幕間《シーカー》

マスターシーン。"シーカー"の独白となる。



"魔女"は実験体。

ただ、それだけのはずだった。


"魔女"は未来視が出来るという触れ込みで親に売られた子。

私は未来を意のままにせんとそれを実験に使うだけの男。


当然、『自分自身の死』を予知した結果、発狂して使い物にならなくなった実験体など──破棄するはずだった。



それは単なる思いつき。

軽々しく破棄するには貴重な能力だと考え、"魔女"のメンタルケアを試みた。


しかし、発狂した"魔女"の絶望、怒り、苦痛を聞き出し、心を知る度に……私の裡で何かが変わっていった。

ああ──私にも心というものがあったらしい。

こんなにも彼女の苦悩が私を揺さぶり、同情と憐憫が魂を鷲掴みにするのだから。



2年の歳月を費やしても、私では"魔女"の心を救うことが出来なかった。

ある日突然、私ではない『未来の誰か』によって彼女の心は救われたのだ。

安堵と……無力感。

だが、出来ることはまだあった。

『魔女の死』の予知を覆し、彼女の幸福を永遠のものとしよう。

罪滅ぼしなどではない、私の新たな喜びの為だ。

それが自分の人生における次の目標となった。



"魔女"は予知変更の研究に必須だった。

不本意ながらも、7年を超える歳月を彼女から奪い取り──

──「予知は決して覆せない」と、残酷な真実だけを得た。

私は何も出来なかった。



現在から半年前。

私は"魔女"と約束を交わす。

内容は、

「これからの半年間、"魔女"の望みは"シーカー"が可能な限り叶える。

対価として、最期の日に"シーカー"が"魔女"を殺す。」

それから半年、"魔女"が必要とするモノは全て用意した。


そして最期の一週間に入り、"魔女"は私の元を出ていった。

彼に会い、彼女は幸福になれただろうか。

出来るのはただ見守り、時を待つだけだ。



───彼女を救うことが叶わないのなら。

せめて、死を安らかなものにしよう。

日曜日は、すぐそこに。

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