新たな試練
隣の席の神田君は思った以上に面白い人で、授業中はほぼ寝ていて先生によく当てられている。
「じゃあこの問題を…神田!起きろ。この計算の答えわかるか?」
「ん…徳川家康です。」
そういった瞬間巻き起こった大爆笑の嵐。
「なんだお前、世界史の時間から寝てたのかよ。今は数学の時間だぞ。」
そう先生に言われて神田君は目を覚ましたようだ。そして黒板を見て一言、
「36x+√5yでした。」
大爆笑の次は拍手の嵐。
「お前一瞬で計算できるのかよ。天才じゃん。」
誰かが言うと先生は悔しそうな顔をしながら、
「正解だ。もう寝るんじゃないぞ。」
と言った。数十秒後にはまた神田君は寝てるんだけどね。
そしてある日。先生は私を呼び出して言った。
「隣の席の神田すぐ寝るだろ?授業中寝てたら起こしてやってくれないか?」
「私は一応声はかけてるんです。でも、なかなか起きてくれないです。」
私は先生にそう言うと、
「突っついてでも起こしてやってくれないか?いろんな先生から苦情が出てるんだよ…」
先生は頭を掻きながらため息をついた。
「はい…わかりました。」
「ありがとう。頼んだよ。」
そう先生は言った。そうは言うものの、突っつくっていう事は神田君に触らなくちゃいけない。
「はぁ、どうしよ…」
私はそう呟きながら教室へ戻っていった。
そして始まった次の授業。
案の定神田君は爆睡中。
「神田君起きて。」
そう私は言ったけど、やっぱり起きない。消しゴムを投げつけようか、とかいろいろ考えたけど、石鹸で洗うこともできないし、だからと言って捨てるわけにもいかないしで、結局思いついた最終手段。
「ふぇーっくっしょん!!!」
わざとだってバレるくらい大きなくしゃみをした。わざわざくしゃみにする必要もなかったかもしれないけど、いきなり大声を授業中に出すよりはマシだと思った。
私がしたくしゃみで教室中に笑いが起こった。先生も笑いをこらえながら、
「どうしたんだ。いきなり大きな声出して。」
やっぱりくしゃみじゃないってバレちゃったか。
「顔の前に虫が飛んできて、吹き飛ばそうと思いました。」
意味の分からない苦しい言い訳。そんなこんなで先生と話している間にさらに大きくなったクラスメイトの笑い声で、神田君は目を覚ました。
「…なにがあったんだ?」
寝起きにかすれた声でそう神田君は言い、クラスメイト達の笑い声は収まることがなかった。
「あのペア面白すぎ。」
誰かが言った。
こうして私はとりあえず起こすことができた。
起こすことが難しいなら、寝かさなきゃいいんだ。そう思って、次の授業中ずっと話しかけてみたけど、
「そこ、なにをずっと話してる。」
先生に怒られた。早く席替えしたい、それしかもう考えていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます