第4話
~~25層目~~
「ん?なんだ?」
それは、順調にダンジョン探索も進んで、ホーリードラゴン(成体)のミイラに進化してすぐのことだった。
今のステータスはぶっちゃけだいぶ強い。
ホーリー成体の前はダーク成体になってもう四回目なのだ。
よっぽどの事がないと負けない自信がある。
それはさておき、自分がいま通っている通路の奥に、いきなり厳つい扉が現れた。
これは、明らかに俺を誘っているよな。
だが、今の俺はだいぶ無双してるし、負けないっしょ。
と言っても、今までの雑魚モンスターとは一線を画すような威圧感を感じる。
どうして、まだ25層目なのにこんなに強そうな敵が出てくるんだろうか。
敵う気がまるでしない。
ちょっと腕とか脚がふるえてるんですけど。
ま、行くけどね。
だって今の俺、ドラゴンだし。
こんなので負けてちゃ勿体ないわ。
少し歩き、この荘厳な雰囲気をもって俺を威圧してくる扉の前に立った。
入ったら死ぬぞ、と俺に教えてくれてるかのようだ。
カフッ
俺の息をのむ音が通路に響いた。
ミイラだから、乾いてんねん。
さあ、入るぞ…
ゴゴゴゴゴゴゴッッッ
全身に響いてくる重そうな音を出して、扉が開く。
中は、瓦礫が散らばっており、もう何十年もこのまま、という雰囲気が出ていた。
そして、部屋の奥には、蒼く輝く二つの目をこちらに向けて、玉座のような場所に座っている一体の骸骨がいた。
見るからに聖者っぽいローブを着ている。
なんで不死者やってんの?
ゲームのボス感がにじみ出ていて、某有名RPGのワンシーンに入り込んだかのようだ。
と、ナレーション入れてみたりしたけど、震えは収まらんわ。
骸骨は挨拶は要らん、とでも言わんばかりの勢いで持っていた杖を振ってきた。
え、なにをしてるんだ?と思った時にはすでに遅かった。
俺の胸には、ぽっかりと拳大の大きさの穴が開いていた。
そんな…
もう終わりなのか…
と、倒れるように見せかけて、慌てて柱の陰に隠れる。
えーーっ、いったい何されたんだ!?
なんも見えんかったぞ。こんなんムリゲーやん!!
初見殺しにもほどがある。
よくよく考えてみると、胸貫かれても、痛くないな。
全然ピンピンしてるわ。
死んでて、良かった。って初めて思った瞬間でした。
でも、再生系のスキルが無いから、進化するまで空いたまんまなんだよな。
くっ、俺のボディに穴開けやがって。
やられっぱなしは性に合わんし、倒さないと出れないんだろう。
さぁ、行くぞ!
柱から骸骨に目掛けて、特攻を仕掛けた。
自慢の爪と、試しに聖魔法でも当てるためだ。
ハァッッ!!
思いっきり腕を振り下ろす。
ガキンッ
硬いものに当たった音がした。
手応えはあったか…?
そう思い、すぐさま、骸骨を確認する。
すると、そこには傷一つついていない骸骨の姿が…
信じたくはないが、呆けている暇はない。
これならどうだ!
と、ホーリーレイをぶつけてみる。
魔力をたっぷり込めた特別製だ。
リッチに当たった瞬間、なぜか大爆発を起こした。
早くどうなったか、を確認したいが煙に隠れていて見えない。
とりあえず距離を置いたほうがいいか、と動き始めたその瞬間、
煙の中から、一筋の光が俺目掛けて飛んできた。
避けるのが間に合わない!
全力で横に飛んだが、左腕に当たって、ちぎれてしまった。
着地して、すぐに骸骨の姿を確認する。
すでに煙は上がっており、こちらを向いてカタカタ、と卑しい笑みを浮かべているのが見えた気がした。
---------------------------------------
普通に考えて、詰みだろう。
攻撃は効かなかった上、相手の攻撃には反応できてない。
だがしかし、俺はドラゴンである。
世界の最強種たる、ドラゴン。
俺のイメージだけど。
相手は多分リッチで、それもまた、最強種の一つってイメージあるけど、こんなダンジョンの浅い層に出てくるような、雑魚モンに負けるわけにはいかない。
何か策はあるのか、って?
もちろん、ある。ドラゴンの必殺技といえば…
ブレス!!
どっちにしろ、ただの攻撃でしかない気がするが、まあ、いいだろう。
考えるより、先に動け!
---------------------------------------
この間0.1秒
もちろんそんな隙を見逃すような骸骨ではなかったが、久しぶりの戦いで浮かれており、弱い魔物を甚振るのが趣味だった骸骨は、完全に油断してしまっていた。
その油断を感じ取っていた俺は、遠慮なくブレスをぶっ放させてもらった。
口から閃光が迸る。
イメージはだんだんと広がってく扇状のレーザー。
周囲が光に包まれていった。
最後に見たリッチは、驚きのあまり顎が落ちて行っているようだった。
十秒ぐらい経っただろうか。
ブレスを止めた。
すでに、リッチの姿はなかった。
その代わりに、リッチだったと思われる灰の山が落ちていたのだった。
『レベル上限に達しました。』
無機質な声が、頭の中に響く。
こうして、俺に自分より強い奴はいくらでもいると言う教訓を胸に刻まされる最初の死闘は終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます