大学時代からの友達から聞いた話。

 大学時代から仲良くしてもらっているMちゃんという子がいる。

 彼女とはあまり怖い話をしていなかったが、今回のこの企画にて改めて聞いてみたところ、次のような話を聞けた。

 

 Mちゃんが中学生ぐらいの頃、お母様と一緒に夜道を歩いていたときのことだという。

 かなり遅い時間の帰宅だったので足早に道を進んでいると、前からベビーカーを押した女が歩いてきた。

 セミロングぐらいの髪の女性で、だが俯いてあるいているらしく顔は全く見えなかった。

 (うわぁ、怖いなぁ……)

 異様な雰囲気にそう思ったものの、自宅へと向かう道は今歩いているこの道しかない。

 さっさと通り過ぎてしまおう、と気にしないフリをしながら彼女達はベビーカーを押した女へと近付いた。

 そして何事もなく擦れ違った瞬間、

 「ぎゃぁぁぁ!!」

 と女がもの凄い音量で叫び出した。

 一目散にMちゃんは走り出した。お母様も同じだ。

 二人は振り返らず、自宅までの道を走り抜けたという。

 自宅とベビーカーの女に擦れ違った場所は近い。

 昼とかにも居たら嫌だなぁと思いながら、その日は興奮冷めやらぬまま就寝した。

 

 だがあの日以来、Mちゃんもお母様も女の姿は夜も昼も一度も見かけていない。

 時間的にバスや電車などの公共交通機関はもう終了していた。近くに公園などの車で来るような場所もない。

 あの時間のあの場所に居たのだとしたら、自宅付近に住んでいる人なはずだというのに。

 

 もしかしたらベビーカーの女は、子育てなどで精神的に疲れてしまっていただけなのかもしれない。

 時が経ち、彼女の心身の快復したこと願うが、もしそうでないのなら、夜に出遭いたくないものである。

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