メスガキ姫とのクリスマス
(本編の時間軸とは外れたものとお考えください)
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四季の変化を感じざるを得ない。寒すぎて凍えてしまいそうだ。雪が少しずつ降りはじめて、外の景色は白一色に変わる。高校生として子どもの心をすでに中学校に置いてきた僕にとっては、はしゃぐことなど絶対にしない。
それこそ子どもは外に出て遊んでいるのだろうか。年々気温は下がっているのがこの時期だ。意味のわからない風も相まって、上から横から、そして真っ正面から冷たいものが体に当たるのだから、雪合戦とかはしたいと思わないのだろう。玄関からチラリと外を見ても、雪かきをしている人しかいなかった。
というか玄関だけでも寒いな。こんなに冷気が家の中に入ってくるなんて、それはもう遮断できているのか怪しいところではあるぞ。僕は散らかった靴を揃えて、朝におそらく外へ出ただろう雪のついた可愛らしいブーツを軽く地面に叩いてやった。これは僕のではない。
リビングに戻ると暖房の効いた部屋のソファで寝転んでいる姫がいた。じんわりと気持ちのいい暖気は冷えた体を通常の体温に戻してくれる。
「あ、お兄ちゃんおはよー……。今日もおねんねが長いねー……」
「うん、おはよう。冬休みだからね。そりゃあ僕だっていつもとは違って長く寝ていたいさ。それに、早起きしたって何もすることがないだろうからね」
「それもそうだねー……。姫は、もうちょっと寝てたいかにゃー……。なんかね、この部屋あったかくて気持ちがいいの……。だからね、まだ……」
「もう寝そうじゃないか。風邪ひかないように何かかけるものを用意してあげるよ」
「ありがと、お兄ちゃん……。えへへ」
そうしてダラダラと朝になっても起きる気配のない姫のために、かけるものを持ってきてあげた。多分結構重いと思う。姫よりも重いものなのだから。
ふわふわとしたデフォルメ化された動物のパジャマを着ている姫は、ソファの上で手元にスマホを置きながら寝ていた。そのパジャマ、僕から見るに結構薄い素材のものだろうから、暖房が効いているとは言え、体質的にか弱い姫だとすぐに体が冷えてしまいそうだった。
だからかけてあげた。暖かくなるものを。布団ではない。なら何か?
「ふぇっ……? ちょ、お兄ちゃんっ……!?」
「かけてあげるよ。そんな薄いパジャマだと、すぐに体が冷えて風邪ひいちゃうよ?」
僕は寝転んでいる姫に覆いかぶさってみた。
「これ……かけるものじゃなくて、お兄ちゃん自身だよぉー……! お、お兄ちゃん何してるの……?」
「苦しかった? それならやめるけど」
「んぅぅ……やめてほしくない、ですぅ……」
「なに?」
「や、やめてほしくない、れすぅ……」
「そうか。ならよかった」
「で、でもでも……その、体勢がこれだとお兄ちゃん優位だよ……。な、なんか恥ずかしい……」
「僕が優位は、嫌? それとも、逆にしてほしいのかな?」
「ううん。このままで……。姫は、お兄ちゃん優位でお兄ちゃんのものとして、お兄ちゃんに支配されてる方がいいから……」
いかん、なんだか変なこと空気に、気分になってきたぞ。朝からそんなことをさっさと始めようとは思えないから、この辺にしてソファから退散しなければだな。
「そ、それじゃあ、おふざけはこの辺で……。僕はちゃんとお布団とか、あったかくなるものを……って、何してるの姫?」
「んー? 何って、ホールド、かな?」
「あのー、それだと僕がソファから離れられないんですが……。そしてその状態だと姫からも離れられないんですが……」
「離れなくていいの! こうやって、二人で体温感じ合っていようよ? そっちの方が、姫としてもお兄ちゃんとしてもあったかいでしょ?」
「いや、まあ、そうなんだけど……。でも、流石にこの体勢だと、ね? その、変な気分に……」
「うん。この体勢、なんだか変な気分になっちゃうね!」
「うん、だから……」
僕は姫の顔を見た。ふにゃふにゃにとろけたような顔。心臓が速くなるのがわかる。体温がだんだんと上昇しているのがわかる。僕は目の前の姫にいっぽさを感じてしまっているのが、わかる。
姫は立ちあがろうとする僕を押さえて、自分の口元に僕の頬にくるように抱きしめた。そして少しずつ動かして、耳元まで移動させた。
「変な気分になっちゃうでしょ? ふふっ、そうだよねー……。だって、この体勢は……」
ゴクリ、と唾を飲み込んで、姫が囁く。
「正常位なんだもん……」
体温上昇、心拍数上昇。凄いことになっている。
「えっと……」
「んー? なぁに、お兄ちゃん?」
「そ、そんなふうに誘惑してはいけません……。第一僕は朝から変なことをしたくて、ここにいるわけじゃないんだから……」
「でも先に姫に抱きついてきたのはお兄ちゃんだもん……! 姫悪くないもん……!」
「あのねぇ……」
「お兄ちゃんが悪いんだもん……! お兄ちゃんがあんなことしなかったらよかった、それだけだもん……!」
姫は僕の首の後ろに腕を回して、これでもう絶対に逃げられないであろう体勢を形成。どうにかしてこの場を立ち去ろうと思う僕。しかしどうやってもガッチリとホールドされて逃げられない。
「えへへ! 無理だよぉ〜、残念でしたぁ〜。無駄な努力お疲れ様だよぉ、お兄ちゃーん!」
「くっ……このっ……」
「この体勢で逃げられるわけないでしょー? どうやっても姫からは逃げられないんだよぉー? 姫は逃さないしー、お兄ちゃんは逃げられないしー、そもそも流したくないしー!」
「なんでっ、体が動かないっ……?」
「無理無理ぃー。もう絶対に抜け出すのなんて無理なんだから、さっさと諦めて姫とのクリスマス楽しんじゃおうよぉ……!」
なんでっ!? どうなってんだよっ!? マジで抜け出せないんだけど!?
悪戦苦闘してる僕に、姫はまた囁く。
「仕方ないじゃん……。お兄ちゃんがいけないんだよ? こうやって姫のスイッチ入れちゃったんだからさ……。それならもう、スイッチ入れちゃった責任取るしかないよね……?」
これはもう、残された道は一つしかないのか……。
「はぁ……」
「んー? どうしたの、お兄ちゃん? もしかして諦めちゃったのかな?」
「分かった分かった……。もう分かったから……。姫、足でホールドするのやめて」
「やだよーだ。お兄ちゃんが姫の考えてること当てて、どうするのかきちんと答えてからじゃないとやめませーん」
「うぐぅ……」
「さて? どうするのかなー?」
「姫の考えてる通りにするよ……。姫の要求に応じますよ……」
「やったぁ! じゃあ決まり! 姫の部屋でいっぱいしよーね!」
会話がエッチな内容でないのなら、これはただの兄妹の普通の会話になるのだろうな。僕は姫の顔をもう一度見た。紅潮している頬に興奮を抑えられないことについては目を伏せた。
まずい、このままだと姫のペースになってしまう。こんなに生意気に誘惑して、甘い言葉と卑猥な言葉のダブルパンチで僕の心臓を撃ち抜いてくる。
まあいい。僕がきちんと教えてあげなければいけないんだ。そんなエッチなことを普段から言っていると危ない目に遭うんだぞ、と。
僕は姫と一緒に部屋に向かった。
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「ご、ごめんなひゃ……。もう、あんなふうに……誘惑とか、しないからぁ……。だ、だからぁ……も、もう、限界れすぅ……」
「まだダメだよ。姫は分かってないでしょ? 本当に分かったなら、何を言えばいいのかな?」
「うくぅ……。な、何ってぇ……」
「なにを? 言えばいいのかな?」
「う、うん……」
「だから?」
「も、もう……寸止め、やめてぇ……」
僕は姫を抱きしめた。
疲れた体を癒すようにシャワーを浴びた後は、二人でクリスマスケーキを食べた。
聖なる日に、僕と姫は互いの仲を確かめ合ったのだった。
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うわぁ。なんか大丈夫なんですかね最後。
結局書いたのは姫ちゃんでしたね。妹キャラってキャラ付けしやすいんですけど、話し方に幼さを持たせたくて若干考え直すのがいつもの感じなのですが、どうでしたでしょうか。私としてはこの作品のキャラがどんな性格だったのかあんまり覚えてないのでどう書いたらいいのかわからなくなってました(笑)。
最近の更新全くしてないし、この作品ってずっとPV稼いでるから、なんかもう愛されてるんだなぁって思うんですわ。
さて、クリスマスということで、皆さんどう過ごしているのでしょうか? 有馬記念を見ながら今このあとがきを書いているのですが、皆さんはどうなのでしょう。基本的に一人で過ごしている私と同じ方はおられるのでしょうか?
一緒に過ごす人がいない私にとっても、同じような方にとっても、誰かのための愛される『姫ちゃん』と一緒にお過ごしください。私は現実を見て泣きます。
それではまた!
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