Wedding / 暫くお待ちを

髪のセット、肌の艶出し、タキシード。

パリッとシャツに袖を通せば背筋も伸びる。

豪奢なネクタイにはお揃いのタイピンが負けじと存在感をアピールするが色味ピッタリ。

さすが、ブライダルのプロ!

孫にも衣装感が半端ない、俺。

セレブ感漂う出で立ちの、あなた。

この違いって、大丈夫?


お時間までお待ちください、と係のお姉さんに言われて15分。

式の開始まで30分。

やることがない、暇過ぎる!!

そう言えば、敷地内にデザインの凝ったタワーが有ったな。

「あのさ、暇だからあれに登ろうよ」


ポーン♪

エレベーターの扉が開く。

比較的小さめなタワーだからか内部も狭い。

人の顔二つ分入るか疑問な大きさの窓が点在する、滅多に見ないつくり。さすが芸術館。

「おぉ、ミニチュア写真が撮れそう!」

「…………そうだね」

あなたは渋い顔で同意する。

「これくらいも怖い?」

「なるべくなら下は見たくない」

高所恐怖症なのにゴメンね。


「結婚式ってやる前も決め事だらけで忙しいし、当日もスケジュールがキチキチで大変なもんなんだな」

「一日に何組もこなさなきゃいけないから、係の人たちには感謝だね」

そうそう、心付けも抜かりなく。


「ありがとうね、ハル」

窓から下を覗く俺の肩に、頭を凭れかけて囁くあなたの声が心の奥に沁みてくる。

「こちらこそありがとう、ケイ」

指を組み合ってそっと唇を重ねる。

誓いを交わす前だが、これからは永遠に互いのものだ。


ピリピリリ♪

着信音が鳴る。

『お時間となりましたので……』

「「では、行きますか」」



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