スケープゴート

リペア(純文学)

第1話

…いい夢を見ることはできましたか。


はい。それはいい夢でした。満足という言葉が足りないくらい。


そうでしたか。それは良かったです。


私の息子が立ってました。ボールで遊んでいました。


息子さんが。


えぇ。もう、可愛くて、恥ずかしながら目が潤みました。


いえいえ、ユーザーに良くあることですとも。


ボールは私と投げ合いました。未だ小さい息子は両手でゴムボールを投げるんです。それでも私の元まで届かなくって。


可愛い息子さんんですね。


ふわりと私の足元にボールが落ちて、息子がそれを拾いに来て、また戻って私に投げました。それでも手には届かなくて。頑張れ、頑張れって。


いい息子さんです。ところで違和感などありましたか。


いや、特には有りませんでした。


了解です。(動作は正常、と。)


…息子のことまだ喋っても良いですか?


もちろん、構いませんよ。(うるさい人だな。)


ありがとうございます。

息子ボールで遊んだ後は一緒にシャボン玉をあげました。最初は細かい泡が飛んで行ったのですけど、乾いた風がすぐにそれらを割ってしまって。


ほぉ。(季節の出力は冬、と。)


でも息子は掴んだらしく、飛ばすうちにだんだん大きな泡を作れるようになっていきました。最後の方なんて息子は私がまるまる収まるくらい大きなシャボン玉を作ってたりして。


へぇ。


その時でした。そのシャボン玉に息子が収まってしまったんです。それで足が地面から浮いて、息子の四肢が全くの自由になっていました。

そして次の瞬間、息子諸共、そのシャボン玉は弾けました。

それで私のは終わりました。


なるほど。…そろそろお時間の程ですので。

それでは辞世の句をお願いします。


いえ、もうありません。だって、もう私は…息子の顔が見れただけで…夢を見せて頂き、ありがとうござい──


──暗転──

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