第18話新選組始末

小野田祐介は悩んでいた。彼ら新選組隊士に歴史のその後を伝えるべきか。祐介の書斎には新選組に関する書籍が豊富に有る。幕末の資料を収集するうちに新選組の存在も強く浮き出てくるのだ。若い隊士達が自分の命を賭けて幕末を走り抜けた。敗走を続けて函館五稜郭にて土方歳三が死ぬまでが新選組の歴史だと祐介は思う。覚悟を決めた祐介は近藤と土方を書斎まで案内した。


「こちらに網羅もうらした訳ではありませんが、幕府の末期から時代の変遷へんせんが記録された書籍が有ります。どうぞご自由に出入りして頂き、お好きなだけ読んでください。正直に申しますと、新選組の最期もこの本棚に有ります。後世に研究されたものが多く、脚色されたものも多いですが」


そして一言付け加えた。


「こちらでお読みになられた内容については一切口外しないように注意してください。これだけはお守りください」


「承知しました。他言無用ですね」


近藤と土方は書斎へ入った。


それから五日間、近藤と土方は祐介の書斎にこもるようになった。隊士一同と食事をしていてもどこか上の空である。


「副長、いかがなされた」


永倉が聞いても何でもない、と答えるのみだった。近藤も道場の稽古には参加するのだがほとんどを祐介の書斎で過ごす時が多くなった。祐介はやはり読ませるべきではなかったかとチヨに言ったがチヨは


「それぐらいで新選組が分裂する事も無いだろうよ。覚悟が違うよ」


そうして数日が過ぎて沖田に面会の許可が出て、隊士一同で見舞いに行くことになった。

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