Disc.02 - tr.08『幽霊部員とアクションサウンドとRE-X』rejected track
実は、tr.03は当初こんな感じで進めていました。が……
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「――まぁ、初心者がやりがちな誤解なんだがな」
なんとなく講師役になっている響一郎の前に3人並んでそのご高説を拝聴している。
「レコードプレイヤーは本来、針から音を拾ってそれを電気信号として出力するだけなんだが、ここで1つ問題がある」
「問題?」
「あぁ。レコード――特にLPやEPは、それまでのSPと違って、サイズあたりの収録時間がもの凄く長い。何故かと言えば音を刻んだ
「でも、刻んであれば拾えるってことでしょ?」
「まぁな。ただ、どう刻むかが問題なんだ。――前にカセットの話をした時に、キャリブレーションとかノイズリダクションの説明をしたろ?」
「うん。録音の時に上げて再生の時に落とす、みたいなあれ、だよね?」
「そう。レコードも同じでな、例えばこのLPより前にあったSPっていうレコードだと、ほぼ同じサイズに片面5分くらいしか入らねぇ」
「短っ!」
「で、LPだと一挙に増えて25~30分。密度で言うと5~6倍。もうギュウギュウ詰めな訳だ。しかも回転速度も半分以下。普通にやったらどーやっても音は悪くなる」
「そうか……」
「で、昔の人は考えた。なら録音の時に音を圧縮して再生の時に戻せばいい、ってな」
「カセットと同じなんだねー」
「レコードの方がずっと先だけどな。大体、テープだのディスクだので新しいメディアが出来ると、その都度データを如何に効率よく圧縮するかが大命題になるのはデジタルになってからも同じだよ」
「考え方としては繋がってるんだねー」
「そうだな。で、レコードの溝ってのは音がデカくなる程、幅が広くなる。するとどうなるか?」
「広い方がいいんじゃないの?」
「それも程度によりけりだ。あまりに広いと針のサイズを超えてしまって、音を拾いきれなくなるんだ」
「そっか! 溝の中で針がフラフラしちゃうんだ!」
「そーゆーこったな。逆に狭すぎても、今度は針が溝をなぞる時の摩擦で発生する雑音に埋もれる。ここもカセットと似てるな」
「でも、レコードの音、ちゃんと聴けてたよね?」
「そこで登場するのがイコライザーカーブ。ざっくり言うと、低域を抑えて幅を狭め、高域を強調して雑音を抑える。再生で逆の処理をすれば元通り」
「ノイズリダクションと似てるねー」
「ノイズリダクションと似て非なる処理で、レンジエキスパンダーってのがあるんだが、むしろそっちに近いかもな。ま、その辺はおいおいと」
「そのイコライザーカーブは共通なの?」
「今となっては、実質的には1種類と言っても差し支えないんだが――」
「昔はいっぱいあった、とか?」
「あぁ。LPが出た当初はそりゃ何処も手探りだったろうから、それこそ各社各様、かなり乱立してたようだし、同じ会社内でもバージョン違いもあったようだな」
「そんなのどうやって区別付けるの!?」
「当時は各方式の専用イコライザーやアンプがあったみたいだな。現在だと一周回って、そういった古いレコード用に過去に存在した色々な方式に対応できるタイプのフォノイコライザーも出てる。まぁ、お値段もそれなりだが」
「それなりってどのくらい――え!? これって、この機能単体の機械の、値段……(( ;゚Д゚)))」
「なんであれ趣味の世界は奥に行けば行くほど世間一般の価値観からかけ離れて行くってこったな……」
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はい、ここまで読まれた方はお察しの通り、『クドい!!』――完っ全に、話の流れをぶった切ってます。
よって、本編のように「レコード針の形式」の解説のみとなりました。そりゃそうだ。音が出なかった理由さえ判れば良いですからね。
本来は表に出すべきモノではないのですが、逆にこれを入れ込めるような話も考えつかないので、恥かきついでに蔵出しした次第です。
尚、最後のフォノイコライザーの価格が気になられた向きは、オーディオ専門のネットショップあたりで検索してみて下さい。常識を疑いたくなること必至(^^;
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