挿絵の場所は

リュクレーヌが背後から本の内容を見る。右のページには文章が、左のページは丸ごと挿絵に使われていた。

挿絵は、骸骨が地面に散乱する小さな崖に辺りは暗闇のような場所のスケッチだった。フランはこの場所に見覚えがあったのだ。


「ここだよ!ここ!僕がルーナエさんとあった場所!全く同じものだ!夢の中だったのに……」


「何だと!?」


そう、フランが夢の中でルーナエとあった場所だ。暗闇の中、地面にマスカの残骸が散乱した崖──本の挿絵と酷似していた。

随分と恐ろしい場所で再会したものだとリュクレーヌは大層驚いた。


「全く同じ場所の夢とルーナエ……おい、その時ルーナエは何か言っていたか?」


「うん。『兄さんをよろしく』って……あとはこの迷宮からは出られないって言っていた」


「迷宮……」


あの日確かにルーナエはそう言った。ありのままをリュクレーヌに伝える。

真剣な表情で自分とリュクレーヌの身を心配してくれていた。

他人であっても、フランにとって、この人が今でもリュクレーヌを恨んでいるとは到底思えなかった。思いようが無かった。


「だから、大丈夫だよ。ルーナエさんはリュクレーヌのこと恨んでいてない」


フランはリュクレーヌに優しく微笑む。


「この日記も、帰ったらちゃんと読もう」


「あぁ……」


すこし心が軽くなったのか、リュクレーヌは落ち着きを取り戻し、部屋を再び調べ直し、証拠品を持ち帰ることにした。

 



 

帰りの道のりの方が厳しいものだった。

道を進めるほど、マスカの数が増えていく。ロンドンに近づいている証拠だ。

行きと同じように宿をとることにした。帰りの宿もそれなりに混雑していた。


二人は今更気づいた。宿が込んでいるのはマスカへの襲撃の避難所とされているからだった。

それでも、その日は空室もありツインの部屋をとる事が出来た。

豪華客船の時ほどの豪華なホテルでは無いが、ベッドとシャワーは最低限ある。

一泊だけ羽を休めるのはちょうどいい宿だった。


「よかった、行きみたいに満室とかじゃなくて」


「あぁ、ツインだけどダブルよりはましだな」


二人は、それぞれベッドに座り談笑していた。


「ごめんね、僕が毛布もらったから風邪ひいちゃって……」


「いいよ。あれは俺が掛けたものだ」


気にするなとリュクレーヌは手を振る。

ふいに、フランが布団に転がっていた鞄に目をやった。

鞄の留め具が開いて、証拠品として回収した日記と本が出たがっているようにはみ出していた。


「ねぇ、証拠品、少し読んでみる?」

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