第3章 僕は、普通の夏休みを過ごしたい。10
「……いいわけないだろ……嫌に決まってんだろ――――――!」
気づくと、真っ暗な天井に向かって叫んでいた。
『……よく言った。よくぞ言った、乙幡剛! それでこそ、我らが乙幡剛であります‼ ならば、あがけ! ならば、抗え! そして、運命なんて蹴散らしちまえ‼ 剛ならやれる! 絶対にやれる‼ 少なくとも、この伊達一郎はそう信じて疑わないわけであります‼』
あまりに熱過ぎるその言葉に、僕の頭は逆に冷静になって、伊達さんの言葉の奥にある、ある種のやさしい真意のようなものを感じ取っていた。だから、こんな言葉が自然に出た。
「……ありがとう、伊達さん。僕のこと、励ましてくれたんだよね? 思い切り叫んだら……少しだけ気が楽になったよ」
実際、ほんの少しだけど心が軽くなった気がしたのだ。が、
『――いやいやいや! 何を言ってるんだ、乙幡剛! 今の叫びは、奮起を誓った叫びではなかったのか⁉ まさか、ただの負け犬の遠吠えだったなどとは言わせないわけであります‼』
伊達さんの思惑は、何か別のところにあるようだった……。
「いやいや、伊達さん、そうは言っても僕にはどうしようも――」
『――ある! どうしようもあるのであります! なぜなら、この伊達一郎に秘策あり! 名付けて……乙幡剛改造計画、
…………?
あまりに訳がわからず、僕は真っ暗な天井をポカンと見上げた。
『今が夏休みで本当によかったわけであります! ビバ、長期休暇! この伊達一郎プロデュースによります乙幡剛、
「いやいや、名前変わってませんか?」
『細かいことは気にするな、であります! もう大船に乗ったつもりで、果報は寝て待てであります! 明日からの日々で、乙幡剛は生まれ変われること間違いなし! また私の大好物、実況映えするシチュエーションをも伴っている完璧な計画を楽しみに待つのであります‼』
ん? ん? いったい、どういうこと……?
伊達さんが言い出した得体の知れない作戦というものに一抹どころか、だいぶ不安を覚えた。が、僕はその後も続いた伊達さんの謎の実況を聞きながら、いつの間にか眠ってしまっていた。心身ともに相当疲労していたからだと思う。
翌日から始まる怒涛の試練も知らずに……。
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