第83話太りました?

「近藤さん、太りました?」


配膳をしている詩織が何気なく聞いた。


「ふむ、自分ではわからぬのですが」


とにかく、飯が美味いのである。ご飯、おかず、おやつ。欠点が見つからない。


「そう言われてみれば局長はふくよかになりましたね」


沖田にすれば格好の標的である。


「こら、総司。お前も頬がふっくらして子供みたいだぞ」


嘘だぁ、と沖田は否定する。


「現代の飯が美味すぎるんだよ」


土方が言った。


「現代に来てから我々は食事に頓着とんちゃくしなくなった」


現代に来て肉の美味さを知った。小野田家が提供してくれる食事に不味いものが無い。外に出ればありとあらゆる店が隊士一同を誘惑する。現に近藤はコンビニのスイーツに心を奪われている。


「和洋問わず甘味も美味ですな」


永倉が言った。永倉はコンビニで買ったアイス最中もなかを毎日食べるのが日課になっている。舶来のアイスクリーム、日本の最中、素晴らしい組み合わせだと永倉は思う。


「屯所では新入り隊士が炊事をしていましたから不慣れな男達の飯が不味くて当然です」


斉藤が言った。


「して斉藤君、現代の食事はどのような状況なのだ?」


近藤は斉藤が食べ歩きをしているのを小耳に挟んでいた。


「一言でいえば混沌、でしょう」


街へ出れば世界中の食べ物の店が有る。斉藤ですらひるむ。


「日本で食べれない世界の食べ物は無いのではないでしょうか」


この一言に隊士一同は驚いた。


「開国どころではありませぬな」


詩織が炊飯ジャーを持ってきた。吉村が聞いた。


「詩織殿、日本で食べれない世界の食べ物はありますか」


「もちろん有りますよ。でも大分色んなお店ができましたね」


ちょっと太ったくらい、良いじゃないですか、と詩織が言って近藤の

どんぶりにご飯をよそった。

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