神話と教会
しばし考えて、ロイスは尋ねた。
「教会についてか……そうだな……。魔族には神っているのか」
「うーん。
なるほど。とロイスは頷く。
人間の歴史は神話とともにあり。
人間の歴史は魔族との争いの歴史。
すなわち魔族との争いの歴史は神話の歴史。
神とはどちらからきたものなのかとロイスは疑問に思っていたが、どうやら人間側から生まれたものなのだな。と神を信じないロイスは思った。
こんなことを言えば、神を信じる者達に、
「神……古代神話の始まりは人間が生まれる前といわれている。実際人間が生まれる前のことなんてのは、魔族の方が詳しいだろう」
「そうね。と言ってもそんなにちゃんとした歴史が残っているわけじゃないけど……。いつ人間が生まれたのか。とか、そういうのはよくわかってないの。いつのまにか人間が生まれていて、いつのまにか行き来できるように成っていて、そしていつのまにか……敵対してたっていう……」
「まあその辺は人間の歴史でも
「じゃあ魔界と人間界じゃなくて、魔界と神界とか、そういう感じだったってこと?」
「まあ、簡単に言えばそういうことかもな」
人間が生まれる前から魔族がいたという事実は神話には描かれていない。
だから魔界と神界なんて比較される間からであったかは不明だ。
そして、描かれていないならば存在していなかったとして、教会は魔界の存在を認識してても、許容していない。
そこにあることは疑いの
「その神たちを
「複数の神、みんな?」
「そうだな、基本的には。例えば
「慈愛?」
不思議そうにカレンが首を傾げた。
「誰に対して?」
「誰に対しても。だ。もちろん。魔族や魔物も含まれる」
「え。でも、さっき、教会の教えっていうのが広まっていないから、魔術師は嫌われてない。的なこと言ってなかった? つまり教会の教えでは、魔族も魔術師も嫌われてるんでしょ?」
「そうだな」
「即答かい」
「事実だからな」
軽いやりとりをしつつ、二人は西に歩みを進める。
「ある神によるとな。人間ってのは最も
そして今、教会では内部分裂が激しく起きている。
本来の神話を曲げて
「えーっと、じゃあその基本理念っていうのが、
「ああ」
「じゃあ、魔族嫌いじゃない街とかもある?」
そしてすぐに、そんな
「……教会が
「っ……」
横目で
当然だ。ついさっき、魔王が境界を生んで魔物を人間界に
そんなことないと、否定できるわけがない。
カレンが
「あいた!」
「変な顔してるぞ」
「お、
「……事実はどうあれ、魔族嫌いが多いのは教会の教えの
反魔族が最も強く
「神聖都市?」
再び
カレンが不思議そうに首を傾げる。
「神聖都市エヴンズベルト。古代神話を
「……反魔族思想」
カレンは息を呑んでつぶやいた。
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