第46話 切断のフルコース
俺はない指を恨めしく思いながら、ヴァレリーの胴に貫通魔法を放つ。腕で突き刺す刺突だ。
ヴァレリーが、今度は俺の伸ばした腕を切断するつもりで剣をハサミみたいに構える。
「っち」
俺は
「それを待ってたんだ」
俺はドラゴンの炎をマントを前に持ってきて全身で突っ切り、ドラゴンの首に足をかけてまたがる。
ついでに鞍をつけて乗車しております、正式な飼い主の竜騎士を蹴り落としとく。
「ドラゴンを乗り回すのは久しぶりだな」
このドラゴンも、もちろん俺の獲物にする。拝借して、ヴァレリーにドラゴンごと突っ込む。
「この卑怯者が」
「ドラゴンごと斬れよ」
ヴァレリーは当然、俺を殺すためなら、やむを得ずドラゴンを斬る。だってこいつはママじゃないもんな。ヴァレリーは母親以外のドラゴンには愛着がない。竜騎士って残酷だな。
「よっと」
ドラゴンだけ斬らせて、すぐに飛び降りる。ドラゴンは囮に決まっている。ヴァレリーは一瞬、俺の乗り捨てたドラゴンに俺がいないことに動揺する。
「残念だな。再会ってのはすぐに別れに変わるんだなぁ、これが」
俺はお疲れの意味で、ヴァレリーの背中を手のひらで切断魔法をまとって、とんと叩く。
「ぬがあああああああ!」
鎧ごと背中の背骨を縦に切断してやった。おお、背骨ってムカデみたいな形になってるんだな。神経とか色々なものが詰まっててやばそうだ。
あらわになった、白い骨を親指の腹でなぞってみる。こいつの骨、固くてカルシウムたっぷりだな。
「赤双竜の騎士様!」
「第一騎士団たちの嘆きが聞こえるなぁヴァレリー。俺にも一つ、悲鳴をご馳走してもらおうか」
まずは、俺と同じ両手の指を四本ずつ、親指以外だ。俺は親指で切断魔法をまとう。
俺の切断された指の仇を取るならば、親指で行うしかないだろう。
「ドラゴンのママに祈っとけよ。俺に楽に
まず、はじめに右手のグローブを外してもらいます。左手も同様に。
「な、何をはじめるのだキーレ!」
「お前が俺のこと勇者キーレ様って呼びたくなるようなこと。何だ? まさか怯えてるのか?」
エリク王子様じゃあるまいし、泣き出したりしないだろうな。それとも背中が痛くて立てないからか? 座り込んでどうした。
「今からお前は、俺のために全身全霊で叫んでもらうんだよ」
右手の人差し指はニンジンみたいにあっさり切り落とせた。
「ぶっあああああああああああああ」
「次、中指な」
右手の中指は、長くてゴボウにも見えるな。これは料理のやり甲斐があるが、俺は一番深い根本の第三関節を狙う。
「ぎいいいいいあああああああああ」
「まだまだこれからだって」
俺は喉を鳴らすように笑った。ヴァレリーが汗だくなので兜も取ってやる。
少しでも熱くならなくて済むように。
俺は優しいな。親指と手のひらだけで、ものつかむのも一苦労なのに、涼しくしてやったんだ。
「こ、こんなことをして……何になる?」
「何? 他人の不幸は蜜の味って知ってるか?」
「っは? い……、意味が分からない」
「これだから異世界ファントア人は。お前の悲鳴は俺の幸福に変わるってことだよ」
「ぎゃばああああああああ」
薬指も綺麗に切り落とせたな。俺には料理の腕があるみたいだ。そして、小指。おっと、第二関節で切ったか。間違った。
「っふ、がああああああああああ」
もう一度、第三関節な。
「ぎいいいいいいいいいいい」
俺は汗を拭って、ヴァレリーの右手がきれいに俺と同じ状態になったのを目視して、今頃立ち向かってきた第一騎士団の雑魚の団体様の、腹を次々串刺しにする。
「貫通魔法」
ない指で奴らの胴に力づくで腕を突き刺す。
鎧を貫通し、内臓が手のひらに感じ取れる。
あはっ、思わず笑みがこぼれるな。レバーの感触だぁ。そして背骨を通って服、また鎧と突き抜ける。
「俺、指がないからこいつのレバー、引き抜けなかったじゃん」
ヴァレリーに向かって不平をもらす。
ま、雑魚はこれぐらいにしてメイン料理の再開と行こうか。ヴァレリーに向きなおって、左手の指の切断に早速取り掛かる。まな板があればな。
こいつ、すぐ手を後ろに隠そうとするから。
逃げ惑うヴァレリーの左手を腕を使って抱え込む。それを見て、また雑魚騎士団が喚く。
「き、騎士団長様にこれ以上は!」
頭に来るので命令してやる。
「だったら土下座しな」
おっと、部下ってのは辛いね。本気にしてやがるな。勇者様の前で土下座か。なかなか、良い。おっと、俺はヴァレリー処刑に忙しいんだった。
左手の指を順に落とすころになると、ヴァレリーは唾とよだれを垂らしながら叫ぶ。
「た、頼む。何でもくれてやる!」
「何でも? お前からは、悲鳴しかいらないな」
「ぬうがああああ!! マ、ママアアアアアア」
「とうとう出たなマザコン野郎。それそれ、それ待ってたんだ」
赤子同然に、ひいひい泣いてるな。お、いつの間にかヴァレリー、本当の姿の十四歳に戻ってるじゃん。
頬は赤らみ、目には涙を溜め込んで、背中でぜいぜいと息をしながら、俺の後ろで瀕死のママドラゴン、ドレッドバーンレを懇願の眼差しで見やる。
「マ、ママァ」
とても、いい泣きっ面だな。
「残念だな。お前の母親もあの拷問じゃ、もうすぐあの世行きだ。でも、俺は優しいから、お前とあのドラゴン。今夜、一緒に
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