっか~、異世界らしいし、気にしないで微笑んでおこう。取りあえず、言葉が通じて良かった。私、英語は話せないしね。


 そろそろ、お昼だそうで、持っていたお弁当をジークと半分こにした。足りないので、簡単スープと干し肉をご馳走になります。味は……少なめにお願いしていてよかった。


 ジークは、目をキラキラにしてお弁当を食べていました。そうですか、美味しいですか~、お口に合って良かったです。お姉さん、そのキラキラの目を見られてうれしいですよ。


 食べながらジークに、こちらの話をいろいろ聞いた。まずジークのこと、北の帝国の出身でCランクの冒険者。以前はPT組んでいたけど、今はソロで活動している。鑑定スキルを持っていて、私のステータスを見たらおかしいそうです。


 おかしいって……もしかしてチートってやつかな?


 冒険者とかスキルとか、いわゆるファンタジーの世界みたい。日本もダンジョンとか出来ておかしくなっているし、私のこれって異世界転移ってやつかしら?


 この年でありえない……、本当に……


 夫も息子もいるのに……


 アラフォーだよ! 歳は言いたくないけど……


 うわぁ、どうしよう……これから、どうすればいいの……ダンジョン探して、落ちたら帰れるかしら?


 ジーク曰く、過去の迷い人が元の世界に帰った、という話は聞いたことがないらしい。きっと、人知れず生きた、迷い人もいるんだろうなぁと思う。私みたいに山の中に転移して、どうしようもなかった人や……


 私はジークに助けてもらえて幸運だったよね。と、いろいろ考えていたら、また、ジークが言う。


「ねえ、ミーチェ。自分のステータス見てごらん。おかしいから」

「おかしいって……ジークどうやって見るの?」

「ステータス・オープンって言ってみて。小声でいいよ」

「ステータス・オープン」


 ひやぁ~、小声でも、言うのが恥ずかしい……羞恥心で顔が赤くなるのがわかるよ。


「何で、赤くなるの?」 


 ジークが頭を傾げて聞くから、恥ずかしいからだと言うと、クスクス笑っている。なぜ笑うの? イケメンだから許してあげるけど……


 名前  ミーチェ(東山美智代)

 年齢   0歳

 HP/MP   5/ 5   

 攻撃力   1

 防御力   5 

 速度    1   

 知力   50 

 幸運   94

 スキル

  ・鑑定B ・料理A ・生活魔法


「ステータス画面出た?」

「えええ! なんで0歳? しかも名前ミーチェになっているし……」

「ね、おかしいでしょ?」


うん、おかしいですね……

これって、チートじゃなくて逆チート……ってあるの?




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