エピソード51-39

インベントリ内 プレイルーム――


 ルームBに入ったのは、ルリとみのりだった。

 二人は以前、太刀川駐屯地でシズルーに扮した静流と接触していた経緯がある。


「みのりさん、ちょっと」

「ダメですよルリ子さん、私はミノーリですよ?」

「あ、そうでした。ミノーリさん、こちらをお飲み下さい」

「ん? サプリ? 何ですか?これ」

「一時的に気持ちよくなるクスリです。ンフ」

「……ヤバいクスリじゃないですよね?」

「無害ですが、違う意味ではヤバい、ですね。とにかく飲んで」グイ

「むぐぅ……」


 ルリ子は無理矢理ミノーリにサプリを飲ませた。


「遅効性ですので、この後だんだん効いてきますよ……ムフ、ムフフフ」

「さいですか……」

 

 ルリ子は満面の笑顔で入口のドアをノックした。 コンコン


「大尉殿、失礼します!」

「よし! 入れ!」


 緊張した面持ちで入って来た二人のモブ子。


「オーダーシートを寄こせ」

「は、はいっ」


 二人のモブ子は、言われた通りオーダーシートを渡した。


「ふむ……ルリ子とやら、私にこれをやれ、と?」


 オーダーシートに目を通したシズルーは、小刻みに震えていた。


「「ぜひ、お願いしますっ!」」


 二人は深々と頭を下げた。


「本気か? ミノーリとやら」

「本気です!冗談ではありません!」


 ミノーリの顔はいたって真剣だった。

 ルリ子は、緩みそうになる顔を何とか引き締め、シズルーに聞いた。


「ときにシズルー様、最近太刀川駐屯地にお見えになりましたか?」

「む、なぜそれを? まさか、あそこの関係者か?」

(うわぁ、マズい展開だな……)


 シズルーは明らかに動揺していた。 


「こ、個人的な情報は言えない事になっている。謹んでくれ」

「と言う事は、肯定と言う事でよろしいですね?」ニタァ


 ルリ子はここぞとばかりにシズルーを責めた。


「……行ったことはあるが、暴かれてどうこうなるような行為はしておらん。私には軍の知り合いもいる。適当に誤魔化してくれるだろう」


 シズルーが予想以上の対応だった事に、モブ子二人は顔を見合わせ、大きく頷いた。


((ビンゴ~♡))


「くっ……何が望みだ?」

「まぁまぁ、そう構えないで下さい。私らはそのオーダーさえ受けて頂けるなら、それ以上の事は望みませんよ……ムフゥ」

「……わかった。引き受けよう」

 

 シズルーは、たまに静流が使う某超A級スナイパーが仕事を請ける際に使うセリフを吐いた。


(間違いない! 本物や~♡)


「では早速、『はべらせポーズ』をお願いしますっ!」

「う、うむ」


 シズルーは少し照れながら、ベッドに横座りし、両手を広げた。


「どうぞ……」

「「きゃっふぅぅぅん♡♡」」ひしっ


 シズルーのウェルカムポーズに、二人は飛び付いた。

 飛び付きざまに、ルリ子はシズルーの顎をくいっと持ち上げ、自分の顔の前に持って行った。


「あぁ、大尉殿……メガネ、取りますね?」チャ

「こら、調子に乗るでない……」カァァ


 モブ子の顔がどアップになり、つい赤面してしまうシズルー。

 レプリカのシズルーが着けている『ざぁますメガネ』は、オリジンとは違い、ただの伊達メガネだった。


「大尉殿、照れちゃって、カワイイ♡」

「次は……わたしですっ」クイ


 ミノーリが負けじと、シズルーの顎を奪い、自分の顔に持って行く。


「んふぅ……脳汁が、あふれてきます……」

「お、おい……近すぎるぞ……」


 二人の様子がみるみる変わり、積極的になっていく。


「次は……熱い吐息を……お願いします」

「わたしにも、お願いします……」


 シズルーは交互に、首筋から耳に至る辺りに、優しく息を吹きかけた。


「「ぱっふぅぅぅぅん♡♡♡」」


 二人は体をくねらせ、ほぼ同時にシズルーの方にもたれかかった。


「お前たち、酔っているのか?」


 さらに顔が赤くなったシズルーを見て、二人の興奮度が急上昇した。


「くふぅ……アナタのゼロ距離射撃、徹甲弾を使うまでもありません。わたしのハートは紙装甲。あぁ~♡」

「アナタは私の心を導いてくれる曳光弾……早く私を捕まえて下さいっ」


 たまに混じるワードに首を傾げていた

 ひとしきり悶えたあと、ミノーリがシズルーにお願いした。


「シズルー様、しゃしゃしゃ、写真、イイれすか?」

「何ぃ!?……構わん」

「きゃぁぁぁ♡」


 照れながら素直に言いなりになっているシズルーに、二人は酔いしれた。

 デジカメをセットし、シズルーに絡みつく二人。


「はい、3・2・1」ペロ

「ひぃっつ!?」


 デジカメのシャッターが下りた瞬間、二人が舌を出し、シズルーの耳たぶを舐めた。


「な、何をする!?」

「あれ? 触っちゃいました? すいませぇん」ペロ


 ルリ子はそう言って、舌を出して小悪魔スマイルを浮かべた。

 見た目がモブ子である事が、ギャップのせいかエロ度満点だった。


「次は……これ、本当にやるのか?」

「ええ、勿論。ココからがメインですので……」


「『ずいずいずっころばし』のインモラル・ダークネスバージョン、だと?」

「ローカルな遊びです。ルールは概ね一緒ですから……」


 二人は手で輪を作ったのを見て、シズルーも片手で輪を作った。


「鬼であるシズルー様は、歌に合わせてこの『蜜壺』、いや手穴に指を入れます。そして最後に入れた手穴の持ち主が『勝ち』となります」フー、フー

「最後の人が鬼だったよな?」

「ローカルですので。規則的にやるのでは序盤でわかってしまいますので、指入れはランダムで。尚、最後は私かミノーリでお願いしますね? ヌフフフ」

「構わん、とっとと終わらせる」


 面倒になったのか話を切り上げるシズルー。

 次にルリ子は、手穴にローションを垂らした。


「きゃん……何これ、ジンジン感じてる……」

「ごく普通のローションです。滑りを良くしないと痛いでしょうから……」ハァハァ


 二人の顔が次第に赤くなっていくのを見て、シズルーは声をかけた。


「どうした? 具合でも悪いのか?」

「いえ、むしろ絶好調です。では、始めて下さい……くふぅ」

「では、始める。せーの!」


 シズルーがルリ子に渡されたカンペを見ながら歌い出し、指を順番に入れていく。


「ツモツモロンロン ワレメでポン♪」              「くぅっ」

「イーピンツモッて リャンシャンテン 鳴いたらイーペーコー♪」 「あぅっ」

「上家の捨て牌チーしてチュン チュンチュンチュン♪」      「ひいっ」

「パーキュウソーでも ローパーワンでも テンパれなーいーよ♪」 「ふぐぅ」

「ドラドラチーピン 二枚持ってるの だーぁれ!」



「「あっふぅぅぅん♡♡♡♡」」

 

 

 歌が終わった直後、二人は大きくのけ反り、床に仰向けに倒れた。

 最後の手穴はルリ子だったが、何故かミノーリも同時に昇天した。

 

「はひぃ……幸せ、れす」ガク

「こんなの……初めて」ガク

 

 両目が♡マークの二人は、一言ずつ言ってこと切れた。

 

「うわっ! 大変だ! 救護班! 来て下さい!」


 シズルーはすぐさま救護班を呼んだ。


「またぶっ倒れたの? って、これはヤバいかもね……」


 カチュアが目の瞳孔を見てうなった。


「……ラリってる」

「大丈夫なんですか? カチュア先生?」


 シズルーが心配そうにカチュアに聞いた。


「安心して。命には別条ないから。ちょっと、医務室に運んで頂戴!」

「はい!」


 カチュアに言われ、二人は部員たちに担架で運ばれて行った。


「あひぃ……もう食べられましぇん……」


 担架で運ばれて行くルリ子たちを見て、シズルーはふと思った。


「あの感じ……誰かに似ているんだよなぁ……」

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