140字で伝える物語
水永なずみ
コロナ禍の夏の一幕
最後の夏。私は祈るように野球中継を見つめていた。
この一投で全てが決まる。そう思うとスマホを握る手に力がこもった。
──夢で終わらせないんでしょ? お願い。勝って!
彼が大きく振りかぶり放った球はまっすぐキャッチャーミット目がけて飛び、そして。
グラスの中、揺れる氷がかたく、冷たく響いた。
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