プレゼント

1時間目はぶーちゃんの授業だった。

私にとって1時間目から社会って言うのはきつい。

しかも、世界史。

昔の人、しかも外国人について学ぶなんて、なんのためなの。

そう思いながら、肘をついてつまらなそうに授業を受けている。

一方、隣の席のハルノさん。

楽しそうに、はーいっと手を挙げている。

ほかの授業では挙げないのに。

わかりやすっ。

でも、ハルノに教えてもらわなければ、私は気づかないだろうなと思った。

その代わり、世界史が大好きな人っていう印象が私の脳内に埋め込まれるけど。

バリバリ理系の私にとって社会が好き、古典が好きとかいう人は変態以外何者でもなかった。

ハルノもどちらかと言ったら理系。

でも世界史だけは頑張っていて、テストは毎回1位。

ハルノいわく、

「1位とった時は、みんなの前で堂々と褒めてもらえる唯一の瞬間だから、頑張らないといけないの。」

だそうだ。

愛の力は凄いな。

私の好きな人、ホリタくんは、きっとサッカーのことしか考えてなくて頭は良くないだろう。

このままじゃ私、サッカー1位取らなきゃいけなくなっちゃう。

サッカー1位ってどういうこと。

またでてきた。

脳内ホリタ。

脳内ホリタが出てくると、何もかも集中できない。

ハルノはいいなぁ。

好きな人が、ちゃんと自分のためになっている。

でも、私の好きな人は自分のためになっていない。

むしろ害悪。

いや、そんなことないぞ!

何を言ってるんだ。

またでてきた。

1人でツッコミを入れる私。

もし私の心の中が誰かに聞かれていたとしたら、きっと飽きられているだろうな。

心の中が忙しすぎて給料を貰いたいくらいだ。

『脳内ホリタと、1人でツッコミを入れる私の、劇場イン私の心の中』

は、授業が終わるチャイムがなるまで続いていた。

本当に私の心の中はうるさいな。

もちろん観客は私だけ。

授業が終わってかたづけをしていると、目の前にぶーちゃんが立っていた。

「ちょっと廊下に来てくれるか。」

私は?というようなハルノの目を見て見ぬふりをして、2人で廊下に出た。

「何、先生。」

「もうすぐハルノ誕生日じゃないか。プレゼント何がいいかなって。」

「私が知ってること知ってるんだ。そうだなあ、ハルノが好きなものってぶーちゃんしか知らないからなぁ。豚のぬいぐるみでいいじゃん。笑」

ふざけて返すと、

「なるほどな。ありがとう。」

恋愛経験ゼロかいな。

素直に納得しているぶーちゃん。

嘘だよって言おうかなと思ったけど、面白そうだからいいやって思ってしまったのは私が性格が悪いからか。

「うん。またなんかあったら聞いて。」

そう言いながら教室に帰ると、

「何話してたの?」

興味津々のハルノ。

「なんか、前に出された宿題出してなかったんだけど、早く出せよって、怒られた。」

もちろん私はそんな人じゃない。

「そうだよね。浮気かと思った。」

こいつも脳内劇場あるな。

割とドロドロの。

仲間がいて良かった。

「そうだよ。ぶーちゃん興味無いし。」

「次音楽だよ。移動しなきゃ。」

そう言って、私たちは教室を後にした。

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