エロゲの世界でスローライフ ~一緒に異世界転移してきたヤリサーの大学生たちに追放されたので、辺境で無敵になって真のヒロインたちとヨロシクやります~
第5話 ブラックドラゴン討伐しました。強さに気づいたみたいです。
第5話 ブラックドラゴン討伐しました。強さに気づいたみたいです。
あれから5日。
俺は猫耳族の里……っていうか、エリスの家に身を寄せていた。
ちなみに実はエリスは良いところのお嬢さんで、里の族長の娘だった。
なので、俺はご厚意に甘えて離れの一室を使わせてもらっているという形になるわけだ。
エリスを助けたのは事実だし、それで色々と厚遇してもらってるわけだがいつまでもそれじゃあ不味い。
どうやら俺には回復スキルがあるっぽいからそれを活用しようと思ったんだが、怪我人なんかはそうそう出るわけもない。
つまりこの里で俺の出番は今のところないことになる。
ってことで、何かできることはないかと農作業のお手伝い等もさせてもらっている形だ。
あ、あと、ベビーシッターみたいな形で、子供たちを10人くらい族長の家に集めて面倒も見てるんだ。
日本の保育園みたいな感じで、親が仕事で忙しくて面倒を見切れない子供たちを預かるって言う仕事だな。
もちろん、獣人の子供はめちゃくちゃ可愛い。
そもそも子供ってだけで可愛いのに、そこに被せてネコミミなんだもん。
夕暮れ時。
子供たちをそれぞれの家に送り届ける仕事を終えた俺は、母屋のリビングで食事をとっていた。
「サトルさんは本当に子どもに好かれますよね」
ニコニコ笑顔のエリスに向けて、俺は大きく頷いた。
「ああ、みんな懐いてくれてるみたいで嬉しいよ。しかし本当に良いのか?」
「良いとおっしゃいますと?」
「女だけの家に俺みたいな男を入れちゃってさ」
「え? 何か問題あるんですか?」
「若い男を家に入れるって、普通に考えてヤバくないか? 俺が突然エリスを襲ったりとかは考えないの?」
「え? サトルさんは私に乱暴でもするつもりなんですか?」
「いや、そんなことはないけどさ」
「ふふふ。そうですよね。子供に好かれるような優しい人が酷いことなんてするわけありませんよ」
屈託のない笑顔で言われてしまった。
ったく、調子狂うよな。
何て言うか、猫耳族は短絡的というか人を疑うことを知らないというか。
この辺りは種族の特性でもあるから仕方ないんだけどな。
まあ、お人よしだからこそ、亜人は辺境の地に追いやられがちなんだけど。
「それに、私は……その……」
「ん? どうした?」
「猫耳族の村はブラックドラゴンの度重なる襲撃で男の人がほとんどいないんですよ」
「ブラックドラゴン? ああ、そういえばそんな話もしてたな」
「だから……その……」
「ん?」
エリスは顔を真っ赤にして、俺の顔をマジマジと見つめてきた。
「だから、私はサトルさんにちょっと……いや……かなり……きょ、きょ、興味……」
「ん? 興味?」
そう尋ねると、エリスは爆発しそうなほどに頬を紅潮させた。
そして、顔を赤くさせたままテンパった感じでこう言ったんだ。
「い、いや……何でもありましぇん!」
噛んじゃった。
けど、やっぱりこの子は良く分からんな。
初日は別にそうでもなかったんだけどさ。なんか最近は俺と話す時は、顔を真っ赤にすることが異常に多くなってるし。
そういえば一度、風呂上りでボクサーブリーフ一丁の俺の裸体を見られたことがあったな。
思えば、あの頃から様子が変な気がする。
いや、まさかとは思うよ?
でも、ひょっとしてこれがエロゲ世界のクオリティって奴なのか?
だとすると、いくらなんでもチョロすぎる。
「ところでエリス? ヌリヒトってどういう意味だ? 子供たちが俺にそう言ってくるんだが」
そう尋ねると、エリスはバツが悪そうな顔をした。
「……親しみやすいって意味ですよ」
「親しみやすい?」
と、聞き返したところで、族長であるエリスの祖母がリビングに入ってきた。
「サトル。ヌリヒトというのは、腰抜け野郎という意味じゃよ」
「腰抜け野郎?」
「男は森に狩りに出るものじゃ。しかし、お主は狩りの技術もなく、魔物を退ける力もない。故に子供たちがお前を馬鹿にするのも無理がなかろう」
と、族長が言ったところで、エリスは顔を真っ赤にした。
「サトルさんは高位の回復術を扱えます! 狩りだってやったことがないっていうだけです! いくらおばあさまでも言って良いことと悪いことがあると思います!」
「そんなことは分かっておるよ。サトルも人間の世界では、回復術師として尊敬されるような職なのじゃろうよ」
そうして族長は俺にペコリと頭を下げてきた。
「すまんのサトルよ。子供たちの無礼は許してやって欲しい。しかし、ここは猫耳族の村でな、どうにも我らは人間とは価値観が違うのじゃ」
ふーむ。
この言い方だと、悪気も悪意もないんだろうけど、族長も心のどこかでは俺を馬鹿にしてる感じなんだろうな。
まあ、前の人生から人に馬鹿にされてるのは慣れてるから良いけどさ。
「しかもじゃなサトルよ。今、この村の男はブラックドラゴンの襲撃でほとんど息絶えておるのじゃ」
「そういう話ですね。討伐隊が返り討ちにあったのだとか」
「せいぜいが畑を荒らして家畜を食うくらいじゃし、ワシは逆鱗には触れるなと言うたのじゃがのう。ともかく、男たちが勇敢に戦って死んだということもあるわけじゃ」
「……なるほど」
「里の女衆は大人じゃから口には出さぬ。が、みな農作業や子供の面倒をみるだけのお主をヌリヒトだと思うておるよ。狩りも含めて男の仕事は敵と戦うものという文化じゃからな。そこについては申し訳ないが理解してほしいのじゃ」
まあ、文化には色んな形はあるからな。
そんなことを思っていると、族長は詰問するような――あるいは釘を刺すような口調でピシャリと言い放った。
「分かっておるなエリス? 人間は人間、猫耳は猫耳じゃ。いくら高位の回復術師として……猫耳は勇敢な戦士しか評価をせんのじゃぞ」
ああ、なるほどね。
どうにもエリスが俺に興味を持っちゃってるみたいだからって、釘を刺しにきたって感じか。
「でも……おばあ様! 私は……私は……っ!」
「サトルは子供に好かれる善人じゃし、ワシもこの男は憎くは思うておらぬ。じゃが大事な孫娘の相手ということなら、この老骨も心配にもなろうというものじゃ」
「……」
と、エリスが押し黙ったその時――
「族長! ブラックドラゴンです! ブラックドラゴンが出ました!」
女性がドアを蹴破らんばかり入ってきた。
そしてその言葉を聞いてエリスと族長は目の色を変えたのだ。
「じゃから、ワシは逆鱗に触れるなと言うたのじゃ!」
血相を変えた族長を先陣にして、俺とエリスも外に出て行ったのだった。
☆★☆★☆★
「おばあ様! ブラックドラゴンは今回で里を根絶やしにするつもりです!」
エリスの叫び声のとおり、里は大惨事の状況だった。
あちこちで火の手が上がっているし、建物も破壊されている。
避難が迅速なのか、幸い怪我人や死者がいなさそうだ。
けど、このままじゃそれも時間の問題だろう。
俺の眼前100メートルほどのところにブラックドラゴン――黒い巨体が浮かんでいるんだが、見ているだけで寒気が走るようなバケモンだ。
その姿は圧巻という言葉以外では形容できない。広げた翼の端から端で15メートルくらいはありそうだ。
対する猫耳族の抵抗要員は50名程度か?
しかも元々からして戦闘要員かどうかすら怪しい。
その証拠に弓の扱いもおぼつかない女の人達と、そしてお年寄りたちときたもんだ。
「打て、打て、打つのじゃ! まずはワシから……食らえ! ファイアーボール!」
杖を掲げた族長の魔法攻撃を皮切りに、矢が放たれる。
そして、エリスも力の限りの大声と共にこう叫んだ。
「風の刃よ――敵を斬り裂け! ウインドエッジ!」
魔法と矢が飛んでいく。
着弾の瞬間、ブラックドラゴンはこちらの肺の奥まで響くような重低音で唸り声をあげた。
「ガウガアアアアアアアアっ!」
いかん。
全く効いている様子もないしこれは怒らせただけか?
反撃とばかりにブラックドラゴンは猛烈な勢いで炎を吐きだしはじめた。
「おばあ様……不味いですよっ!」
「打て! 打て! 打つのじゃ!」
「しかし長老! こちらの攻撃は……龍鱗に弾かれてしまいます!」
「それでも打つのじゃ! 勇猛果敢こそが猫耳族の誉れぞっ!」
ああ、こりゃダメだな。
直情的で脳筋なのは獣人系の良いところでもある。
だけど、今回は体育会系のダメなところがモロに出てるパターンだぞ。
この場合は撤退しか道はねえだろうに……。そんなことはハナから選択肢にないらしい。
「エリス! このままじゃ全滅は必至だ! 全員今すぐこの場から撤退させろっ!」
俺の言葉に族長がクワっと怒りの表情を作った。
「何を言うておる! 勇猛果敢こそが猫耳族の誉れじゃ!」
「そんなこと言っても勝ち目はありませんって!」
「人間が何を言うておる! 猫耳族には猫耳族の流儀があるのじゃ!」
ああ、くそっ!
指揮官がこれじゃどうしようもねえな。
あー、もう参ったな……。どうすりゃ良いんだよ。
そうだ! 困ったときの老師頼みってことで聞いてみよう!
老師! 太公望のスキルで何とかできないのか!? 仙気掌以外になんかスキルはねーのかよ!?
――回答:太公望のスキルは回復及び近接専用です。宙に浮かぶブラックドラゴン相手には不適切です。
使えねえなっ!
あー、どうすりゃ良いんだよ!
――回答:エリスからラーニングした下級攻撃魔法:ウインドエッジの使用を推奨します
え? 何で俺はエリスの魔法もラーニングしてんだよ!?
まあ、それは良しとして、さっきエリスがそれやってダメだっただろ?
――回答:下級攻撃魔法:ウインドエッジの使用を強く推奨します
くっそ……! 老師ってのは本当に使えねえスキルだな!
しかし、俺の持つ遠距離攻撃手段がソレしかないなら仕方がない。
こうなったらダメで元々だとばかりに、俺はスっと掌をブラックドラゴンに向けて掲げてみた。
「サトルさん? 何をするつもりなんですか?」
「俺も一緒に戦うんだよっ!」
と、そこで族長が俺に顔を向けてきた。
そして、諦めたような表情でこう言葉を投げかけてきたのだ。
「助力の気持ちはありがたい。が……ハッキリ言うが戦う力を持たぬ者は足手まといなのじゃ!」
「こっちだってこの里には世話になってるんです! そんな簡単に逃げるほど俺は薄情じゃありませんよっ!」
そうして、俺はあらん限りの大声でこう叫んだんだ。
「ウインドエッジ!」
その言葉と共に周囲に暴風が吹き荒れた。
「きゃあああああっ!」
「何じゃこれはあああああああ!」
「目を開けてられないいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃっ!」
確かに物凄い風だ。
だけど、目を開けていられないほどか?
埃やら何やらが舞っていて、物凄い勢いで無数の小さいゴミが目に入ってくるけど、全然俺は目を開けてられるし。
って……ん? ちょっと待てよ?
なんでこんなに埃やらなんやらが目に入ってきてるのに、俺は普通に目を開くことができているんだ?
でも、事実として俺は目を開いているし……。
それに、よくよく見れば周囲のみんなは暴風に吹き飛ばされないようにどこかにしがみついている。
あるいは、その場でかがんで飛ばされないようにしている感じだ。
が、俺はその場で悠然と普通に立っているわけだ。
そもそも、さっきのエリスのウインドエッジの時にこんな暴風は吹き荒れていなかったし。
――何かがおかしい
そういう風に思った時、前方からドシーーーーーーーーーィンと大袈裟にすぎる落下音が聞こえてきた。
土煙が巻き上がり、一面の視界が奪われる。
が、ほどなくして暴風がそれを拡散し、土煙も晴れることになった。
すると、そこには首が切断されたブラックドラゴンが向こうに落ちていたのだ
「え? 何だ……これ?」
まさかとは思う。
けれど、この場合はそうとしか説明がつかないよな。
――俺がやったのか?
何が何やら分からない。
呆然とする俺は族長とエリスに顔を向けてみた。
すると、そこでは族長とエリスがその場で腰を抜かしていた。
更に言えば、ご丁寧なことに口をパクパクパクと開閉させていたのだ。
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