第51話 トイズ到着

「おお!着いたー!」


シンフォニア王国から出発して半月ほど。


観光などをしつつも、魔法で少しズルをしてとうとう俺達は、レフィーア姉様が嫁いだダルテシア王国へと辿り着いた。


にしても、魔法でズルをしても半月以上かかったというのは、やはり遠い。


観光や熊狩りなど、色々としてはいても普通よりも何倍も早く辿り着いたはずなのに半月は消費している。


家族やオアシスの水が恋しくなるのはホームシックというやつだろうか?


まあ、帰ろうと思えば今すぐ転移で帰れるけどね。


でも一度帰るのは、レフィーア姉様に会ってからと決めてるのでそれはしない。


赤ちゃんを連れ出すのもあれだし、父様達をレフィーア姉様の元に送るので最初に使うくらいかな?


あとは、こっちで色々と観光やらして転移で故郷に戻るという予定になりそうだ。


まあ、観光がどの程度掛かるかは未定だが。


「わぁ、人が多いですね」


街を見てアイリスがそんな感想を漏らす。


ちなみに、現在地は王都からほど近い位置にあるルドルフ伯爵領の首都、トイズだ。


これまでは、大きめの街はあまり通らなかったが、王都に行くにはここか、もう一つ別の領地を通らないとダメなので、今回はこちらを選んでみた。


場所的には、ダルテシア王国に着いたが、レフィーア姉様が住んでいるのは王都なのでもう少しだけ旅は続く。


とはいえ、そんなに遠くはないけど。


この街を抜ければ一日ほどの距離で着くらしい。


「それで、エル様。今日はここの領主様とお会いするんですよね?」

「まあ、そうなるね」


先触れとして騎士さんを向かわせてはいるが、俺が大きな街をあまり経由しなかった理由の一つとして、領地の首都に行くと、必ず他国の貴族に会わないと行けないというのが理由としてあったりする。


向こうにもメンツというものがあるし、何より王子の訪問というのは本来そこそこ大変なことなのだそうだ。


まあ、中には気に入られて娘を俺に嫁がせて他国の王家との繋がりを強めようとする人も居るのだろうが……ルドルフ伯爵は、毎度父様達がダルテシア王国に行く時にお世話になってる人なのでその辺は信頼できる。


「あ、エル様!あれ美味しそうです」

「ん?ああ、確かに。後で食べようか」


しかし……首都ともなると中々に色々と気になる店が多いな。


他の国の貴族の領地に行っても面倒だけど、首都とか街は気になるし、今度はお忍びで行くことにしよう。


まあ、レフィーア姉様の件が終われば、しばらくは俺が表向き旅行する目的もないし、のんびり出来るだろう。


「にしても……ここでもトールは目立つな」


外に視線を向けると、街のお嬢様方がトールを見て黄色い声を上げている。


相変わらずどこに行ってもモテるが本人はそれらの声は華麗にスルーして護衛に注力していた。


羨ましいヤツめ。


まあ、でも街の人達の反応を見て少し安心する。


この国も基本的には亜人への差別はないらしいが、一部の貴族は亜人への偏見があるらしく、場所によってはトールとアイリスには耳を隠して貰うかもしれないが……ルドルフ伯爵は幸いなことにそちらではないらしいので、大丈夫だろう。


ウチの国のデルゾーニ伯爵曰く、祖母とも面識があり非常に良心的な貴族さんらしい。


俺としては、アイリスやトールの耳は好きなのでそのままにしておきたいが、全くもって人間とは面倒くさいものだ。


「エル様?」

「うん?ああ、ごめんごめん。ついね」


気がつくと俺はアイリスの頭を撫でていた。


なんか、撫でてると心が和むんだよね。


癒しグッズとしてアイリスを売り出せば人気になるね。


まあ、そんなことは絶対しないけど。


トールだったら面白半分で売りかねないけど……何だかんだて上手いこと抜け出して戻ってきそうなのは俺の考えすぎかな?


無論、俺の騎士にそんな真似はしない……と、思う。


お米とか醤油とトールの引き換えなら悩んでしまうが……ギリギリトールを選ぶだろう。


チラッとこちらを見てトールと視線が合う。


少しだけおかしな事を考えていたので誤魔化すように親指を立ててサムズアップすると、トールは察したのか呆れたような視線を向けてきた。


なんだか、日に日に奴と心が通ってきてる気がする。


イケメンと意思疎通がスムーズだと、そちらの趣味の方に玩具にされかねないが、俺もトールもノーマルなのは確かだ。


その証拠に俺はアイリスに癒されてるしね。


というか……もう少し可愛い女の子と心を通わせたいものだが……まあ、アイリスという可愛い子が居るしそこまで必死にはならないかな。


そのアイリスは俺に撫でられて気持ちよさそうにしている。


なんというか、本当にこの子は見てると楽しい。


チャームポイントのうさ耳は本日も俺に撫でられて嬉しそうにピクピクしている。


うさ耳美少女というのは、本当に凄いものだ……もふもふと美少女を合体させただけではく、融合して押し上げている。


水信者の俺がこうまで魅了されるのは、やはり特殊な力でも働いてるように思えてならない。


そんなことを思いながら、俺はアイリスを愛でるのであった。


うん、可愛い。















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