第72話・タイムリミット

「痛え……、腰を強打しちまったよ。カンナのお嬢ちゃんは大丈夫か?」


「ふえええ……。目が回ります。」


 俺たちパーティーは空魔将アンドリュー・バルバルの根城の潜入している。


 そこで俺たち四人は全員が目を回している。何故かって?


 ガイアがトラップが起動するボタンを押したからですよ!!


 潜入するや否や目に止まったボタンを全て押すガイア、そのせいで俺たちは不要なトラップにまで潜入を拒まれている。


「ガイア……、頼むから不用意にボタンを押すなよ?」


 君は早押しクイズ王かっての!!


 おかげで根城の中で巨大鉄球に追いかけ回されるわ、トラップの魔法が発動するわ。挙げ句の果てには、さっきは床に落とし穴が現れるわ……。


 俺たちはガイアに混乱させられっぱなしだよ!!


「ボタンを押したら隠し通路が出てくるかも知れないじゃない!!」


「「出てこねえよ!!」」


 俺とパベルはハモリながらガイアにツッコみを入れてしまった。そもそも、この根城は元々がダンジョンだったらしい。


 そのダンジョンを自分の根城にと空魔将が改築した建物だそうで。


 空魔将が入城するまでに他の冒険者たちによって探索をされ尽くしている。


 その情報を得ていたからこそ俺とパベルは事前にガイアに事前に伝えておいたんだ。


 『ボタンと宝箱には絶対に触れるな』と。


 俺たちは一階から根城に乗り込んだ。そして目指す先は六階、そこの大広間に空魔将が待ち受けていると言うのだ。


 にも関わらず、現状で俺たちがいる階層は『地下六階』。


 ガイアに足を引っ張られてるんですよ!!


「はあ、ジョルジョと二手に分かれて潜入したことが裏目に出るとは……。」


「汐、ヤバイぞ? ジョルジョルの旦那とは合流する時間を決めてるんだ。」


 俺たち四人とジョルジョルは空魔将アンドリュー・バルバルが兵用術を使うと言う事で、その対策として二手に分かれて潜入を試みている。


 その合流場所は勿論、空魔将の待ち受ける六階の大広間。


 元三魔症だったジョルジョルは根城の内部を把握しているということで敵の待ち伏せが予想される正面ルートを買って出てくれたと言うのに。


「汐さん、後一時間で約束の時間になりますよ?」


「げえ……、マジかよ。汐!! とにかく急ごう!!」


 カンナが潜入前にジョルジョルからも貰った砂時計を見ながら現状の猶予を口にする。


 ヤバい!! このままではジョルジョルが一人で空魔将と戦うハメになってしまう!!


「くっそお!! カンナ、包帯でも何でも良い!! ガイアの身動きを取れなくしてくれ!!」


「はいです!!」


「って、きゃあああああ!! 何で私を拘束するの!? 汐おおおおおおお!!」


「うっさい!! 君は何も言わずに俺に担がれていれば良いんだ!! って、重っ!!」


「うきいいいいいいいい!!重いって何よおおおおおおおお!!」


 カンナが拘束していくれたガイアを担いで俺は思わず膝をついてしまった。


 そう言えばガイアはウェストが成長していたんだった。


 これは魔王から逃亡した時よりも確実に重いぞ!!


「ふざけるなよ!! ステータスが上がらないくせに体重が増えるっておかしいだろ!?  だからガイアは暴れるなっての!!」


「うきいいいいいいいい!! 重くなってないもん!! 汐が貧弱になったのよ!!」


 こんの駄々っ子女神が!!


 俺は確実にレベルが上がってるんだ、貧弱になるわけがないだろう!!


 だけど、ここでもガイアと言い争いをしている時間はない。


 とにかく急いでジョルジョルとの合流を目指さねば。


「パベル、カンナを担いであげてくれる!? カンナは移動しながらパベルを回復だ!!」


「おうよ!! お嬢ちゃん、行けるかい!?」


「はいです!!」


 俺の指示にパベルとカンナが気持ち良いくらいの返事を返してくれた。


 一方で俺に担がれたガイアはジタバタと俺の肩で大暴れしている。


「これはジョルジョルの方が先に進んでるよな?」


「汐、その推測すらしてる時間がないと思うぞ?」


 はあ、パベルに冷静にツッコまれてしまった。


「とにかく全速力だ、十二階分走り切るぞ!!」


「「おお!!」」


「汐おおおおおお!! お願いだから私にも回復魔法をかけてええええええ!!」


 ガイアが泣きながら俺に治療を懇願してくる。


 分かってますよ。


 何しろ君は防御力が1なのだから!! 


 俺たち四人は地下六階からジョルジョルとの合流ポイントまで治療をしながら全速力で走り始めたのだった。

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