② 胸走りブランデーに心焼けをり
最近、味も分かりもしないのにブランデーにはまっている。
ブランデーは、近所のスーパーやコンビニで買えるようであまり買えない。
日本ではそこまで人気がないのか、製造が大変なのか、少なくともウイスキーよりは店頭で売られる種類は多くない。
値段も安くはなく、最低でもウイスキーの瓶と同程度かそれよりも高い価格で売られている。
なので、特にこだわりがないのであれば、ブランデーを探しにわざわざ品揃えの良いお店にまで買いに出かけるということも普通はしないのであろう。
そんなブランデーを飲み始めたきっかけは、ある古い映画の青年が、一人ブランデーを飲んでいる姿が格好良かったから。これだけである。
その映画はミステリーで、青年は殺人事件の犯人だった。
青年は、犯行について怪しまれないように、平静を保ちながらゆっくりとお酒を飲んでいた。
その姿が、なんとなく気に入ってしまった。
それからというもの、いつもその青年の姿に近づきたいと思いながら、ブランデーを飲んでいる。
私のブランデーの飲み方は、ストレートか水割りかお湯割りと決めている。
他の候補はソーダ割りとロックがあるが、この二つはあまり好みではない。
また、ブランデーは度数が40度程度と、高い部類に入る。
そのため、ビールやカクテルのように一度にたくさんの量を飲むには適さない。
ブランデー特有の甘い芳醇な香りと、どろりとした口当たりを楽しみながら、ゆっくりと飲むと、体の中が焼けるような熱さになる。
この感覚がたまらない。
私は寒い日に一人、ブランデーに体を焼かれながら、同じく一人でブランデーを飲んでいたあの映画の青年に想いを馳せて、ひっそりと胸を焦がしている。
犯行を終えた後にブランデーを飲む気分はどうだろうか。なんでも良いから強い酒で酔いたかっただけなのだろうか。
考えても答えはでない。
そんな味はおろか何もかも分からない自分でも分かることはひとつだけ。
それは、ブランデーは寒さを凌ぐのに向いているということだけである。
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