第6話 お別れ

「父上、母上!!」

「おおっ! 桃太郎!!」


 次の日の朝、桃太郎一行は、町で購入したお土産の品々を荷車に乗せ帰ってきた。荷車は、問屋の息子である大男が引いている。


「桃太郎や、心配してたのじゃ。その様子じゃと、鬼をみごと退治したんじゃのう」

「はい! ここにいる仲間とともに」


 桃太郎は側に居た、犬、猿、雉に目配せした。老夫婦は目を見張った。だが、優しい笑みを浮かべた。


「そうかえ、そうかえ。はて、そちらの体格の良い男も仲間かえ?」


 問屋の息子である大男は体を強ばらせた。すると、桃太郎は優しく笑って答えた。


「はい!」


大男は目に涙を浮かべた。「これからは精進します」と丁寧に礼を言うと、胸を張って帰っていた。

 若き神はタイミングを見計らって、桃太郎に声をかけた。


『桃太郎よ。鬼退治をよくやりとげましたね。感謝しています』


 いや、ほんとに。一時はどうなるかと思った。


「もったいないお言葉です。これからも、人の心に巣くう鬼が現れれば、退治していきます」

『良き心構え。それを聞いて安心しました。私の役目もここで終わりです』


 桃太郎をはじめ、老夫婦、犬、猿、雉は、どこか涙を滲ませていた。若き神も少し感慨深かった。くそ上司(偉い先輩神様)の台本に付き合ってくれた、良い仲間である。別れが惜しい。

 

『それでは、皆さん、お元気で……』


 若き神は別れの言葉を告げた。すると、若き神の体が浮遊感に包まれる。気付いたら、天界へと帰還していた。

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