第8話、迷宮最下層
ナイフと鉈の戦闘スタイルは俺にピッタリだった。
軽量のモンスターは、サバイバルナイフとオミナさんの猫爪刃(キャットクロー)で片づけ、重量級は鉈で叩き切る。
オミナさんが敵の注意を引き付けているスキに、空中で一回転した勢いのまま鉈を叩き付けると、大抵のモンスターは片付いた。
姉さんの仕事は、もっぱら魔石とドロップ品の回収だった。
しかも、屈みこんだ拍子にマントの裾を踏んづけて転ぶ……もしかして、天然なの?
調子に乗りすぎたと気づいたのは、最下層である地下7階の休憩所だった。
「タケル、あなた本当に今日が迷宮デビューなのよね」
「えっ、そんなの姉さんがよく分かっているよね」
「オミナはどう感じた?」
「やりやすいな。
戦士っていうよりも、戦技をもった探索系……忍者みたいな感じかな」
ギクッ……鋭いな、獣人は。
「同じくらいのレベルだと言われても納得できる動きだよ。
だけどな、今日の相手は、物理攻撃が有効な相手ばかりで、しかも戦闘スタイルがマッチしただけだろう。
物理攻撃の効かないシャドウ系や超重量系と遭遇してたら、ここまでスムーズに来れるはずがないぞ」
確かに、そういうモンスターは回避してきた。
「何度か、ヤバそうな感じはあったんだが、こいつの誘導する方に進むことで遭遇が回避できた……ような気もする」
「そうね。スタールビーといい、タケルは運がいいのかもね。
魔石も多かったし、重くなってきたから一度換金しちゃおうか。
アイテムも見てもらいたいし」
「じゃあ、お茶しててよ。僕はこの近くを回ってみるから」
「遠くに行かないようにね」
「うん。行ってくるね」
「じゃあ、この鑑定と魔石の換金をお願いします。
あと、ホットコーヒー二つ」
「はい、少々お待ちください」
「ここって、中級の最下層だよな。
10才のガキに単独で行かせるお前もどうかと思うが」
「オミナは、一緒に戦っていたから分からないだろうけど、後ろから見てるとよく分かるわよ。
タケル単独でも全く問題ないわ」
「まあ、あたしもあいつの誘導にあわせて動いていただけだからな。
ここまで来たのに、まったく疲れてないぞ」
「私は、魔石を拾うのに腰が疲れたわ。
バッグも肩に食い込んでくるし……」
「何度も転んで、膝を打ったんじゃないか?」
「そうなのよね。マントが邪魔で……こんな事なら、農婦にしておけば良かったな」
「お待たせしました。コーヒーになります」
「ああ、ありがとう」
「魔石ですが、全部で83万円になります。金貨でよろしいでしょうか?」
「全額、オミナの口座でいいわよ。タケルのスタールビーは分けられないから」
「おっ、気前がいいね」
「かしこまりました。オミナさまのギルド口座へ振り込みさせていただきます。
アイテムの方ですが、腕輪は魔力回復が一つ、体力回復が一つ、耐炎と耐冷気が各二つ。指輪は耐毒と耐石化が二つ、耐麻痺が一つです。
ギルドへ持ち込めば、200万から250万程度の値がつくと思われます」
「じゃあ、魔力回復と石化の一つと麻痺を頂戴。あとはあげるわ。
……あれ?タケル、ずいぶん早いわね」
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